FXニュース:米FRBのFOMC大幅利下げ
2024年9月19日東西FXニュース – 2024年9月19日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米経済見通し軟着陸期待
- 米FRBパウエル議長の発言
- 米ボウマン理事はタカ派
- 米長期金利予想上方修正
- 米イベント後のドル反発
- 日経平均輸出株買い戻し
- 日銀金融政策会合始まる
- 英新政策金利5%据え置き
今日2024年9月19日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の安値でドルの高値の143円94銭付近から、円の高値でドルの安値の142円4銭付近の値幅約1円90銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は142円46〜47銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の141円90〜91銭付近と比べると約56銭の円安ドル高であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) のマーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の東京外国為替市場終了後の英国ロンドン外国為替市場では、時差で英国現地時間の夜19時で米国現地時間の午後14時にあたる日本時間の今朝未明3時頃の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の米国新政策金利と金融政策の声明文と経済見通し (SEP) の発表とその30分後からの米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のジェローム・パウエル議長の定例記者会見での発言のイベントを控え、イベント前の持ち高調整と様子見の値動きが為替相場に影響を与えていたことから、英国ロンドン外国為替市場の後半にあたる昨夜21時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時141円85銭付近の始値であった。
米国市場では最新米国経済指標の発表もあり、昨夜21時30分に発表された8月の米国住宅着工件数が前回の123.8万件と前回下方修正の123.7万件と市場予想の131.0万件を上回る135.6万件に上昇し、同時発表の8月の米国建設許可件数も前回マイナス圏だった-6.8%と市場予想の5.8%を大きく上振れするプラス圏の9.6%に改善し、8月の米国建設許可件数も年率換算件数が前回の139.6万件と前回上方修正の140.6万件と市場予想の141.0万件を超える147.5万件に上昇し、前月比も前回マイナス圏だった-4.0%と前回上方修正の-3.3%と市場予想の1.0%を上振れするプラス圏の4.9%に上昇するなど堅調で、米国景気懸念の緩和を受けては、金融政策イベント前のイベントリスクのドルの買い控えの中でも、安全資産の米国債が売られた影響では債券価格低下に伴う利回り上昇が起き、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が上昇し、昨夜21時頃に一時3.680%付近だった米国長期金利は昨夜23時50分頃には一時3.698%付近に上昇したため、債券利回りを受けた金利差トレードでは円売りドル買いが入り、昨夜23時52分頃にドルは円相場で一時142円7銭付近に上昇していた。
また、金利先物市場のデータを基に米国政策金利のフェデラル・ファンド (FF / Federal Funds) レートの市場予想値を算出する米国シカゴ・マーカンタイル取引所 (CME / Chicago Mercantile Exchange) のフェドウオッチ (FedWatch) ツールでは、この後の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) で米国連邦準備制度理事会 (FRB) の米国利下げ幅の市場予想値が、0.25%の米国小幅予想値が昨日の午後の一時39.0%付近から午前3時のイベント直前には一時45.0%付近に上昇し、一方で0.50%の米国大幅利下げ予想値は昨日の午後の61.0%付近からイベント直前に一時55.0%付近に低下するなど、米国利下げは確実視されていたものの、大小の米国利下げ幅予想値がほぼ拮抗に近い状態でイベントを迎えたため、イベント5分前の午前2時55分頃のドル円は一時142円6銭付近で推移していた。
午前3時には、米国の中央銀行制度にあたる米国連邦準備制度理事会 (FRB) が2日間に渡る金融政策会合の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) を終えて米国新政策金利が発表され、0.50% (50 bp = 50ベーシスポイント) の米国大幅利下げを決定し、これまで5.25〜5.50%だった米国政策金利のフェデラル・ファンド (FF / Federal Funds) レートを4.75〜5.00%に引き下げた。
午前3時の米国大幅利下げ発表の瞬間には、ドルは円相場で一時140円77銭付近に急落したが、声明文に「最近の米国経済指標は、米国経済活動が引き続き堅調なペースで拡大していることを示している。米国雇用市場の伸びは鈍化し失業率は上昇したが、依然として低い。インフレ率は委員会のインフレ目標の2%に向けてさらに進展したが、依然やや高止まりしている」と指摘されたことや、今回の米国大幅利下げは全員一致の賛成ではなく、タカ派で知られる米国連邦準備制度理事会 (FRB) のミシェル・ボウマン理事が0.25% (25bp = 25ベーシスポイント) 米国小幅利下げを支持する反対票を投じたややタカ派寄りの多数決での決断であったこと、そして、市場が注目していた米国経済見通し (SEP / Summary of Economic Projections) と米国政策金利の金利先行きを予測するための金利見通しのドット・チャート (Dot chart / Dot plot) は、2024年末時点の中央値が4.375%、2025年末時点は3.375%、2026年末時点が2.875%とこれまでと同じ内容で、また米国長期金利見通しは前回の2.750%から上方修正されて2.875%に上昇しており、これまでの市場予想ではもしも今回が米国小幅利下げだった場合には今後の追加利下げ幅が大幅または加速することで最終的な利下げ幅が拡大することへの警戒感があった中で、今回の米国大幅利下げ後にほぼ市場予想通りの今後の利下げ幅の見通しが出てきたことでは、最終的な利下げ幅予想を受けたドルの買い戻しなども混じり始めた。
