FXニュース:米トランプと日銀の発言
2025年3月05日
東西FXニュース – 2025年03月05日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 欧軍備8千億ユーロ提案
- 米関税の景気減速リスク
- ユーロと円に年初ドル安
- 米商務長官発言警戒緩和
- 欧米ウクライナ和平期待
- 米長期金利低下後の上昇
今日2025年3月5日水曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の高値でドルの安値の150円19銭付近から、円の安値でドルの高値の149円42銭付近の値幅約77銭で、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は149円50銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の149円36銭付近の前東京終値比で約14銭の円安ドル高であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) マーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の欧州市場と英国ロンドン外国為替市場では、昨日からカナダとメキシコと中国に米国追加関税が発動され、報復関税が表明されていたことなどから貿易摩擦による世界経済への影響に警戒したリスク回避のリスクオフ (Risk-off) での株売りで欧州主要株価指数の独DAX (Deutscher Aktien-indeX) が反落し、低リスク通貨の円がドルに対して買われたほか、前日にドナルド・トランプ大統領が「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる。こうした国には関税を課す」と発言していたことに対し、日本政府の加藤財務官が「日本は通貨安政策を取っていない」と発言した影響による円の買い戻しも入っていた。
また、ウクライナ情勢関連では、欧州連合 (EU / European Union) のウルズラ・フォン・デア・ライエンフォンディアライエン欧州委員長が「防衛力強化のために約8000億ユーロの確保を目指す」ことや「全体的な欧州防衛でも1500億ユーロの融資を提案」するなどの欧州再軍備計画についての発言をしたニュースに続き、欧州ユーロ圏主要国ドイツのフリードリヒ・メルツ次期独首相も「国防費に対する債務ブレーキを改革し、1%を超える支出を免除する」ことや「ドイツは5000億ユーロの特別防衛基金を設立する」と発言したという一部報道が話題になり、軍需拡大による景気刺激策などが意識され、地政学リスク緩和期待も高まり、欧州ユーロ買いドル売りが入った外貨影響も対ドル円相場に波及し、昨夜21時28分頃にドルは円相場で一時148円10銭付近と、欧州英国市場および昨日の世界市場の日通しの円の高値でドルの安値を記録し、今年最大級の円高ドル安とユーロ高ドル安の更新に向けた。
市場安値後のドルには買い戻しが入り始めたことでは、欧州市場と英国ロンドン外国為替市場の後半にあたる昨夜22時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時148円21銭付近の始値であったが、米国景気減速懸念を受けては世界的な安全資産である米国債が買われていたため、米国債券価格上昇に伴う利回り低下が起き、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利がこの時間にも一時4.14%台付近の低利回りを見せていたことでは、債券利回りを受けた金利差トレードの日米金利差縮小時の円買いドル売りの影響もあり、昨夜22時58分頃にドルは円相場で一時148円19銭付近と、米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
また、世界ニュースでも、昨日から始まった25%の米国関税政策に対し、カナダのジャスティン・トルドー首相が米国からカナダへの輸入品に対し即時に25%の報復関税を課したことに加えて関税以外の報復措置も示唆し、メキシコも報復への動意を見せており、米国関税政策をきっかけにした貿易戦争が世界経済の悪影響を与える懸念も市場に影響を与えた。
昨夜の米国ニューヨーク株式市場が始まると、先行していた欧州主要株価の大幅下落に連れる様に、米国主要株価三指数も揃って下落のマイナス圏から始まり、下落幅を広げた深夜24時10分頃には欧米株価下落時のリスク回避のリスクオフで安全資産の米国債買いと低リスク通貨の円買いの勢いが増し、米国ニューヨーク債券市場で米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.10%台の昨年2024年10月以来の今年の最低利回りに向けていたため、深夜24時9分頃にドルは円相場で一時148円19銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を再記録した。v
