FXニュース:日銀が大規模金融緩和を維持

2023年3月10日
FXニュース:日銀が大規模金融緩和を維持

 

東西FXニュース – 2023年03月10日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米雇用統計発表前の調整進む
  • 米新規失業保険申請件数増加
  • 米国の大幅利上げ予想が減退
  • 米長期金利低下時のドル売り
  • 株安リスク回避の米国債買い

今日2023年3月10日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値136円98銭前後から高値135円82銭前後の値幅約1円16銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は136円31~33銭付近で、前日17時の前東京終値比で約52銭の円高ドル安であった。ただし、今夜20時台の欧州英国市場では、小幅な円安ドル高に市場反転もしている。

今日の為替相場のドル円の値動き要因は、今夜注目されている米国雇用統計の発表前に、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場で22時半に発表された前週分の米国新規失業保険申請件数が市場予想の19万5000件よりも悪化した21万1000件だったことを受けて、これまでの堅調な米国雇用市場を背景とした米国連邦準備制度理事会 (FRB) のインフレ抑制のための今月21~22日の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) での大幅利上げ予想が減退し、次回の0.5%利上げ予想が70%の確定値を下回る54.3%付近に低下した影響などで米国長期金利が低下し、日米金利差縮小時の円買いドル売りが強まった。

ただし、今夜この後に発表予定の米国雇用統計の重要度の方が高く、「今後のデータ次第」とパウエル議長も先日言及していた注目のイベント前のドルの持ち高調整や、結果が分かるまでの買い控えや様子見も進んでおり、また、今日は日本銀行 (日銀 / BoJ) が金利抑制の大規模緩和の金融政策の現状維持を決定した時には、円が一時急落した時間などもあった。

時間に沿った市場トレンドの動きは、まず昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では、22時半の前述の先週分の米国新規失業保険申請件数が市場予想よりも弱かったことで、米国の大幅利上げ予想の減退による米長期金利低下で、日米金利差縮小時の円買いドル売りとともに、米国景気懸念も浮上し、22時半過ぎに一時135円95銭付近の米国市場でのドルの安値で円の高値を記録した。

同時進行だった米国ニューヨーク株式市場でも、金融株などを筆頭に米株価三指数が大幅に下落したことで、米株安時のリスク回避で安全資産の米国債買いや、低リスク通貨の円買いが起きた。特に金融政策の影響を受けやすいと考えられている米2年債利回りが急低下した一方で債権価格は上昇したため、株価下落時のリスクオフで買われた影響もあり、米10年債の利回りが指標になる米長期金利の低下にも影響が波及していた。

ただし、0.5%の大幅利上げ予想はフェッドウォッチ (CME FedWatch Tool) で54.3%付近に低下したものの、残りの45.7%も0.25%の通常利上げ幅での米国利上げ継続を示していたことからは、米国の利上げ長期化予想による日米金利差拡大予想による円売りドル買いもあり、今朝2時過ぎには一時136円48銭付近にドルが買い戻された時間もあった。

しかし、今夜に予定されている米国重要経済指標の米国雇用統計の前にも、今日の日本時間の昼頃に日銀金融政策決定会合の発表を控えていたことへのイベントリスクの警戒もあり、昨年に日銀イールドカーブ・コントロール (YCC) の許容値が変更された時のサプライズの様な事態に備えたドル円のイベント前の持ち高調整が入り、また、結果が分かるまでのドルの買い控えやイベント前の様子見では、横ばいに近い動きも交えた。

そのため、今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場のドル円相場は円の高値135円95銭前後から安値136円46銭前後の値幅約51銭で、今朝7時頃のニューヨーク終値のドル円は136円15銭付近の前日同時刻比で約1円21銭の大幅な円高ドル安であった。

その後に始まった今日の日本の東京外国為替市場でも、今朝早朝に発表された日本の最新経済指標の2月の国内企業物価指数が前月比と前年同月比ともに市場予想より低下したことを受けて、日本の景気好感や、一部での日銀のイベント前の修正期待感買いなどもあり、米長期金利低下時の日米金利差縮小時の円買いドル売りが継続し、今朝9時台後半に一時135円82銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録したが、直後の9時55分頃の仲値決済では、今日は日本の貿易企業の決済日の集中しやすい5と10がつく日の五十日のため、輸入実需の円売りドル買いの抵抗も入った。

今朝10時過ぎのニュースでは、今朝の国会で次期日銀総裁に経済学者の植田和男氏、そして副総裁に氷見野良三氏と内田真一日銀理事を任期5年で起用する政府人事案が承認され、昨日の衆院に続き、今日の参院本会議で賛成多数で可決していた。

しかし、今日昼前に発表された日本銀行 (日銀 / BoJ) の日銀金融政策決定会合の結果は、大方の市場予想通りではあったが、現状の金利抑制の大規模緩和の金融政策と長期金利許容変動幅上限の0.5%±をそのまま維持する決定であったことでは、日米の金融政策の方向性の違いによる日米金利差拡大予想が強まり、円相場が一時1円以上も急落し、今日の日本市場の円の安値でドルの高値の136円97〜98銭付近を記録した。