しかし、今後の見通しなどの詳細については、午前3時30分頃からの米国連邦準備制度理事会 (FRB) のジェローム・パウエル議長の定例記者会見の要人発言が重要イベントとして注目されていたことではイベントリスクが意識され、記者会見の始まりの今回の米国大幅利下げ決定についてのアナウンスではその警戒感が高まり、米国ニューヨーク債券市場では安全資産の米国債が一時大量に買われて米国債券価格急騰に伴う利回り急落が起き、米国10年債の利回りが指標の米国長期金利は午前3時30分頃に一時3.642%付近に急落していたため、午前3時34分頃にはドルは円相場で一時140円44銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
しかし、ジェローム・パウエル議長の発言が進むにつれ、市場での警戒感が緩和されてドルの買い戻しが入り始め、今回の米国大幅利下げは「後手に回らないという決意の表れ」という予防的措置で、「物価上昇率が持続的に目標の2%に向かっていく確信が深まった」ことや「米国経済と労働市場の強さを維持し、物価抑制のさらなる進展を可能にする」と発言したことでは、米国経済のソフトランディング (Soft landing / 軟着陸) 期待によるドル買い戻しが入ったほか、今後の米国追加利下げについては「データ次第」としながらも、「米国の失業率は、歴史的に見れば今でも堅調」という楽観的な見解も述べており、労働市場が極端に悪化しなければ、追加利下げを「急ぐことを示唆する予測は何もない」ことや、「適切であれば、米国利下げを早めたり遅らせたり、一時停止したりもする」と発言し、今回の様な0.50%の大幅利下げ継続を、「新たなペースと見なすべきではない」と追加利下げを急がない姿勢を見せたことなどでは、円や主要通貨に対するドルの買い戻しが勢いを増し、ジェローム・パウエル議長の発言後にはイベントリスクによる買い控えも収まり、ドルは円相場で米国大幅利下げ発表前のレベルの142円台に向けた買い戻しが進み下げ幅を縮めた。
米国ニューヨーク債券市場でも、安全資産の米国債が価格上昇後の利益確定売りや持ち高調整で売られて米国長期金利が反発後に上昇を続け、市場終盤には一時3.720%付近に上昇したため、午前4時50分にドルは円相場で一時142円71銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値および日通しのドルの高値を記録したほか、今朝早朝の米国ニューヨーク債券市場の終値時点の米国10年債の利回りは3.706%付近と前日比で+0.058上昇した。
午前5時に発表された最新米国経済指標の7月の対米証券投資も、前回の1075億ドルと前回修正の920億ドルに対して1565億ドルに上昇し、短期債除くコアも前回の961億ドルと前回修正の805億ドルを大幅に上回る1354億ドルに上昇していた。
一方、米国ニューヨーク株式市場では、米国主要株価三指数の中でも金利に敏感な米国ダウ工業株30種平均 (Dow Jones Industrial Average) が米国大幅利下げを受けては一時上昇したものの今後の利下げを急がない可能性では反落の終値に向けたほか、世界的なハイテク企業比率の高い米国ナズダック総合株価指数 (NASDAQ Composite) と米国S&P 500種 (Standard and Poor’s 500 index) も小幅安の終値に向けたことでは、市場安値後の低リスク通貨の円が買い戻されたが、今日から日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) も2日間の日銀金融政策決定会合のイベントリスクを控えることなどでは小幅域に留まった。
このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の140円44銭付近から、円の安値でドルの高値の142円71銭付近の値幅約2円27銭で、今朝6時頃のニューヨーク終値は142円29銭付近と、米国市場の前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の142円41銭付近と比べると約12銭の円高ドル安をつけていた。
今朝早朝から始まったアジア・オセアニア市場でも、イベントリスク経過後のドルの買い戻しが入ったため、今朝9時頃からの今日の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時142円70銭付近であったが、今日の東京株式市場では米国景気懸念緩和と米国経済のソフトランディング期待などの影響で、米国を主要取引先に持つ輸出企業の日本株の買い戻しが進み、日経平均株価が前日比で一時1000円高付近の大幅な上昇を見せたため、日本株価上昇時のリスク選好のリスクオン (Risk-on) で国内第一安全資産の低リスク通貨の円売りが起きたことで円相場が下落し、一方で時間外の債券取引での世界的な安全資産の米国債売りの影響で米国10年債の利回りが指標の米国長期金利は今朝10時40分頃には一時3.739%付近に上昇していたため、債券利回りを受けた日米金利差トレードの円売りドル買いも入り、今朝10時40〜41分頃に対ドルの円相場は一時143円94銭付近と、今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
しかし、上昇後の日経平均株価が利益確定売りの抵抗もあって上昇幅を縮めたことでは、低リスク通貨の円売りドル買いも鈍りドルは円相場で反落し、午後15時頃に今日の日経平均株価は3万7,155円33銭の終値をつけて前日比775円16銭高で大引けしたことでは、高値のドルの利益確定売りも入り始めた。