しかし、米国ニューヨーク株式市場では、リスク回避のリスクオフの影響で一時はより大幅な下落を見せていた米国主要株価三指数の米国ダウ工業株 (Dow Jones Industrial Average) と米国S&P 500種株価指数 (Standard and Poor’s 500 index) と米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ Composite) に安値からの株の買い戻しが入り始めて下げ幅の縮小に向けたほか、米国ニューヨーク債券市場でも米国債券価格上昇後の米国債に売りが入り、二度目の米国市場安値をドルが円相場で下抜けしなかったことでは、テクニカル分析的なダブルボトム (Double Bottom) のドルの買い戻しサインとなり、同時進行中の世界最大規模の英国ロンドン市場でも午前1時のロンドン・フィキシングに向けた主要取引通貨としてのドル実需買いも入ったため、市場安値後のドルは円相場で反発上昇を始めた。
この原因の一つには、英国ロイター通信 (Reuters) などの一部通信社が米国政府の4人の関係筋の情報として、「ウクライナの鉱物資源の権益に関する協定に署名する見通し。トランプ大統領が、米国現地時間の4日夜の議会演説で合意を発表したいと顧問らに伝えたという。ただ署名はまだ行われておらず、状況は変わる可能性がある」との観測報道が話題になった影響もあったが、スコット・ベッセント米国財務長官は、現時点では「署名は予定されていない」と発言していたと米国FOXニュースがソーシャルメディアのXに投稿したが、昨日に米国がウクライナ軍の支援を停止すると報道があった後に、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領がトランプ大統領に書簡で、「鉱物資源取引に署名する用意がある」と伝えてきたとの噂もあり、以前の米国ウクライナ首脳会談の口論後にドナルド・トランプ大統領も「ゼレンスキー氏は和平の用意ができたらまた来ることができる」と発言していたことから期待感が高まり、リスク回避姿勢がやや緩和されたことが影響を及ぼした。
今朝早朝の米国ニューヨーク株式市場では、米国主要株価三指数の米国ダウ工業株 (Dow Jones Industrial Average) と米国S&P 500種株価指数 (Standard and Poor’s 500 index) と米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ Composite) が揃って前日比で安値の終値をつけたものの、一時の最大下落幅は市場後半に大幅に縮小しており、S&P 500種は一時プラス圏にまで反発上昇したものの、市場終盤の利益確定で戻して引けていた。
また、ハワード・ラトニック米国商務長官が、「トランプ大統領は、カナダとメキシコの関税縮小を明日発表する可能性」があることを示唆し、「カナダとメキシコについて、4月2日に関税の変更があるだろう」と発言したことも、米国関税政策による景気減速警戒のリスク回避のリスクオフの緩和につながったことでも、安全資産の米国債売りによる米国長期金利の反発上昇とドルの買い戻しとなり、米国ニューヨーク外国為替市場終盤の午前6時47分と6時52分頃にドルは円相場で一時149円88銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録し、この時間までに米国長期金利も大幅に反発上昇しており、今朝7時頃のニューヨーク終値の頃は一時4.248%付近と、一時の4.1%台から4.2%台に上昇していた。
このため、昨夜22時頃から今朝7時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の148円19銭付近から、円の安値でドルの高値の149円88銭付近の値幅約1円69銭で、今朝7時頃のニューヨーク終値は149円79銭付近と、前営業日同時刻の149円50銭付近の前ニューヨーク終値比で約29銭の円安ドル高をつけていた。
