FXニュース:欧米金融不安で低リスク円が上昇

2023年3月20日
FXニュース:欧米金融不安で低リスク円が上昇

 

東西FXニュース – 2023年03月20日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 安全資産の米国債買いで利回り低下
  • 日米金利差縮小時の円買いドル売り
  • 欧米日株安時の低リスク通貨円買い
  • 日米欧英加瑞銀がドル資金供給拡充
  • 大手UBSがクレディ・スイスを買収
  • 今週の米FOMC控えた持ち高調整も

今日2023年3月20日月曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値132円65銭前後から高値130円73銭前後の値幅約1円92銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は131円12~13銭付近と、前営業日17時の前東京終値比で約1円89銭の大幅な円高ドル安であった。

原因はまず、先週末の金曜の夜から土曜の朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では、欧米の金融不安による欧米株安時のリスク回避で、安全資産の米国債が買われて債権価格が上昇する一方で利回りが指標となる米国長期金利が一時3.38%付近に低下し、日米金利差縮小時の円買いドル売りに加えて、低リスク通貨の円買いや金などが買われて相場が上昇トレンドであった。

さらに、今週の21~22日の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) で米国連邦準備制度理事会 (FRB) が、先日に破綻した米国のシリコンバレー銀行 (SVB) やシグネチャーバンク (SBNY) 、シルバーゲート (SI) などの事件をきっかけに、一時は預金引き出しの立て付け騒ぎ寸前になり米国大手銀11行が救済案を発表した米国ファースト・リパブリック銀行 (FRC) や欧州のクレディ・スイス (CS) の経営悪化などで欧米の株価が再び下落し金融不安に発展したことに配慮して、今週の米国政策金利の利上げ幅の縮小や、利上げ停止時期を早める可能性などが一部で指摘されたことも市場予想に影響を与えており、日米金利差縮小予想の円買いドル売りやイベント前のドルの持ち高調整や買い控えなどで、一時131円56銭付近の2月中旬以来の円高ドル安を記録した。

欧米金融不安に対しては救済案が発表され始めたものの、米銀11行の預金救済の発表後にも米国ファースト・リパブリック銀行 (FRC) の株価が投資不適格のジャンク級に格下げされていた影響もあり30%以上も暴落し、連鎖的に他の金融機関等にも影響の波及の可能性があるのではないかという警戒感などから欧米の金融株売りなどが続き、米ドルのイベント前もあって、欧米株安時のリスク回避の低リスク通貨の円買いが優勢だった。

以前にはフェッドウォッチ・ツール (CME FedWatch Tool) で70%の確定値を超えて優勢だった0.25%の次回の米国新政策金利の利上げ予想値も今日は57.6%付近にまで低下し、利上げ見送り予想が42.4%付近に増えていることなども影響していた。

そのため、先週末の18日の土曜の朝までの米国ニューヨーク外国為替市場のドル円相場は、円の安値132円74銭前後から高値131円56銭前後の値動きで、131円85銭付近の前日同時刻比で約1円89銭の大幅な円高ドル安で先週末のニューヨーク終値をつけていた。

ただし、先週末のその後の19日の日曜日には、スイス政府や金融規制当局の計らいで、スイス最大級の金融機関のUBSが、第2位だった経営難のクレディ・スイスの救済案についての緊急協議の後に、UBSが30億スイスフラン (約4260億円) 相当の株式交換でクレディ・スイスを買収救済することに合意したと発表した。

同じく19日には、米国連邦預金保険公社 (FDIC) が「米国ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ (NYCB) が先日経営破綻した米国シグネチャー・バンク (SBNY) の預金と保有資産の一部を引き受ける」ことに合意したと発表した。

また今朝早朝には、日本銀行 (日銀 / BoJ) と米国連邦準備制度理事会 (FRB) 、欧州中央銀行 (ECB) 、スイス国立銀行 (SNB) 、英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) 、カナダ銀行 (BoC) の6カ国の中央銀行が、欧米発で世界市場に影響が波及しかねない金融不安に対応し、金融機関がドルの資金繰りで困らない様に、今日から4月末まで協調して市場へのドル供給を強化すると発表したニュースもあり、欧米金融不安がやや緩和された。

米国連邦準備制度理事会 (FRB) はこの対策を、「グローバルな資金調達市場の緊張を緩和するための、重要な流動性の裏付けとして機能する」と説明しており、日米欧英加瑞の各国中銀はドルを市場に安定供給する公開市場操作の回数を週次から日次に増やすことに合意し、金融不安で金融機関が経営難に陥っても各国中銀が貸し手となってドルを安定供給する安全網 (セーフティネット) の作成により、2008年の米国発の金融危機の後や2020年の新型コロナウイルス禍対策の時の様にドル供給で再び協調する運びとなり、金融システムと金融市場の安定化を目指す。

