FXニュース:日銀がYCC運用を柔軟化

2023年7月28日
FXニュース:日銀がYCC運用を柔軟化

 

東西FXニュース – 2023年07月28日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 日本の長期金利に上昇圧
  • 日経平均株価が大幅下落
  • 欧中銀0.25%追加利上げ
  • 欧利上げ継続に不透明感
  • 米GDPが市場予想上回る
  • 米NYダウが14日ぶり反落

今日2023年7月28日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値141円8銭前後から円の高値でドルの安値138円6銭前後の値幅約3円2銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は139円76~77銭付近と、前日同時刻の昨夜17時の139円95~96銭付近の前東京終値比では約19銭の円高ドル安であった。

今日の為替相場の値動きの主な要因と世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨夜の欧州英国市場では、昨夜21時15分に欧州中央銀行 (ECB) 理事会が、市場予想通りに0.25%の追加利上げ決定を発表したが、続いて始まったラガルド総裁の会見では、次回9月の欧州利上げ継続については、「今後のデータ次第」と強調され、「利上げ据え置きも有り得る」という発言で不透明感が広がったことでは、ユーロ売りドル買いが起きていた。

一方、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では、昨夜21時半に最新米国重要経済指標の4〜6月の第2四半期の米国実質国内総生産 (GDP) 速報値の前期比年率が前回の2.0%と市場予想の1.8%に対して市場予想を上回る2.4%に上昇し、同時発表だった米国雇用関連の前週分の米国新規失業保険申請件数も前回の22.8万件と市場予想の23.5万件に対し22.1万件に改善され、前週分の米国失業保険継続受給者数も前回の175.4万人と前回修正の174.9万人と市場予想の175.0万人に対し169.0万人と軒並み堅調で、最近の欧州の景気懸念と対照的な米国経済指標の発表により、米国景気減退懸念が緩和され、安全資産の米国債が売られて米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.02%台に上昇し、主要通貨に対するドル買いが先行し、昨夜23時50分頃には一時141円32銭付近の米国市場および日通しの円の安値でドルの高値を記録した。

しかし、今朝未明の午前2時過ぎに、日本の早朝の朝刊に先駆けて日本の経済紙の日本経済新聞 (Nikkei Asia) の電子版が発行され、「日本銀行 (日銀 / BoJ) が今日まで開催する日銀金融政策決定会合で、長短金利操作のイールドカーブ・コントロール (YCC) の修正案を議論し、±0.5%の現在の許容上限を一定程度超えることを容認するYCC柔軟化の案が浮上した」というニュース報道の内容により、日銀のサプライズ修正予想への警戒感や、日米金利差縮小予想の円買いドル買いが強まり、今朝午前4時45分頃には対ドルの円相場は一時138円76銭付近に円が急伸し、米国市場での円の高値でドルの安値を記録した。

その一方で、日本の長期金利上昇への企業業績や日本経済への影響の警戒感などから、ナイト・セッションの日経平均株価先物は一時3万3220円付近の市場高値から一時810円ほど超大幅に急落したことも、低リスク通貨の円買いの一因になった。

日本を主要貿易先に持つ米国株価も、14日目にしてこれまで13日連続で続伸していた米国ニューヨーク (NY) ダウ工業平均が反落したことでも、日米株価下落時のリスク回避 (リスクオフ) の低リスク通貨の円需要もあった。

ただし、日銀発表前の持ち高調整では短期の円の利益確定売りの抵抗や、堅調な米国経済指標の数々を受けて米国連邦準備制度理事会 (FRB) のパウエル議長が以前に話したソフトランディングの可能性が高まったことなどでは市場安値からのドルの買い戻しも入っており、またユーロに対するドル買いの影響も円相場に波及していたためにやや反発してから、その後の今日の日本市場での日銀のイベント前の様子見の横ばいに近い動きに転じた。

そのため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の141円32銭前後から円の高値でドルの安値の138円76銭前後の値動きで、今朝6時頃のニューヨーク終値を139円48銭付近と、前日同時刻の前ニューヨーク終値比で約76銭の円高ドル安でつけていた。

今朝早朝のオセアニア市場では、今朝の日本市場の前の今朝8時半に発表された日本の最新経済指標の7月の東京都区部消費者物価指数 (CPI) の生鮮食品を除くコア指数の前年同月比が前回の3.2%と市場予想の2.9%に対し3.0%と、前回ほどではないものの市場予想を上回ったことを受け、想定以上の日本の物価圧による日銀修正期待などから、今朝8時31分頃に一時138円70銭付近に対ドルで円が買われて上昇した。

今朝9時からの今日の日本の東京外国為替市場では、今朝9時55分の日本市場の月末を控えた仲値決済に向けては、今朝の円高感から日本企業の輸入実需と準備金の円売りドル買い需要があった。

ただし、今朝の日本の経済紙の朝刊のニュースにより、日本銀行 (日銀 / BoJ) が昼頃に結果を発表予定の日銀金融政策決定会合で、長短金利操作のイールドカーブ・コントロール (YCC) の運用の柔軟化案の期待が高まり、日米金利差縮小予想の円買いドル売りが入る一方で、YCCの柔軟化により国債の買い入れオペの許容値が広がっても、日銀の大規模緩和金融政策には継続の可能性もあるために、昨夜の堅調な米国経済指標の数々を受けた「今後のデータ次第」の米国利上げ長期化の可能性も燻り、日銀のイベント前の結果待ちの様子見も強く、やや横ばいに近い値動きに転じた。