今朝早朝のアジア・オセアニア市場時間に続き、今朝9時頃からの今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時149円82銭付近の始値であったが、今朝9時頃から国際通貨基金 (IMF / International Monetary Fund) 主催のセミナーのイベントで日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の植田和男総裁の要人発言があり、「世界経済の分断は、各国間の経済活動の連携を損ない、金融政策の方向性の違いを拡大させかねない」との懸念を示し、地政学的リスクが高まると「国境を越えた資本フローの急激な反転を引き起こす可能性がある」と指摘して国際的な協力を呼びかけ、世界経済分断で中銀間の金融政策スタンスの乖離が拡大することにより市場のボラティリティーが高まり、為替レートの動きに不安定な影響を及ぼす可能性があるとしたものの、特に日銀の今後の金融政策についてのタカ派発言などが話題にならなかったことでは、発言への警戒感で買われていた円売りが売られたほか、今朝10時30分頃からの日銀の内田眞一副総裁の挨拶も「見通し実現なら引き続き金利を引き上げる」という以前の日銀追加利上げ方向維持からの特に目新しさがなく、円売りドル買いが入り、今朝10時44分頃に対ドル円相場は一時150円19銭付近にドルに対して円相場が下落し、一時150円台の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
また、日本時間の今朝11時頃 (時差遅れの米国現地時間では4日午後21時頃にあたる) から米国のドナルド・トランプ大統領が米国上下両院合同会議で施政方針演説をする要人発言に警戒した円売りドル買いも入っていたが、100分近くに及ぶ米国史上最長のライブ中継の中でも、開始直後に野次を飛ばした議員と口論になりかけて退席させるなどのアクシデントを交えながらも、「米国は戻ってきた。我がアメリカは、世界が見たことがない様な、そしておそらく二度と見ることもない様な、復活を遂げようとしている」と発言し、2017年の第一次トランプ政権時に成立させた減税案を延長するように求めたほか、4月2日に「相互関税」を導入する方針を改めて表明した。
そして、ドナルド・トランプ大統領も、ウクライナのゼレンスキー大統領が本日付けで、先日の米国ウクライナ首脳会談の時の口論による退出後に、未定となっていた鉱物資源取引に「署名する用意がある」と書簡で伝えてきたと語り、「我々がロ
シアと真剣に話し合ったのと同時に、彼らが和平の準備ができているという強いシグナルを受け取った」と説明し、「それは素晴らしいことではないか?」と署名に向けた前向きな姿勢を見せた。
ドナルド・トランプ大統領は米国関税政策について、「他国は何十年もの間、米国に関税を課してきたが、今度は我々が他の国に関税を課す番だ」とした一方で、インフレ圧については現実的な言及は避けており、卵の価格高騰についてなぜかジョー・バイデン前大統領を批判し、「インフレ抑制のためには、エネルギーコストを急速に削減する必要がある」とエネルギー増産により米国インフレを下げると述べていたが、人件費の高い米国内での増産ではコストが増える可能性もあり、関税ディール政策による原油輸入価格交渉も相手国の反応にもよるために現実的な具体案に不透明な部分などもあり、市場では米国関税政策による景気懸念が再びやや燻ったことでは、日本市場の高値後のドルには利益確定売りや持ち高調整で低リスク通貨の円が買い戻された時間があった。
日本市場でも都内での今朝からのIMF主催のイベントでの要人発言が続き、昼の13時30分頃からは以前の異次元の大規模緩和金融政策の日銀の黒田東彦前総裁の発言があったほか、13時45分頃から日本政府の三村財務官の発言があり、午後にも日銀の内田眞一副総裁の記者会見での再発言があることから、警戒感による円の買い戻しが一時入ったが、「金融政策、特に為替について誘導を意図したものではない」など、今後の日銀の追加利上げ時期やペースについての市場予想に影響を及ぼすほどの新規内容は特になかったが、日銀の追加利上げ方向の維持はやや意識されていた。
一方、今日の東京株式市場では、今朝は欧米主要株価下落の影響もあり一時はマイナス圏になっていた日経平均株価が反発し、午後にはプラス圏で推移していたことは低リスク通貨の円のやや抵抗になったものの、市場終盤には上昇幅を縮小し、午後15時30分に日経平均株価は3万7418円24銭の終値をつけ、前日比87円6銭高の小幅高で大引けした。
夕方からの欧州市場の参入では、今日の日本市場の時間外の米国債券取引で一時4.26%台付近への上昇を見せていた米国長期金利が、ウクライナ情勢への地政学リスク緩和の影響などでは今夕の欧州主要株価指数が反発上昇を見せ、夕方16時41分頃に一時4.268%付近に上昇したが、米国相互関税のよる景気警戒感などでは再び安全資産の米国債の買い戻しも入り、一時4.23%台付近に向けた反落を見せ始めたことでは、日本市場終盤の円の買い戻しも影響し、16時55分頃にドルは円相場で一時149円42銭付近と、今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録し、今朝の一時150円台のドルの市場高値から円相場で上昇幅を縮小していたが、欧州ユーロに対してドルや円も売られた外貨影響の波及もあった。
