FXニュース:米景気減退懸念のドル売りと低リスク通貨の円買いが継続

2022年8月02日
FXニュース:米景気減退懸念のドル売りと低リスク通貨の円買いが継続

 

東西FXニュース – 2022年8月02日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 最新ISM製造業景況感指数悪化で安全資産の国債買いで米長期金利が低下
  • 今夜のペロシ米下院議長の台湾訪問で米中関係緊張の地政学リスクも
  • 豪準備銀行(RBA)理事会が0.5%利上げで新豪政策金利を1.85%に

今日2022年8月2日火曜日の東京外国為替市場のFXの対ドル円相場の為替レートは、9時から17時の東京外為取引時間の円の安値が131円52銭前後から高値130円40銭前後の値動き幅約1円12銭で、17時の今日の東京外国為替市場の終値は130円78〜80銭前後で、前日同時刻の前東京終値比では約1円77銭の大幅な円高ドル安であった。

原因はまず、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場で発表された最新の米経済指標の6月の米建設支出が、前回の0.1%減と改定値の0.1%と市場予想の0.3%増に対して今回は1.1減で、プラスの市場予想に反してマイナスに悪化していた。それに加えて、速報でほぼ同時に発表された最新の米国重要経済指標の7月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数も、前回の53.0に対して今回は52.8に悪化していた。

米ISM製造業景況感指数は市場懸念予想の52.2ほどの悪化幅ではなかったが、米インフレ等の影響で新規受注の停滞が目立ったことで製造業の景気懸念が深まり、先日の米GDPの二四半期連続でのマイナス成長のテクニカル・リセッションの米景気減退懸念も強まった。

米景気懸念のリスク回避で安全資産の米国債が買われて米長期金利が低下し、かねてからの円安要因だった日米金利差拡大予想が減退し、日米金利差縮小時のドル売りと低リスク通貨の円買いが優勢になり、対ドルでの円相場が上昇した。

また、日本時間で今夜に予定されているの米国のペロシ下院議長の台湾訪問を巡り、中国政府が強く反対しており、「ペロシ氏が台湾を訪問すれば、中国は強固な対抗措置を取り、中国軍も決して黙ってはいない」と発言したことで、米中関係の緊張が高まり、地政学リスクでもドルが売られて、低リスク通貨の円買いや外貨買いでのリスクオフが起きていた。

そのため、今朝までの米国ニューヨーク市場でも対ドルの円の為替相場は一時131円60銭の数ヶ月ぶりの高値をつけ、今朝の米国ニューヨーク外国為替市場の終値は131円55~65銭で、同時刻の前ニューヨーク終値比では約1円60銭の大幅な円高ドル安だった。

そのトレンドを受け継いで始まった今日の日本の東京外国為替市場と世界市場でも、米景気減退懸念と米中関係リスクと米長期金利低下時のドル売りと円買いが優勢で、また最新の米経済指標を受けて「今後の利上げはデータ次第」という米連邦準備制度理事会(FRB)が米景気懸念の強まりで今後の利上げをしにくくなるのではないかという投資系の予想も出てきたことから、投資系の持ち高調整でもドルが売られて低リスク通貨の円が買われた。

日本時間の取引でも時間外の債券市場で米10年債の利回りが指標となる米長期金利が低下し、日米金利差拡大予想の減退から、ドル売り円買いが起き、日本市場の始まりの9時には131円台中盤付近であったドルは、10時過ぎには一時130円40銭付近に売られて、円相場は6月以来の数ヶ月ぶりの高値をつけた。

10時前の仲値決済での輸入実需でのドル買い抵抗よりも、今朝は輸出系や投資系のドル売りの勢いの方が強かった。また、ペロシ米下院議長の台湾訪問による米中関係の緊張の米ドルリスク売りの低リスク通貨の円買いも、中国の反対にも関わらず、今日の続報でペロシ氏が日本時間の今夜に台湾に到着する予定がニュースになり、米地政学リスクが高まった。

昼頃の日本市場でも米景気懸念のドル売り円買いが優勢であったが、今夜予定のペロシ米下院議長の台湾訪問の様子見による買い控えなども混ざり始めた。また、安値圏での米ドルのショートカバーなども入り、ドル買いの抵抗も入り始めた。

しかし、15時台になり、低調の日経平均株価が27,594円73銭の前日比398円62銭安で大引けすると、為替によるリスク回避も入り、低リスク通貨の円が買われる機会もあり、130円台中盤を下回りそうになったことから、午後に時差で朝の欧州英国市場の参入では安値の米ドル買いで131円台前半に一時反発した。

日本市場の国債も株安時の債権買いなどのリスク回避で低水準で推移していたが、夕方の米長期金利も2.5%台の低水準で推移していたため、17時の今日の東京外国為替市場のドルの円相場の終値は130円78~80銭で、同時刻の前日比で約1円77銭の大幅な円高ドル安であった。

