FXニュース:日銀総裁発言で金融緩和修正予想減退

2023年1月23日
FXニュース:日銀総裁発言で金融緩和修正予想減退

 

東西FXニュース – 2023年01月23日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米長期金利上昇時の日米金利差拡大も
  • 金利抑制の日銀共通担保資金供給オペ欧州中央銀行 (ECB) 利上げ継続予想
  • 英国インフレ圧でも利上げ継続予想が

今日2023年1月23日月曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時までの外為取引時間のドル円相場の為替レートは、円の安値130円32銭前後から高値129円5銭前後の値幅約1円27銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は130円13~14銭付近で、前営業日17時の前東京終値比で約1円26銭の大幅な円安ドル高であった。

今日の値動きの原因はまず、先週金曜の夜の日本市場の終了後の欧州英国市場と土曜の朝までの米国ニューヨーク外国為替市場で、金曜の世界経済フォーラム (WEF) の第53回年次総会のスイスのダボス会議のパネル討論に参加した日本銀行 (日銀 / BoJ) の黒田東彦総裁が、物価目標の2%を安定的かつ持続的に達成するため、「現在の極めて緩和的な金融政策を継続する」と発言したことから、日銀の金利抑制の大規模な金融緩和策の継続予想が強まり、日米金利差拡大予想が優勢で円売りドル買いがあり、円相場が下落した。

黒田日銀総裁は、日本の最新経済指標の先月12月分の消費者物価コア指数 (CPI) が1981年12月以来の前年比4%の上昇率を記録して日銀目標の2%の倍に達した件についても、「輸入コストの上昇が主な要因で、消費者物価は2月から減速し始め、4月に始まる2023年度には平均で2%を下回る」との私見と予測を示しており、インフレ抑制のための利上げを日銀総裁は考えていないという姿勢を示したことから、これまでに日本のインフレ圧による日銀の大規模緩和金融政策の早期の再修正予想で買われていた円も売られ、金利抑制姿勢の日銀に反して利上げ継続予想があるドルやユーロやポンドなどが買われた。

また、同じ金曜の夜には米国連邦準備制度理事会 (FRB) のウォラー理事の講演発言の機会があり、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) では0.25%の利上げを望んでいるが、金融引き締めの継続も支持しているなどの言及をしたことで、米国ではインフレ抑制のための米利上げ継続予想が強まって米長期金利が上昇し、米10年債利回りが3.48%付近の前日比0.09%高の債権市場終値をつけたほか、日米金利差拡大予想による円売りドル買いが優勢であった。

金曜の深夜に発表された最新の米国経済指標の先月12月分の米中古住宅販売件数も、市場予想よりも堅調で、米利上げ抵抗要因となる米景気懸念もやや緩和されていた。

そのため、先週末の土曜の朝までの米国ニューヨーク外国為替市場のドル円相場は、円の安値130円62銭から高値129円45銭前後の値動きで、129円55~65銭付近の前日比で約1円20銭の大幅な円安ドル高で先週末の米ニューヨーク終値をつけていた。

週が明け、今日の日本市場の開始前の今朝8時50分には前月12月分の日銀金融政策決定会合議事要旨が公開され、今月1月の会合では日銀は金融緩和策を維持したものの、これは前回に日銀が長短金利操作のイールドカーブコントロール (YCC) の許容変動幅を±0.25%程度から±0.50%程度への拡大を決めた時の会合要旨であったために、物価動向について委員の一人が「物価上昇のモメンタム(勢い)が強くなってきている可能性がある」との意見を述べていたこともあり、以前に円買いの原因となった再修正圧がやや意識され、安値での円買いの抵抗が入った。(尚、モメンタム (momentum) とは、テクニカル分析において為替相場の変動の勢いや方向性を評価するオシレータ系指標のことを指す。)

今日の日本の東京外国為替市場の今朝9時55分の仲値決済に向けては、9時台前半には輸入実需の円売りドル買いもあったが、今日は日本の輸出企業による円買いドル売り注文の方が優勢で、9時台後半からは円相場は今朝までの下げ幅を縮め、12時頃には今日の日本市場の円に高値でドルの安値の129円5銭付近を記録した。

しかし、そこからは今日の日本市場でも米国トレンドを継承した日米金利差拡大予想による円売りドル買いが再び優勢になった。

特に、今日は日銀が金利抑制のための共通担保資金供給オペレーション(共通担保オペ)を開始したことも原因となり、円売りドル買いを加速させた。共通担保資金供給オペレーションとは、日銀に差入れられた国債や社債などの幅広い担保を裏付けにして金融機関などに資金を貸付ける資金供給オペレーションで、今回の貸付期間は1月24日~2028年1月24日の5年間に及び、14時過ぎに予定額の1兆円に対して3兆1290億円もの応札があり、1兆3億円を落札したと発表されたことから、資金供給を通じた日銀の金利抑制姿勢が意識され、反して利上げ方向であるドルやユーロやポンドなどの主要通貨に対して円が売られた。

