FXニュース:米賃金インフレが市場予想以下

2023年3月13日
FXニュース:米賃金インフレが市場予想以下|

 

東西FXニュース – 2023年03月13日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 最新米国雇用統計で失業率増加
  • 米FRB利上げ加速予想の一時減退
  • 米金融不安で安全資産の国債買い
  • 米国債価格上昇で利回りが低下
  • 米長期金利低下で日米金利差縮小

今日2023年3月13日月曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値134円97前後から高値133円56銭前後の値幅約1円41銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は134円47~48銭付近で、前営業日17時の前東京終値比で約1円93銭の大幅な円高ドル安であった。

今日の為替相場のドル円の値動き要因はまず、先週末の金曜の夜から土曜の朝までの米国ニューヨーク外国為替市場で発表された米国連邦準備制度理事会 (FRB) のパウエル議長も注目の最新の米国重要経済指標の2月の米国雇用統計で、米国の賃金インフレが市場予想以下であったことや米国失業率の増加により、米国のインフレと堅調な米雇用市場を背景とした米国利上げ加速予想が一時減退し、日米金利差縮小予想の円買いドル売りが起きた。

先週金曜の夜22時半に発表された最新の2月の米国雇用統計の失業率は、前回と市場予想の3.4%に対し3.6%に悪化した。

米国の非農業部門雇用者数変化の前月比も、前回の51.7万人と前回修正の50.4万人の増加に対し、市場予想の20.5万人ほどではなかったものの、31.1万人と前回以下だった。

米国の賃金インフレの指標ともなる2月の米国平均時給は、前月比が前回と市場予想の0.3%に対し0.2%で、前年同月比でも前回の4.4%と市場予想の4.7%に対し4.6%と前回からは増加したものの市場予想以下であったことから、想定以下の米国の賃金インフレにより、米国のインフレ抑制のための積極的なタカ派の大幅利上げ加速予想が一時減退したことにより米長期金利が低下し、日米金利差縮小予想の円買いドル売りが優勢になった。

また、米国ハイテク起業のベンチャーキャピタル (VC) で中堅投資銀行としても知られていた米国シリコンバレーバンク (SVB) ファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行が経営破綻し、その原因が米国利上げ継続により米国債利回りが上昇する一方で債権価格が下落を続けた米長期国債の大量保有による預金引き出し時の売却時損失であったことがニュースになり、金融不安による株売りの米株安時のリスク回避で、大損失が出たほどの今の米国債の安値が注目されて安値での安全資産の米国債買いで債権価格が上昇回復したことに伴い米10年債の利回りが指標となる米長期金利が前日の3.9%付近から3.7%付近に急落したことも、米長期金利低下による日米金利差縮小時の円買いドル売りを加速し、一時134円12銭付近の2月24日以来の米国市場での円の高値でドルの安値を記録した。

加えて、米国市場では、クリプトカレンシー (暗号資産) の仮想通貨を扱う米国シルバーゲート銀行の親会社である米シルバーゲート・キャピタルが事業閉鎖を発表したこともあり、景気懸念が高まっており、先週の米国ニューヨーク株式市場では、金融系を中心とした株売りによるリスクオフで、ドルから買える低リスク通貨の円買いなども起きていた。

続いて、28時には米国経済指標の2月の月次財政収支が発表されたが、前回の-388億ドルと市場予想中央値の-2560億ドルに対し、-2624億ドルと前回と市場予想以上に赤字額が増えたことも、利上げ抵抗要因である米国景気懸念によるドル売りの一因となった。

そのため、先週末の米国ニューヨーク外国為替市場のドル円相場は、円の安値136円80銭前後から高値134円12銭前後の値動きで、先週の土曜の朝7時頃のニューヨーク終値を135円3円付近の前営業日同時刻比で約1円12銭の大幅な円高ドル安をつけていた。

週が明け、今朝の日本市場に時差で先行するアジア・オセアニアを中心とした世界FX市場でも、先週末の米長期金利の低下を受けて、日米金利差縮小時の円買いドル売りが優勢になり、今朝7時過ぎには一時133円58銭付近と対ドルの円相場が急伸を続けた。

ただし、今朝8時50分には日本の最新経済指標の発表があり、1~3月四半期の日本法人企業景気予測調査の大企業全産業業況判断指数 (BSI) は前回の0.7に対し-3.0で、大企業製造業業況判断指数 (BSI) も前回の-3.6に対し-10.5に低下したことでは、今朝9時から始まった今日の日本の東京外国為替市場では、朝に円売りドル買いの抵抗が入ったことで、今朝9時前の日本市場の開場直前に一時135円4銭付近を記録したほか、9時頃には今日の日本市場での円の安値でドルの高値の134円97銭付近から始まった。

