FXニュース:トランプセッション警戒
2025年3月11日
東西FXニュース – 2025年03月11日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米政策影響景気後退懸念
- 欧米主要株価指数大幅安
- 安全資産買い利回り低下
- 今年最大円高ドル安更新
- 日経平均株価下げ幅縮小
- 独財政拡張案交渉期待感
- 米長期金利低下後の反発
今日2025年3月11日火曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の高値でドルの安値の146円54銭付近から、円の安値でドルの高値の147円40銭付近の値幅約86銭で、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は146円93銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の147円62銭付近の前東京終値比で約69銭の円高ドル安であった。
ただし、今夜その後の英国ロンドン外国為替市場では、今日の日本市場で一時4.1%台に低下後の米国長期金利が一時4.2%台に反発上昇し、今夜20時台には小幅な円安ドル高への市場反転も見せている。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) マーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の欧州市場と英国ロンドン外国為替市場では、ドナルド・トランプ大統領が米国FOXニュースの「米国景気後退を予測しているか」と質問いうに対し、「過渡期がある」と明確に否定せず、「こういうことを予測するのは好きでない。我々はとても大きなことをしているために『移行期間』が存在する。我々は米国に富を取り戻そうとしているが、多少時間がかかる」と景気後退時期を容認する様な姿勢も見せており、米国関税や政府支出削減などに伴う景気後退の可能性から市場で燻っていた米国景気後退 (リセッション / Recession) 懸念が再燃し、第二次ドナルド・トランプ政権に起因する景気後退のトランプセッション (Trumpcession / Trump + Recessionの造語) への警戒感が高まり、世界的な安全資産の米国債買いにより、昨日の夕方に一時4.3%台に上昇後の米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.2%台に向けた大幅な反落を見せ、債券利回りの日米金利差縮小時の円買いドル売りや低リスク通貨の円が買われて、対ドルの円相場は前日比で円高ドル安に転じていた。
また、欧州市場でも、欧州ユーロ圏主要国ドイツで軍事費増額のために独中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU / Christian Democratic Union of Germany and the Christian Social Union in Bavaria / The Union Parties)と独中道左派の社会民主党(SPD / Social Democratic Party)が提案した大規模財政拡大政策の債務抑制策緩和やインフラ投資用の基金創設などの数千億ユーロ規模に及ぶ防衛インフラ支出パッケージに、独環境政党の同盟90/緑の党 (Bündnis 90/Die Grünen)が現状のままでは支持しない方針を示し、独議会で財政拡大成立のために必要な3分の2以上の賛成票を得られるかどうかの不透明感の懸念から、欧州主要株価指数の独DAX (Deutscher Aktien-indeX) が大幅に下落し、安全資産の米国債や低リスク通貨の円が更に買われたため、昨夜20時30分頃に対ドルの円相場で一時146円72銭付近と、一時146円台に上昇した。
また、欧州市場でも、欧州ユーロ圏主要国ドイツで軍事費増額のために独中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU / Christian Democratic Union of Germany and the Christian Social Union in Bavaria / The Union Parties)と独中道左派の社会民主党(SPD / Social Democratic Party)が提案した大規模財政拡大政策の債務抑制策緩和やインフラ投資用の基金創設などの数千億ユーロ規模に及ぶ防衛インフラ支出パッケージに、独環境政党の同盟90/緑の党 (Bündnis 90/Die Grünen)が現状のままでは支持しない方針を示し、独議会で財政拡大成立のために必要な3分の2以上の賛成票を得られるかどうかの不透明感の懸念から、欧州主要株価指数の独DAX (Deutscher Aktien-indeX) が大幅に下落し、安全資産の米国債や低リスク通貨の円が更に買われたため、昨夜20時30分頃に対ドルの円相場で一時146円72銭付近と、一時146円台に上昇した。
昨日付けの投資判断リポートでは、カナダの投資調査会社BCAリサーチ (Bank Credit Analyst Research) が、「米国政府効率化省ドージ(DOGE / Department of Government Efficiency)と米国関税が引き起こす不確実性が米国経済を景気後退に追いやる」ことを指摘し、米国株式の投資判断をアンダーウエート (Underweight) の売り推奨に下げたほか、英国ロイター通信が前週に実施していた米国とカナダとメキシコのエコノミスト達74名を対象とした調査レポートでも、90%以上に相当する70名が各国経済の景気後退入りへのリスクが高まったと回答しており、世界的なトランプセッション懸念が高まり、米国経済だけでなく相互関税などで他国や世界経済の先行きにも不透明感が増していた。