今日の昼過ぎに、日本銀行 (日銀 / BoJ) の日銀金融政策決定会合の結果発表のイベントがあり、大規模緩和金融政策は基本的には維持されたことでは12時36分頃には一時141円8銭付近の今日の日本市場での円の安値でドルの高値を瞬時に記録したが、今朝の報道通りに日銀の長短金利操作のイールドカーブ・コントロール (YCC)の運用には「YCC柔軟化」案が決定され、日銀の長期金利の変動幅はこれまでと同じ±0.5%程度を「めど」に現状維持されたものの、10年物の国債を日銀が無制限で買い入れる公開市場操作の「指し値オペ」の利回りの許容値は0.5%程度の「めど」を上回った1.0%の許容が可能というYCC柔軟化により、日本の長期金利の上昇圧が意識され、国内債券市場では日本の長期金利が一時0.575%と「めど」の0.5%を超えて大きく上昇し、およそ8年10カ月ぶりの高利回りを記録したため、日米金利差縮小時の円買いドル売りに転じて円相場が大幅に上昇し、午後13時15分頃には、一時138円6銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。

日本の株式市場では、今朝早朝にも日銀に関する報道を受けて金利上昇への警戒感から大幅下落していた日経平均株価が、実質金利の上昇ではないために下げ幅はやや縮めたものの、15時15分に3万2759円23銭の前日比131円93銭安で大引けしたことも、日本株安時の国内第一安全資産の低リスク通貨の円買いに繋がった。

15時半頃から日本銀行 (日銀 / BoJ) の植田和男総裁の記者会見での発言があり、今回の日銀の長短金利操作のイールドカーブコントロール (YCC) 柔軟化によるYCC運用の見直しについては、日銀の金利抑制の大規模緩和金融政策そのものの大幅な修正ではなく、大規模緩和金融政策を現状維持の上での、日銀の国債買い入れオペに関する変更点であることが示唆されたことでは、日銀のマイナス金利政策の継続も意識され、高値後の円売りと安値後のドル買い戻しの抵抗が強まった。

なお、昼に日銀が発表した最新の「経済・物価情勢の展望リポート」でも、今年の日本の消費者物価指数 (CPI) の生鮮食品を除くコアの見通しを+2.5%と、以前の4月の+1.8%の見通しから大幅に上方修正する一方で、来年度の見通しでは+1.9%と、4月+2.0%から下方修正しており、大規模金融緩和金融政策の大部分に変化はないとしており、午後から参入の欧州英国市場でも、大規模緩和金融政策そのものが継続されたことでは、円の利益確定売りとドルの買い戻しも入り、日銀のYCC柔軟化発表以前のレベルに戻してドルが反発した。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は139円76~77銭付近で、昨夜17時の139円95~96銭付近の前東京終値比で約19銭の円高ドル安になった。

今夜この後にも最新の米国重要経済指標などの発表予定があり、日本時間の経済カレンダーでは、今夜21時半に 4〜6月の第2四半期の米国雇用コスト指数、米国個人所得、米国個人消費支出 (PCE) 、PCEデフレーター、PCEコア・デフレーターが発表され、23時には7月の米国ミシガン大学消費者態度指数なども発表される予定で、特に、「今後のデータ次第」の米国の賃金インフレに関連する米国雇用コスト指数と、PCEデフレーターは市場での注目度が高く、発表時の値動きには注意が必要である。

一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は153円9~10銭付近で、昨夜17時の155円71~72銭付近の前東京終値比で約2円62銭の大幅な円高ユーロ安であった。

主な要因は、前述の通り、次回の欧州利上げが「データ次第」になり、これまでの欧州利上げ継続予想で買われてきたユーロが売られたほか、日銀のYCC柔軟化による日本の長期金利上昇時の日欧金利差縮小による円買いユーロ売りや、後述のドルに対するユーロ安の波及もあったことで大幅になった。

また、株式市場での、日米株価下落時のリスク回避の低リスク通貨の円買い需要もあった。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0952〜1.0954ドル付近で、昨夜17時の1.1125〜1.1127ドル付近の前東京終値比で約1.73セントの大幅なユーロ安ドル高だった。

主な原因は、米国同様に次回の欧州の利上げがデータ次第なったものの、最近発表された欧州経済指標が市場予想比で下振れするものが多かった一方で、米国経済指標には市場予想上振れが多かったことが、米欧金利差予想に影響を与えた。欧米株安時のリスク回避でも、世界的に流動性の高い安全資産のドルよりも、ユーロが売られやすい点もあった。

今日の午後と夕方に発表された欧州経済指標では、欧州ユーロ圏のフランスの4〜6月期国内総生産 (GDP) の速報値の前期比が上昇する一方で、ドイツが以前よりも低下するなど強弱入り混じり、7月仏消費者物価指数 (CPI) 速報値の前月比が減少していた。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は178円62~68銭付近で、昨夜17時の181円72~78銭付近の前東京終値比で約3円10銭の大幅な円高ポンド安であった。

主な要因は、今日の日銀のYCC柔軟化により日本の長期金利上昇時の日英金利差縮小による円買いポンド売りや、ドルやユーロなどの他の主要通貨に対する円高の影響が波及した。

また、今日の日本の株安時のリスクオフ市場でも、低リスク通貨の円が買われやすく、ユーロやポンドが売られやすかった。

今日の東西FXニュース執筆終了前の2023年7月28日の日本時間(JST)19時48分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替市場時間の夏時間 (GMT+1 / BST) 11時48分) の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:48の為替レート 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比
ドル/円 139.23 〜 139.24 -0.72 (円高)
ユーロ/円 153.06 〜 153.08 -2.65 (円高)
ユーロ/ドル 1.0992 〜 1.0994 -0.0133 (ドル高)
英ポンド/円 178.81 〜 178.87 -2.91 (円高)
スイスフラン/円 160.02 〜 160.08 -3.29 (円高)
豪ドル/円 92.64 〜 92.68 -2.73 (円高)


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