また、今朝早朝のニュースで前述の米国シリコンバレー銀行 (SVB) の経営破綻を受けて、米国財務省と米国連邦準備制度理事会 (FRB) と米国連邦預金保険公社 (FDIC) が預金者保護のための共同声明と金融機関への資金供給策を発表したことも、安値のドルの買い戻しや高値の円の利益確定売りの一因になり、円相場は一時134円台で推移した。

しかし、今日は日本の輸出企業のまとまった円買いドル売りが入ったほか、今日の日本市場の時間外債権市場でも安値感の出ていた米国債買いで債権価格が上昇する一方で利回りは低下し、米10年債の利回りが指標となる米長期金利の低下が続き、先週末の3.7%付近を割ったことで、11時頃からは再び日米金利差縮小時の円買いドル売りが優勢になり、昼頃には133円台後半に円相場が上昇した。

そこからは、米長期金利低下も収まってきたことで高値の円の利益確定売りや安値のドルの買いの抵抗も入ったが、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は134円47~48銭付近で、前営業日17時の前東京終値比で約1円93銭の大幅な円高ドル安になっていた。

ただし、今夜その後の欧州英国市場では、再び米長期金利が低下し一時3.52%台を記録したことで、134円台後半からのドルの利益確定売りが入り、18時台後半には一時132円95銭付近の2月15日以来のさらに大幅な円高ドル安も記録したが、直後には安値のドルの買い戻しも入り133円台に戻している。

今夜この後には特に重要な米国経済指標の発表予定はないが、明日の火曜の夜には米国連邦準備制度理事会 (FRB) のパウエル議長も注目している最新の米国重要経済指標の米国消費者物価指数 (CPI) の発表予定があり、明後日の水曜の夜にも米国小売売上高や米国生産者物価指数 (PPI) の発表予定と、木曜の欧州中央銀行 (ECB) の新政策金利発表があり、また来週には米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の米国新政策金利発表予定などの大きなイベントを控えていることには注意が必要である。

米FRB高官達は来週のFOMCを控え、今週から公式発言を自粛するブラックアウト期間に入るが、以前にパウエル議長は、先週末の米雇用統計に加えて、CPIやPPIにも注目していると公言していたことで、今週も重要度の高い米国経済指標などの発表予定が注目される。

一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は144円25~26銭付近で、前営業日17時の前東京終値比で約27銭の円高ユーロ安であった。

原因は、今日の日米金利差縮小時の大幅な円高ドル安の影響が波及したことに加えて、今日の夕方には欧州長期債の利回りも一時低下したことで、米国の金融不安の飛び火への警戒の欧州株安時のリスク回避の安全資産の欧州国債買いがあり、債権価格が上昇すると利回りが指標に欧州長期金利が低下するため、日欧金利差縮小時の円買いユーロ売りなどもあった。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値1.0726~1.0728ドル付近で、前営業日17時の前東京終値比で約1.32セントの大幅なユーロ高ドル安だった。

原因は、先述の米長期金利低下時の欧米金利差によるものが大きいが、米国金融不安や景気懸念の影響も見られ、先週末の欧州英国市場でも大幅なユーロ高ドル安を記録していた。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は162円77~83銭付近で、前営業日17時の前東京終値比で約70銭の円安ポンド高であった。

原因は、先週末の英国ロンドン外国為替市場では、金曜に発表された最新の英国重要経済指標の1月の英国国内総生産 (GDP) の前月比が、市場予想以上に上昇したことで景気好感のポンド買いがあったことに加えて、米金利低下時には対ドルで英ポンドも買われて大幅に上昇した影響が円相場にも波及していた。

ただし、今日の夕方の米国金融不安の影響への警戒のリスク回避の安全資産の国債買いでは英国長期金利が低下したことは一時抵抗要因になり、また米国金融不安の波及への警戒の株安に加えて、先述の経営破綻した米国シリコンバレーバンク (SVB) の英国部門を、英国にあるHSBC銀行がわずか1ポンドで買収救済すると発表した今日のニュースも影響を及ぼしている。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年3月13日の日本時間(JST)20時24分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替時間 (GMT) 11時24分)付近の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:24の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 133.49 〜 133.50 -2.91 (円高)
ユーロ/円 142.37 〜 142.39 -2.15 (円高)
ユーロ/ドル 1.0664 〜 1.0666 +0.0070 (ドル安)
英ポンド/円 161.07 〜 161.13 -1.00 (円高)
スイスフラン/円 145.85 〜 145.91 -0.47 (円高)
豪ドル/円 88.58 〜 88.62 -0.07 (円高)


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