このため、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は149円50銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の149円36銭付近の前東京終値比では約14銭の円安ドル高になった。
今夜この後の米国市場では、最新米国重要経済指標などの発表予定があり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜23時15分に米国雇用関連の重要指標の2月米国ADP (Automatic Data Processing) 雇用統計の発表予定と、今夜23時45分に2月の米国サービス部門と総合の購買担当者景気指数 (PMI / Purchasing Managers Index) の改定値、深夜24時に米国景気関連の重要指標の 2月米国ISM (Institute for Supply Management / 米国サプライマネジメント協会) 非製造業景況指数と、同時刻に1月米国製造業新規受注、深夜24時30分に週間米国原油在庫、そして、28時に米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) が米国地区連銀経済報告(Beige Book / ベージュブック)を公表する予定などを控えている。
また、世界の株式市場と債券市場やコモディティ市場などの為替相場への影響に加え、米国関税政策やウクライナ情勢などを含んだ世界情勢などの政治ニュースや、要人発言なども世界のFXトレーダー達が注視していることが知られている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は159円49〜51銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の156円77〜78銭付近の前東京終値比で約2円71銭の大幅な円安ユーロ高であった。
主な要因は、前日の欧州連合 (EU) の北大西洋条約機構 (NATO) 加盟国の防衛費拡張に続き、欧州景気の刺激となる軍需拡張予算策が話題になり、地理的に近いウクライナ情勢の地政学リスク緩和期待もあり、欧州ユーロが円だけでなくドルに対して買われて上昇し、今年最大のユーロ高ドル安を更新しており、円相場でも欧州ユーロが大幅高になっていた。
そのため、ユーロドルも、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.0669〜1.0671ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の1.0491〜1.0493ドル付近の前東京終値比で約1.78セントの大幅なユーロ高ドル安であった。
欧州と有志連合となる英国の英国ポンドも上昇し、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は191円61〜67銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の189円68〜74銭付近の前東京終値比で約1円93銭の円安ポンド高であった。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2025年3月5日の日本時間(JST)20時55分(チャート画像の時間帯は2025年3月最終日曜日まで日本から時差9時間遅れの英国冬時間の標準時間 (GMT / Greenwich Mean Time) の英国ロンドン外国為替市場時間 (GMT / JST-9) の11時55分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。なお、米国市場は2025年3月9日から11月2日まで米国夏時間のサマータイム (Summer Time) に日本との時差が調整される予定で、欧州英国市場も2025年3月30日から10月26日まで英国夏時間のサマータイムに1時間変更の (BST / JST-8) に時差調整がされる予定には注意が必要ある。
通貨ペア | JST 20:55の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 149.37 〜 149.39 | +0.01 (円安) |
ユーロ/円 | 159.54 〜 159.56 | +2.77 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.0679 〜 1.0681 | +0.0188 (ドル安) |
英ポンド/円 | 191.52 〜 191.58 | +1.84 (円安) |
スイスフラン/円 | 168.00 〜 168.06 | +1.18 (円安) |
豪ドル/円 | 93.78 〜 93.82 | +1.12 (円安) |
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