FXニュース:金融不安緩和で低リスク通貨円売り

2023年3月21日
FXニュース:金融不安緩和で低リスク通貨円売り

 

東西FXニュース – 2023年03月21日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • UBSのCS買収等で金融不安鎮静化へ
  • クレディ・スイスAT1債が無価値に
  • 欧米株価のリスクオフとリスクオン
  • 今夜から米国連邦公開市場委員会

今日2023年3月21日火曜日の日本の東京外国為替市場は春分の日で祝日休場ですが、通常営業の世界市場と海外FX市場の9時から17時までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値131円90銭前後から高値131円4銭前後の値幅約86銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場相当時間の対ドル円相場は131円84~85銭付近で、昨夜17時の131円12~13銭付近と比較すると約72銭の円安ドル高であった。

今日の為替相場の値動きに影響を与えた要因は、欧州金融不安のリスク回避の安全資産である米国債買いによる米長期金利低下時の日米金利差縮小による低リスク通貨の日本円の買いと、その後の今夕の金融不安緩和に伴う欧米株価回復時の安全資産の米国債売りと低リスクの円売りの影響が挙げられる。

市場トレンドの動きでは、昨日の日本市場では19日にスイス政府の計らいなどでスイスの金融最大手のUBSが元ライバルで第2位だった経営難のクレディ・スイス (CS) を買収する合意がされたことや、日米欧英加瑞銀がドル資金供給拡充で協調する発表をしたことなどで欧米の金融不安が一時緩和されたものの、その後の昨夜の欧州英国市場では、クレディ・スイスのAT1債が無価値になるという発表を受けて欧米金融不安が一時再燃し、安全資産の欧米国債が買われた影響で欧米長期金利が低下して米長期金利が一時3.3%付近を下回って日欧米金利差が縮小し、ユーロやドルが売られて低リスク通貨の円が買われ、ドル円は17時台に一時130円54~55銭付近の2月中旬以来の円高ドル安を記録した。

原因は、スイス連邦金融市場監督機構 (FINMA) のウェブサイトの声明文で、UBSによる買収の合意に達したクレディ・スイス・グループの株主達は、約30億フラン相当のUBSの株式を受け取ることになった一方で、自己資本拡充のために約160億スイス・フラン (約2兆2800億円) 相当のクレディ・スイス発行のAT1債が無価値になることが判明し、一般的な減損処理では、AT1債で損失が生じる前に株主が損失を受ける筈が、クレディ・スイスとUBSのAT1債の発行条件に恒久的な元本減額を可能にする条項が含まれていたことで、株式ではなくAT1債の価値をゼロにするという異例の決定に、AT1債保有者の反感が起きたほか、およそ2750億ドル(約36兆円)規模の欧州英国AT1債市場は過去最大の損失懸念の急落になり、特に欧州の投資家達がリスク回避姿勢を強めた時間があった。

欧州と英国の金融当局は損失を被る順番の強調で沈静化を急ぎ、AT1債の価値がゼロに至る条項は一般的ではなく、AT1債の発行条件に恒久的な元本減額を可能にする条項が含まれているのはクレディ・スイスとUBSだけで、欧州や英国のほとんどの他の銀行ではより多くの保護が提供されているとし、一般的には株主が先に損失を被るべきでAT1債はその後であることを強調していたが、昨夜の欧州英国市場では投資家達はリスク回避で高リスクの銀行債を全て売却しようとしたことで暴落が起き、金融の専門家達は欧州の銀行などの今後の資金調達や新発AT1債市場への懸念しており、以前は銀行などが資産運用の債券ポートフォリオの利回りを高める比較的安全な方法の一つとして顧客に売り込んでいたことのある株式と債券の中間的な性質を持っていた証券のひとつである欧州や英国のAT1債市場は一時パニック状態になった。

対策として、欧州中央銀行 (ECB) と欧州銀行監督機構 (EBA) と銀行監督委員会や、欧州ユーロ圏の銀行破綻処理を担当する単一破綻処理委員会 (SRB) は公式の共同声明も発表し、株式の価値がゼロになった場合にのみ、AT1債を含む劣後債の保有者が損失を引き受けることになると表明し、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)も、英国の銀行破綻処理のフレームワーク (枠組み) には、損失引き受けの明確に定められた序列があるとし、AT1債保有者の損失の引き受けの順番は普通株等ティア1 (CET1) の後でティア2の前だと指摘し、先日にHSBCが買収したシリコンバレー銀行 (SVB) の英国部門の破綻処理でも、この純烈が適用されていたことを表明し、金融不安の沈静化にあたった。

クレディ・スイスのAT1債を保有していた資産運用会社には、米国のパシフィック・インベストメント・マネジメント (PIMCO) や、ブルーベイ・ファンズ・マネジメント・カンパニー・エスエーなどが知られており、クレディ・スイスのAT1債が紙切れになったことで損失の影響の波及なども懸念されていたが、すでにリスク回避で売却済であった可能性も指摘された。

欧州や英国の金融当局の沈静化への動きもあったことから、高値後の円の利益確定売りで安値のユーロやドルが買い戻される動きも徐々に入り始めた。

また、欧州英国市場の後半から時差で始まった米国ニューヨーク外国為替市場では、同時進行の米国ニューヨーク株式市場が三指数ともに回復上昇を示したことで、それまでのリスク回避で買われていた安全資産の米国債が売られ始めて米長期金利も回復上昇し、高値後の低リスク通貨の円の利益確定売りで安値後のドルの買い戻しが入り、ドル円は一時131円84~85銭付近までドルが上昇した。