また、午後からの欧州英国市場の参入では、今夜20時に英国中央銀行のイングランド銀行 (英中銀 / BoE / Bank of England) の英中銀金融政策委員会 (MPC / Monetary Policy Committee) が、英国の新政策金利と金融政策の発表のイベントと議事要旨の同時公表を控えていたこともあり、世界的な安全資産の米国債に買い戻しが入り始めて米国長期金利が上昇幅を縮めてマイナス圏にタッチした影響があり、債券利回りを受けた日米金利差縮小時の円買いドル売りの影響などでは、午後16時15分頃にドルは円相場で一時142円4銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
しかし、今日の日本市場の夕方で欧州や英国の現地では時差で朝市場にあたる欧州や英国の株式市場で取引先でもある米国の大幅利下げと米国景気懸念緩和の影響があり、欧州と英国の主要株価指数が上昇したことでは、再び市場高値後の低リスク通貨の円が利益確定売られ始めて、ドルは円相場で反発した。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は142円46〜47銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の141円90〜91銭付近と比べると約56銭の円安ドル高になった。
なお、今夜その後の20時の英国ロンドン外国為替市場では、先述の英国イングランド銀行 (BoE) 金融政策委員会 (MPC) が英国の新政策金利を発表し、市場予想通りに従来と同じ5.0%に据え置きを決定した。
前回の英国の小幅利下げ時には目標通りの一時2.0%だった英国インフレ率が今回は2.2%に再上昇しており、インフレへの警戒感が金利据え置きの要因であることは市場で予想されていたが、まだインフレ率が目標値に達する前からの米国大幅利下げの影響では、発表まではイベントリスクが意識されていた。
今夜この後の米国市場では、最新米国経済指標の発表予定などがあり、日本時間の経済市場カレンダーのスケジュールは、今夜21時30分に4〜6月第2四半期の米国経常収支と、9月の米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数と、前週分の米国新規失業保険申請件数と米国失業保険継続受給者数が同時発表される予定で、続いて今夜23時に8月の米国景気先行指標総合指数と8月米国中古住宅販売件数の発表を控えている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は158円82〜84銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の157円95〜97銭付近と比較すると約87銭の円安ユーロ高であった。
主な要因は、今日から明日の日銀金融政策決定会合のイベントリスクを日本円が控える中で、イベントリスク経過後の欧州ユーロやドルに対して円相場が下落していた。
ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.1147〜1.1148ドル付近と、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の1.1130〜1.1132ドル付近と比較すると約0.15セントのユーロ高ドル安であった。
主な要因は、米国大幅利下げを受けたドル売りの影響が見られたほか、今日の欧州主要株価上昇を受けたリスク選好のリスクオンでは、低リスク通貨の円や安全資産の米国債売りだけでなく、世界的な流動性の高さから欧州ユーロに対する安全資産でもあるドルが、欧州ユーロに対して売られたことでは小幅安になっていた。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は188円72〜78銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の187円28〜34銭付近と比べると約1円44銭の大幅な円安ポンド高であった。
主な要因は、欧州ユーロやドルに対する今日の東京終値時点での円安の外貨影響の波及があったほか、今日の午後の英国主要株価上昇時の低リスク通貨のイベントリスク売りや英国政策金利イベント前の持ち高調整でも英国ポンドが買い戻されたほか、英国市場ではインフレ警戒感から今月の英国政策金利の据え置き予想が優勢であったことでは、日英金利差も為替相場に影響を及ぼしていた。
なお、今夜その後の20時過ぎの英国ロンドン外国為替市場では、英国新政策金利の据え置き決定後には英国ポンドは円相場で一時190円台にも上昇している。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年9月19日の日本時間(JST)20時11分(チャート画像の時間帯は、3月の最終日曜日から10月の最終日曜日まで英国夏時間 (BST / British Summer Time) に1時間の時差変更がされており、今日の日本から時差8時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の英国夏時間 (BST / GMT+1 / JST-8) の12時11分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。(なお、米国市場でも3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までは米国夏時間 (EDT / Eastern Daylight Time / GMT-4 / JST-13) になっている。)
通貨ペア | JST 20:11の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 143.02 〜 143.04 | +1.12 (円安) |
ユーロ/円 | 159.73 〜 159.75 | +1.78 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.1166 〜 1.1168 | −0.0036 (ドル高) |
英ポンド/円 | 190.23 〜 190.29 | +2.95 (円安) |
スイスフラン/円 | 169.01 〜 169.07 | +1.01 (円安) |
豪ドル/円 | 97.67 〜 97.71 | +1.51 (円安) |
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