加えて、先週末にカナダの与党・自由党がジャスティン・トルドー加首相の後任の党首に、カナダや英国の中央銀行総裁を歴任したことのあるマーク・カーニー氏を選出したが、米国への報復関税を維持することを表明したことでも米国との貿易摩擦などへの懸念が高まり、カナダも産油国であるが、コモディティ市場では米国WTI原油先物相場なども下落した。
米国ニューヨーク株式市場では、米国主要株価三指数の米国ダウ工業株 (Dow Jones Industrial Average) が一時1100ドル以上も大幅な下落を見せ、米国S&P 500種株価指数 (Standard and Poor’s 500 index) も一時200ドル強下落、米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ Composite) も一時900ドル近くの大幅な下落を揃って見せ、米国主要株価下落時のリスク回避のリスクオフによる安全資産の米国債買いや低リスク通貨の円買いが為替相場に影響を与えていた。
また、イーロン・マスクの政治的発言などの影響もあり、電気自動車販売台数減少などが起きた米国テスラ (Tesla) 株が前営業日比で一時16%安と2020年9月以来の暴落を見せたほか、仮想通貨にも全般的な売りが増えていた。
しかし、米国ニューヨーク債券市場では、安全資産の米国債買いの影響で米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が昨夜23時台に一時4.20%台から4.19%台付近にまで下げると、米国債券価格上昇後の利益確定売りや持ち高調整の抵抗も入り始めたことでは、米国長期金利が一時反発したことでは、世界的に流動性が高いドルの買い戻しも入り始めた。
また、米国ニューヨーク株式市場では米国主要株価三指数が前営業日比で揃って大幅安の終値に向けたものの、安値からの株の買い戻しも混ざったことでは一時の下げ幅は縮小していたことでも、低リスク通貨の円の利益確定売りや持ち高調整のドルの買い戻しも入り、午前3時36分にドルは円相場で一時147円47銭付近に反発し、米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
このため、昨夜21時頃から今朝6時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の146円63銭付近から、円の安値でドルの高値の147円47銭付近の値幅約84銭で、今朝6時頃のニューヨーク終値は147円27銭付近と、前営業日同時刻の148円4銭付近の前ニューヨーク終値比で約77銭の円高ドル安をつけていた。
今朝早朝のアジア・オセアニア市場時間でも低リスク通貨の円買いにより円相場が一時146円78銭付近に再上昇したが、本日の日本市場に先行した日本の最新経済指標の発表があり、今朝8時30分の1月日本全世帯家計調査の消費支出の前年同月比は前回の2.7%と市場予想の3.6%を下回る0.8%に低下し、続いて今朝8時50分に発表された2024年10〜12月第4四半期の日本実質国内総生産 (GDP / Gross Domestic Product) の改定値も前期比が前回と市場予想の0.7%に対し0.6%に下方修正され、年率換算も前回と市場予想の2.8%以下の2.2%に下方修正されたことでは円売りが入り、今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時147円8銭付近の始値であった。
今日の日本市場では、今朝未明に訪米中の日本政府の武藤容治経済産業相が米国ワシントンで米国政府のハワード・ラトニック商務長官や米国通商代表部(USTR)の代表達と会談した朝のニュースがあったが、明日3月12日から適用の鉄鋼・アルミニウム製品への米国追加関税について、「日本除外との言質は得られなかった」ことが明らかになり、トランプセッション警戒感などから昨夜の欧米主要株価指数が大幅に下落した影響の波及もあって、今日の東京株式市場でも日経平均株価が大幅な下落を見せて始まると、日米株価下落時のリスク回避のリスクオフで国内第一安全資産でもある低リスク通貨の円が買われてドルに対して上昇し、今朝9時52分頃に対ドル円相場は一時146円54銭付近と今日の日本市場の円の高値でドルの安値をつけ、また昨夜の米国市場で記録していた今年最大の円高ドル安の記録も更新した。
今年の年内高値を更新後の円には利益確定売りや持ち高調整のドル買いの抵抗も入り始めたが、今朝10時15分頃に日経平均株価が前営業比で一時1000円以上の大幅な下落を見せ、時間外の米国債券取引では世界的な安全資産でもある米国債も買われたことでは、今朝11時8分頃に米国10年債の利回りが指標の米国長期金利が一時4.157%付近と一時4.1%台に低下したため、この時間のドルの買い戻しは重かったが、その後には日経平均株価が下げ幅を縮小し始めたため、米国債券価格上昇後の米国債売りで米国長期金利が反発して夕方の一時4.205%付近に向けて下げ幅を縮小し始めたことでは、ドルも円相場で反発して下げ幅を縮小し始めた。
午後15時30分頃には、今日の日経平均株価が3万6793円11銭の終値をつけ、前営業日比で235円16銭高の終値の大幅安で大引けしたが、その直前にも今朝の一時の前日比で約1033円安の超大幅な下げ幅からは縮小していたことでは、低リスク通貨の円の利益確定売りや持ち高調整も入り、午後15時21分頃にドルは円相場で一時147円40銭付近と、今日の日本市場の円の安値でドルの高値をつけて、今朝の大幅な下げ幅を縮小した。