今日の日本の東京外国為替市場では、今朝早朝には最新ニュースなどを受けて、一時やや円売りドル買いも入ったが、今朝8時50分には日本銀行 (日銀 /BoJ) が前回の3月9日〜10日開催分の「日銀金融政策決定会合における主な意見」を発表しており、経済情勢の金融経済情勢に関する意見で、「わが国経済は資源高の影響などを受けつつも、感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで持ち直している」と、前向きな経済先行きを示し、「国内経済は全体として底堅く推移している。企業は設備投資(や賃上げ)に前向きであり、個人消費も回復基調にある」と、景気好感による低リスク通貨の円買いを再開させる内容を含んでいた。

今朝9時55分頃の仲値決済では、今日は20日で日本の貿易企業の決済日の集中しやすい5と10が付く日の五十日(ゴトービ)であったことから、輸入実需の円売りドル買いの抵抗が入ったが、輸出企業の円買いドル売りも入った。

救済案が発表される一方で、他にも危ない金融機関があるのではないかという欧米金融不安の景気への影響の警戒や、相対的な日本景気好感による低リスク通貨の円買いトレンドも継続し、今日の時間外の米長期金利もリスク回避時の安全資産の米国債買いの影響で低下傾向のままで、先週末の欧米株価下落の影響もあって今日の日経平均株価も下げたことでは、日本株安時のリスク回避の安全資産の円買いもあり、ニュースによる金融不安緩和の一時抵抗後には再び円相場が上昇を続けていた。

午後になり、今日の日経平均株価は26,945円67銭の、前営業日比388円12銭安の大幅安で大引けしたことも、日本市場での日本株安時の低リスク通貨の円買いを促していた。

明日からの米国イベント予定もあるが、明日の3月21日の日本市場は「春分の日」の祝日で休場予定のため、祝日前のポジション調整で円が買い戻されたことなども影響していた。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は131円12~13銭付近で、前営業日17時の前東京終値比では約1円89銭の大幅な円高ドル安になった。

今夜その後の欧州英国市場では、17時台に一時130円54銭付近にまでドルが売られたことでは安値のドル買いと高値の円売りの抵抗も入り始め、19時台には再び131円台中盤付近に戻している。

今夜この後には米国重要経済指標の発表予定はないが、今週は明日21日の夜から米国現地時間の22日で日本時間では23日の早朝未明まで、米国新政策金利や金融政策を決める米国連邦公開市場委員会 (FOMC) のイベント予定があるために、米国連邦準備制度理事会 (FRB) の決定内容に関する市場予想による持ち高調整や様子見の買い控えなどが現在のドル円の値動きに影響を与えている。

また、今夜この後の欧米株価のリスクオフやリスクオンの影響等にも注意が必要である。

欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は139円81~83銭付近で、前営業日17時の前東京終値比では約2円の大幅な円高ユーロ安になった。

ユーロ円も、前述の欧州にも支店がある経済域の近いスイスが本拠地のクレディ・スイスの株価下落などの欧州の金融不安が原因で、欧州利上げ後の景気懸念によるリスク回避の低リスク通貨の円買いユーロ売りが優勢だった。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0661~1.0663ドル付近で、前営業日17時の前東京終値比で±0.00セントの横ばいレンジ圏であった。

原因は欧米金融不安で、ユーロもドルも低リスク通貨の円に売られて下げていたことなどが影響していた。

ただし、今日は16時に欧州ユーロ圏主要国のドイツの最新経済指標の発表があり、2月の独生産者物価指数 (PPI) の前月比が前回の-1.0%と前回修正の-1.2%と市場予想の-0.5%に対し-0.3%にインフレ鈍化していた。

しかし、今夜19時には欧州ユーロ圏総合の1月の欧州貿易収支の発表もあり、季調前は前回の-88億ユーロに対し-306億ユーロだったが、季調済が前回の-181億ユーロと前回修正の-134億ユーロに対し-113億ユーロに赤字額が軽減したことではドル売りユーロ買いも出ており、今夜23時からは欧州中央銀行 (ECB) のラガルド総裁の発言予定もあり、ユーロドルは20時台にはややユーロ高にもなっている。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は159円84~90銭付近で、前営業日17時の前東京終値比で約62銭の円高ポンド安であった。

英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) も今週の23日に英国の新政策金利を発表予定だが、利上げ停止時期が近いとの市場予想があり、欧米英株安時のリスク回避の低リスク通貨の円買いに加えて、日英金利差縮小予想による円買いポンド売りも影響を及ぼしていた。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年3月20日の日本時間(JST)20時21分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替時間 (GMT) 11時21分)付近の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:21の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 131.12 〜 131.14 -1.89 (円高)
ユーロ/円 140.19 〜 140.22 -1.62 (円高)
ユーロ/ドル 1.0690 〜 1.0692 +0.0029 (ドル安)
英ポンド/円 160.20 〜 160.26 -0.26 (円高)
スイスフラン/円 141.10 〜 141.16 -1.21 (円高)
豪ドル/円 87.68 〜 87.72 -0.60 (円高)


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