午後には、今回最後と言われている任期終了前の日銀の黒田東彦総裁の日銀金融政策決定会合後の記者会見があり、大規模緩和の出口についての質問に対し、「出口について、云々するのは時期尚早だと今も考えている」と発言していた。黒田総裁の発言は最後もやはり、異次元大規模緩和であった。しかし、市場では次期の日銀総裁へと注目が移りつつあった。

ただし、今朝までの米国の大幅株安の影響もあり、今日は日本の日経平均株価も大幅下落したことでは、株安時のリスク回避で低リスク通貨の円買いがあった。

また、安全資産の米国債買いのリスクオフでも米長期金利が低下していたために、午後からの欧州英国市場の参入でも、今夜この後の米ドルの重要経済指標の米国雇用統計の発表イベント前の持ち高調整のドル売りと円買いも入った。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は136円31~33銭付近で、昨夜17時の前東京終値比では約52銭の円高ドル安になっていた。

しかし、今夜この後の注目の米国雇用統計の発表イベントを目前に控えた持ち高調整では、ドルの利益確定売りの後の買い控えで安値感が出たドルの買い戻しなどの持ち高調整もあり、イベントリスクでの様子見や買い控えの動きと、イベント予想売買が混在しており、今夜20時台の欧州英国市場では、横ばいレンジ圏から小幅な円安ドル高に市場反転もしている。

今夜この後には、日本時間の22時半に最新の重要米国経済指標の2月の米国雇用統計が発表される予定で、米国の非農業部門雇用者数、失業率、製造業雇用者数、平均時給などのデータ内容は、市場のFXトレーダーや投資家達だけでなく米国連邦準備制度理事会 (FRB) のパウエル議長本人も注目している。28時には、2月の米国月次財政収支も発表予定がある。

また、来週には米国の消費者物価指数などの発表予定もあり、パウエル議長が利上げを決める「今後のデータ次第」のデータとして、注視していることをすでに公言している。

一方、今日の欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は144円43~44銭付近で、昨夜17時の前東京終値比と同じ横ばいレンジ圏に近い僅差の約1銭の円高ユーロ安であった。

しかし、今日の日銀の金融緩和維持による日欧金利差拡大予想の影響もあり、今夜その後の欧州英国市場では、19時台までに円安ユーロ高に市場反転している。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0594~1.059ドル付近で、昨夜17時の前東京終値比で約0.38セントのユーロ高ドル安だった。

先述の米国経済指標の前週分の米国新規失業保険申請件数を受けた米長期金利低下時には、米欧金利差によるユーロ買いドル売りが優勢になった。

また今日の夕方に発表された欧州ユーロ圏の主要国ドイツの最新経済指標の2月の独消費者物価指数 (CPI) の改定値は、前月比と前年同月比ともに前回と市場予想通りの横ばいで、欧州インフレも上昇は鈍化しても高止まりしている利上げ長期化の可能性があった。

続いて発表されたフランスの1月の仏経常収支は、前回の-85億ユーロと前回修正の-76億ユーロに対し-36億ユーロで、1月の仏貿易経常収支も前回の-149.34億ユーロと前回修正の-147.26億ユーロに対し-129.39億ユーロに赤字額が減ったことも好感されていた。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は163円9~15銭付近で、昨夜17時の前東京終値比で約93銭の円安ポンド高であった。

原因は、日銀の金融政策の維持による日英金利差拡大予想に加えて、今日の夕方16時にイギリスの最新の重要英国経済指標の1月の月次英国国内総生産 (GDP) の発表があり、前回の-0.5%と市場予想の0.1%に対して0.3%に上昇したことで、英国景気好感による英ポンド買いがあった。

ただし、より重要度は低いが同時発表だった1月の英国鉱工業生産と英国商品貿易収支と英国製造業生産指数がいずれも市場予想以下であったことでは、すぐには大幅なポンド高にはならずに、その後の英国ロンドン外国為替市場時間になってから、じわじわと前日比で1円を超える大幅な円安ポンド高になっている。

今夜の米ドルのイベント前で、円売りでドルが買いにくいので、今夜その後のイベントリスクがない英ポンドやユーロを買っている印象もあった。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年3月10日の日本時間(JST)20時9分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替時間 (GMT) 11時9分)付近の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:09の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 136.87 〜 136.88 +0.04 (円安)
ユーロ/円 145.04 〜 145.06 +0.60 (円安)
ユーロ/ドル 1.0596 〜 1.0598 +0.0040 (ドル安)
英ポンド/円 163.90 〜 163.96 +1.74 (円安)
スイスフラン/円 147.36 〜 147.42 +1.73 (円安)
豪ドル/円 90.17 〜 90.21 +0.56 (円安)


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