夕方からの欧州市場参入では、昨夜に欧州ユーロ圏主要国ドイツで懸念されていた独環境政党の同盟90/緑の党 (Bündnis 90/Die Grünen)のフランシスカ・ブラントナー共同党首が、「独キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と防衛費について交渉の用意があり、週内にも合意の可能性がある」との見解を示したことで独財政拡大政策の交渉成立への期待感が高まり、世界的な安全資産の米国債売りで米国長期金利が反発上昇を見せる一方で、欧州ユーロが買われてユーロドルが一時1.0901ドル付近と昨年11月以来の今年最大のユーロ高ドル安をつけ、低リスク通貨の円に対してもユーロが買われた影響がドル円に波及した。
このため、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は146円93銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の147円62銭付近の前東京終値比では約69銭の円高ドル安になった。
ただし、今夜その後の英国ロンドン外国為替市場では、欧州市場で安全資産の米国債が売られて米国長期金利が反発後に一時4.2%台で上昇を続けたことでは、今夜20時台には小幅な円安ドル高への市場反転も見せている。
今夜この後の米国市場では、最新米国経済指標の発表や米国債入札予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜23時に1月米国雇用動態調査 (JOLTS / Job Openings and Labor Turnover Survey) 求人件数と、26時に米国3年債の入札予定などを控えている。
また明日3月12日水曜日の夜には、市場注目度が高い最新米国重要インフレ指標の2月米国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) とコア指数などのイベントも控えており、加えて世界の株式市場と債券市場やコモディティ市場などの為替相場への影響や、米国関税政策やウクライナ情勢などを含む世界情勢などの政治ニュースと要人発言なども世界のFXトレーダー達が注視している。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は159円96〜98銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の159円68〜70銭付近の前東京終値比で約28銭の円安ユーロ高であった。
主な要因は、前述の通り、独財政拡大政策の交渉成立への期待感が高まり、欧州ユーロが、世界的に流動性が高い安全資産でもあるドルや低リスク通貨の円に対して上昇した。
そのため、ユーロドルも、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.0889〜1.0890ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の1.0823〜1.0825ドル付近の前東京終値比で約0.66セントのユーロ高ドル安であった。
一方、英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は189円66〜72銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の190円25〜31銭付近の前東京終値比で約59銭の円高ポンド安であった。
主な要因は、欧州ユーロには欧州ユーロ圏のドイツの財政拡張案への期待感の買い戻しがあったことに対し、英国ポンドには福祉予算カットなどによる軍事費増額懸念で買い戻しが重く、日米欧英株価下落時の低リスク通貨の円買いの影響が残った東京終値になった。
しかし、今夜その後の20時台には、欧州ユーロが大幅な円安ユーロ高になった外貨影響の波及もあり、欧州と経済圏が近く欧州ユーロに連れやすい英国ポンドも円安ポンド高に市場反転を見せている。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2025年3月11日の日本時間(JST)20時30分(チャート画像の時間帯は2025年3月最終日曜日まで日本から時差9時間遅れの英国冬時間の標準時間 (GMT / Greenwich Mean Time) の英国ロンドン外国為替市場時間 (GMT / JST-9) の11時30分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。なお、米国市場は2025年3月9日から11月2日まで米国夏時間のサマータイム (Summer Time) に日本との時差が調整され、欧州英国市場も2025年3月30日から10月26日まで英国夏時間のサマータイムに1時間変更の (BST / JST-8) に時差調整がされる予定には注意が必要ある。
通貨ペア | JST 20:30の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 147.68 〜 147.69 | +0.06 (円安) |
ユーロ/円 | 160.90 〜 160.92 | +1.22 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.0894 〜 1.0896 | +0.0071 (ドル安) |
英ポンド/円 | 190.91 〜 190.97 | +0.66 (円安) |
スイスフラン/円 | 167.36 〜 167.42 | −0.34 (円高) |
豪ドル/円 | 92.70 〜 92.74 | −0.58 (円高) |
注意:
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