今日は15時台に大引けした日経平均株価が上昇していたことでも、投資系のリスクオンの低リスク通貨の円売りで上昇トレンドだったドルやユーロなどが買われる一因にもなっていた。

今日は、日本と時間帯の近いアジアの中国や韓国や香港やシンガポールが春節や旧正月などの祝日で休場であったことも、世界市場のボラティリティ(価格変動性)を高めていた。

午後からは欧州英国市場の参入もあって円相場が更に下落し、16時台には今日の日本市場の円の安値でドルの高値の130円32銭付近を記録した。

そのため、今夜17時の今日の日本の東京外国為替市場のドル円相場の終値は130円13~14銭付近で、前営業日17時の前東京終値比では約1円26銭の大幅な円安ドル高になった。

今夜この後にも最新の米国経済指標の発表予定があり、日本時間での発表スケジュールは深夜24時に先月12月分の最新の米国景気先行指標総合指数が発表される予定である。

一方、今日の欧州ユーロは、今夜17時の今日の日本の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は142円1~2銭付近で、前営業日17時の前東京終値比で約2円30銭のより大幅な円安ユーロ高であった。

主な原因は、ドルの次回利上げ幅の市場予想値は0.25%が優勢でその次に0.5%であることに対して、ユーロは次回利上げ幅も0.5%の市場予想が優勢であることから、金利抑制の日銀に対する今日の金利差拡大予想が日米間よりも日欧間の方が大きかったことなどが影響した。

そのため、ユーロドルも今夜17時の今日の日本の東京外国為替市場の終値は1.0912~1.0913ドル付近で、前営業日17時の前東京終値比で約0.72セントのユーロ高ドル安になった。

先週末の英国ロンドン外国為替市場や米国ニューヨーク外国為替市場でも、欧州中央銀行 (ECB) の利上げ継続予想で欧州の国債利回りが上昇し、ユーロ買いの円売りやドル売りが優勢であった。

加えて、今日の日銀の金利抑制の共通担保資金供給オペを受けて、円が主要通貨に対して下げたことで、大幅な円安ユーロ高になっていた。

今夜この後には欧州ユーロ圏の最新経済指標の発表予定もあり、日本時間では今夜24時に1月の欧州消費者信頼感が発表される予定で、26時45分からは欧州中央銀行 (ECB) のラガルド総裁の発言予定も、今後の為替相場の値動き予想材料として市場で注目されている。

英国ポンドも利上げ継続予想があるために、今日の日銀の金利抑制オペなどによる日英金利差拡大予想が優勢で、今夜17時の今日の日本の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は161円51~57銭付近で、前営業日17時の前東京終値比で約91銭の円安ポンド高であった。

ドルやユーロやポンドなどの主要通貨に対する今日の円安は、他通貨にも影響を及ぼし、今日は日銀の金利抑制オペにより、主要通貨に対する全面的な円安が目立つ東京終値になった。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年1月23日の日本時間(JST)20時19分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替時間 (GMT) 11時19分)付近の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:19の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 130.15 〜 130.17 +1.28 (円安)
ユーロ/円 141.76 〜 141.77 +2.05 (円安)
ユーロ/ドル 1.0891 〜 1.0892 +0.0051 (ドル安)
英ポンド/円 160.91 〜 160.97 +0.31 (円安)
スイスフラン/円 141.40 〜 141.46 +0.61 (円安)
豪ドル/円 91.13 〜 91.17 +2.05 (円安)


注意:

本ウェブサイトに記載されている全ての情報またリンク先を含めた情報は、情報提供を目的のみとしており、取引投資決定、及びその他の利用目的のために作成されたものではありません。取引投資種、外国為替取引業者の選択、売買価格投資等の全ての最終決定については、利用者ご自身のご判断において行われるようお願い致します。

当社は、当サイトに掲載した情報によって万一閲覧者が被った直接・間接的に生じた損失に関して一切責任を負わないものとします。また、当社および当社に情報を提供している第三者は一切責任を負うものではございませんので ご了承ください。万が一、当サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社は一切責任を負いません。当社はこのウェブサイトの掲載内容を予告なしに変更または廃止することがございますので、あらかじめご了承おきください。