しかし、今週は米ドルのイベント週であり、今回の金融不安の影響から、米国現地時間で今夜21~22日の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) での米国連邦準備制度理事会 (FRB) の次回利上げ予想は、0.25%の小幅利上げ継続が優勢ではあるが、一部では金融不安に配慮した利上げ見送りや早期の利上げ停止予想も浮上していたことでは、ドルの上値は持ち高調整や結果が分かるまでの買い控えなどもあり、イベントリスクで抑えられた。

そのため、今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場のドル円相場は、円の高値131円0銭前後から安値131円85銭前後の値動きで、今朝6時頃のニューヨーク終値を131円32銭付近の前日同時刻比で約53銭の円高ドル安であった。

その後の今日の日本の東京外国為替市場は、日本の春分の日の祝日で休場であったが、今朝早朝から時差の近いアジア・オセアニア市場が開いており、今朝のニュースで米国は金融危機が拡大した場合、すべての銀行預金を保証する方法を検討しているというニュースが伝わり、今朝9時台に一時131円60銭付近にドル買いが起きたが、すぐに利益確定売りの抵抗が入り、10時台には131円4銭付近の今日の日本市場該当時間の円の高値でドルの安値を記録した。

しかし、そこからは高値の円の利益確定売りと安値のドル買いが進み、特に今日の午後からの欧州英国市場では、欧米の政府や金融当局の金融不安沈静化への動きの影響による欧米金融不安の緩和に伴い、欧米株価が回復上昇し、安全資産の国債売りで欧米長期金利も上昇したことでリスクオンのユーロ買いやドル買いが増え、それまでのリスクオフで高値を記録後の低リスク通貨の円が、日本の祝日で実需も少ないことで売られて円相場が下げた。

また、今夜のフェッドウォッチ・ツール (CME FedWatch Tool) では、今週の米国現地時間22日 (日本時間では時差で翌日23日の早朝未明) に米国の新政策金利を発表予定の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) で、米国連邦準備制度理事会 (FRB) が0.25%の利上げ継続をする市場予想が、再び確定値超えの83.4%付近に達していることも、日米金利差拡大予想による円売りドル買い要因になっていた。現時点では、一時は上昇していた一部の次回の金利据え置き予想の確率は16.6%付近にまで減少している。

そのため、今夜17時は131円84~85銭付近で、昨夜17時の131円12~13銭付近と比較すると約72銭の円安ドル高になった。

今夜この後には最新の米国経済指標の発表予定などがあり、日本時間で23時から世界が注目する2日間の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の初日が始まるほか、23時に2月の米国中古住宅販売件数が発表される予定である。

一方、今日の欧州ユーロは、今夜17時のユーロ円相場の終値相当時間には141円27~29銭付近で、昨夜17時の139円81~83銭付近と比較すると、約1円46銭の大幅な円安ユーロ高であった。

原因は、昨夜は欧州金融不安で約2円の大幅な円高ユーロ安であったために、今日は欧州株価の回復などで、高値の円の利益確定売りとリスクオンの安値のユーロ買いで反発していた。

ユーロドルは、今夜17時には1.0718~1.0720ドル付近で、昨夜17時の1.0661~1.0663ドル付近と比較すると、約0.57セントのユーロ高ドル安であった。

昨夜のクレディ・スイスのAT1債が原因の欧州英国の金融不安のリスク回避では、ユーロ売りで低リスク通貨の円だけでなく、安全資産のドルも買われていたが、今日の午後からの欧州英国市場ではリスクオンの安値からのユーロ買いでドルも売られたことなどが影響していた。

また、今夜19時には欧州ユーロ圏の最新経済指標の発表があり、欧州ユーロ圏の1月の欧州建設支出は、前月比と前年同月比ともに前回マイナスだったものがプラス圏に回復したことも欧州景気好感のユーロ買いとなったが、同時発表の3月ZEW景況感調査や期待指数は、ドイツと欧州総合ともに低下していた。

今夜21時半からは、欧州中央銀行 (ECB) のラガルド総裁の発言予定もある。

英国ポンドは、今夜17時のポンド円相場の東京終値相当時間には161円34~40銭付近で、昨夜17時の159円84~90銭付近と比較すると、約1円50銭の大幅な円安ポンド高であった。

原因は、ユーロ同様に、英ポンドも昨夜は円高であったために、今日の欧州や英国株価の回復を受けたリスクオンで高値の円の利益確定売りで買われた影響が出ていた。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年3月21日の日本時間(JST)20時21分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替時間 (GMT) 11時21分)付近の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:21の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 132.21 〜 132.22 +1.09 (円安)
ユーロ/円 142.42 〜 142.44 +2.61 (円安)
ユーロ/ドル 1.0771 〜 1.0773 +0.0110 (ドル安)
英ポンド/円 162.01 〜 162.07 +2.17 (円安)
スイスフラン/円 142.87 〜 142.93 +1.57 (円安)
豪ドル/円 88.33 〜 88.37 +0.60 (円安)


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