今日のユーロにも、低リスク通貨の円買いによる円相場の上昇が波及しており、今夜17時の東京外国為替市場の終値は133円78~80銭で、前日比で約1円81銭の大幅な円高ユーロ安だった。今日の日本市場では一時133円67銭付近の、対円でのユーロ安も記録していた。欧米景気懸念により、今日の今夜17時のユーロ対ドルは1.0229~30ドルで、前日比と同水準の横ばいレンジであった。

ただし、ユーロは昨夜の欧州英国市場では一時は対ドルで上昇しており、ドル安ユーロ高であった。その原因も、米景気懸念と米連邦準備理事会(FRB)の利上げペース減速予想でのユーロ買いとドル売りだった。

しかし、欧州ユーロ圏のエネルギー供給問題などによる欧州景気減速懸念もありユーロ売りの低リスク通貨の円買いと、欧州債利回り低下で日欧金利差縮小時の円買いユーロ売りが優勢となり、今朝までの米国ニューヨーク市場で大幅な円高ユーロ安になっていた。

そして、対ドルでの円買いがユーロ売りにも波及し、今朝の円の高値時の10時過ぎにはユーロ対円も、134円05銭付近の数ヶ月ぶりの円の高値をつけていた。

今日の日本市場の午後になり、時差で朝の欧州英国市場が始まると、日経株価低下時の低リスク通貨の円買いで再び安値になっていたドルがユーロから買われ、夕方にはドイツ10年債の利回りが0.714%付近の低水準で米長期金利低下時のドル売りのユーロ買いが弱まり、ユーロ対ドルは前日比でレンジに近い値動きで17時の今日の東京終値を迎えた。

今夜その後の欧州市場では、19時台には再び、米景気懸念と米中問題などから、僅差でドル安ユーロ高寄りにもなっている。

英ポンドも、昨夜の英国ロンドン市場では対ドルで上昇しており、米景気懸念や米中リスクでの米ドル売りに加えて、今週は英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)の新金利発表を控えており、英国の記録的なインフレ抑制のための利上げ継続予想などから持ち高調整のドル売りのポンド買いが起きていた。

しかし、今日の午後に発表された英国の最新経済指標の7月ネーションワイド住宅価格指数は、前回0.3%(改定0.2%)と市場予想の0.5%に対し、0.1%だった。

今日の低リスク通貨の円買いトレンドの中で、英ポンドも英国景気懸念が根強く、住宅価格指数も予想以下に下がっていることで過剰な利上げ継続期待も一時減退し、ポンド売りでも低リスク通貨の円が買われたことで、円相場が上昇しており、今夜17時の東京終値は159円61〜67銭で、前日比で約1円64銭の円高ポンド安であった。

オーストラリアの豪ドルは、今日、豪準備銀行(RBA)理事会が新政策金利を発表し、0.5%の利上げ幅で1.85%に利上げを決定した。今回の利上げ幅は市場予想通りではあったが、一部では大幅利上げへの期待から余剰に買われていた豪ドルが売られ、発表後には豪ドル対円は91円台後半から90円台後半に下落した。

また、豪準備銀行(RBA)理事会後の声明文では、今後の利上げに関しては「予め設定されていない」とした上で、今後の経済データ次第との姿勢から、利上げ継続予想の減退も豪ドル売りに繋がった。しかし、オーストラリアの利上げ要因もインフレ対策の優先で、インフレ率を目標の2~3%の範囲にすることを優先するという記述も盛り込まれてはいた。この2%台のインフレ目標に最も近い主要通貨は現在、低リスク通貨の円なので、豪ドル売りでも低リスク通貨の円が買われやすくなっていた。

今日はドルやユーロなどの外貨への低リスク通貨の円買いもあったために、今夜17時の東京外国為替市場の豪ドル円の終値も90円62〜66銭で、前日比で約1円86銭の大幅な円高豪ドル安で、今日は前日比で全面的な円高の東京終値を記録した。

また、世界需要の引き締まりから今日は原油価格も低下しており、日本の貿易赤字継続リスクの低減からも、低リスク通貨の円が買われやすくなっていた。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年8月2日の日本時間(JST)19時11分(英国夏時間(GMT+1)11時11分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:11の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 130.95 〜 130.96 -1.60(円高)
ユーロ/円 134.03 〜 134.05 -1.56(円高)
ユーロ/ドル 1.0234 〜 1.0236 +0.0005(ドル安)
英ポンド/円 159.87 〜 159.93 -1.38(円高)
スイスフラン/円 137.58 〜 137.64 -0.92(円高)
豪ドル/円 90.60 〜 90.64 -1.88(円高)


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