FXニュース:欧米リスク回避の国債と円買い

2023年3月16日
FXニュース:欧米リスク回避の国債と円買い

 

東西FXニュース – 2023年03月16日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 欧米金融不安で安全資産が上昇
  • 最新米経済指標が市場予想以下
  • 米FRB利上げ長期化予想が減退
  • 日本の貿易赤字額が想定以下に
  • クレディ・スイスに国立銀貸付
  • 欧州中央銀行 (ECB) 新政策金利

今日2023年3月16日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値133円49銭前後から高値132円50銭前後の値幅約99銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は133円11~12銭付近と、前日17時の前東京終値比で約1円75銭の大幅な円高ドル安であった。

今日のドル円の為替相場の値動き原因は、まず昨夜の欧州英国市場では経営不振のクレディ・スイス (CS) の株価急落で、欧米の金融不安によるリスク回避が再燃し、安全資産の欧米国債が買われたことで債権価格上昇に伴う利回り低下により欧米の長期金利が低下し、日本との金利差縮小時のユーロ売りやドル売りで低リスク通貨の円が買われて円相場が急伸した。

さらに、日本時間で昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では、昨夜21時半に最新の米国重要経済指標の2月の米国小売売上高の前月比が前回の3.0%と前回修正の3.2%と市場予想の-0.3%に対し-0.4%に低下し、2月の米国卸売物価指数 (PPI) の前月比も前回の0.7%と前回修正の0.3%と市場予想の0.3%に対し-0.1%の市場予想以下で、前年同月比でも前回の6.0%と前回修正の5.7%と市場予想の5.4%に対し4.6%と市場予想を下回り、米国利上げ長期化の抵抗要因である景気懸念とインフレ鈍化を示した。

食品とエネルギーを除いたPPIコア指数の前月比も、前回の0.5%と前回修正の0.1%と市場予想の0.4%に対し0.0%で、前年同月比でも前回の5.4%と前回修正の5.0%と市場予想の5.2%に対し4.4%に鈍化し、米国のインフレ抑制のための米国連邦準備制度理事会 (FRB) の利上げ抵抗要因になり得ることから、米国利上げ長期化予想が減退した。

また、同時発表だった3月の米国ニューヨーク連銀製造業景気指数も前回の-5.8と市場予想中央値の-8.0に対し-24.6に大幅に低下してことが米国景気懸念に繋がり、金融不安で欧米の株価が再下落していたため、先日の米国中堅銀行のシリコンバレーバンクなどの経営破綻や、この日のクレディ・スイスの経営不振などを受けた欧米金融不安よるリスク回避の安全資産の欧米の国債買いや日米金利差縮小時の低リスク通貨の円買いに拍車をかけた。

同時進行中の米国ニューヨーク債権市場では、先日のシリコンバレーバンク(SVB)など米国の中堅銀行の破綻に続き、昨夜はEEAのスイスの金融大手クレディ・スイス・グループの株価急落で欧州でも金融システム不安が高まり、欧米の投資家のリスク回避で安全資産の債券買いが進み、債権価格が上昇する一方で利回りが低下し、米10年債の利回りが指標となる米長期金利が一時3.38%と2月上旬以来の低利回りを記録し、日米金利差縮小時の円買いドル売りでドル円相場は一時132円22銭と、2月中旬以来の円高ドル安を記録した。

ただし、その後、スイスに本拠地を置くクレディ・スイス・グループに対して、スイスの中央銀行にあたるスイス国立銀行 (SNB) とスイス金融市場監督機構(FINMA)が支援をするという噂が出始めたことに続き、公式に「必要であれば、クレディ・スイスに流動性を供給する」という表明があり、欧米の金融不安が緩和され始めた。

また、昨夜23時と今朝5時頃に発表された他の最新米国経済指標の3月の米国NAHB住宅市場指数や1月の米国対米証券投資は前回や市場予想を上回り、ユーロに対する安全資産同士であるドルと円では、今回は米国発の金融不安で円の上昇幅の方が大きかったとはいえ、流動性の高いドルも安全資産として買われたことではドルは安値圏から一時133円台77~78銭付近へと下げ幅を縮めた。

今日のフェッドウォッチ (CME FedWatch Tool) の予測値では、欧米の金融不安への配慮もあり、来週の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) での米国利上げ幅予想は0.25%の通常の小幅な利上げ幅予想が優勢の72.3%の確定値付近で、次回利上げ見送りの据え置きの予想が27.7%付近で、0.5%の大幅利上げ予想は0.0%付近になっているが、昨夜には一時は欧米の金融不安で利上げ見送り予想が大幅に上昇していた時間があった。

そのため、今朝6時頃までの米国夏時間のニューヨーク外国為替市場のドル円相場は円の安値133円77銭前後から高値132円22銭前後の値動きで、133円42銭付近の前日同時刻比で約80銭の円高ドル安で今朝のニューヨーク終値をつけていた。

今朝8時50分には日本の最新経済指標の発表があり、1月の機械受注の前月比が前回の1.6%と前回修正の0.3%と市場予想の1.8%に対し9.5%に大幅上昇したことに加えて、同時発表だった通関ベースの2月の貿易統計の赤字額が、季調前が前回の-3兆4966億円と前回修正の-3兆4986億円と市場予想の-1兆694億円に対し-8977億円で、季調後も前回の-1兆8213億円と前回修正の-1兆8233億円と市場予想の-1兆4753億円に対し-1兆1907億円と前回と市場予想よりも減少していたことも、日本の景気好感による低リスク通貨の円買いを促した。

そのため、今朝9時からの今日の日本の東京外国為替市場では、9時台に円高ドル安が進み、今日の日本市場の円の高値でドルの安値の一時132円50銭付近を記録した。

しかし、9時55分の仲値決済では、日本企業の輸入実需の円売りドル買いが入ったことや、来週の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) を控えた0.25%の利上げ予想が再び確定値近くの優勢であったことから、米長期金利の低下が収まってきたこともあり、日米金利差拡大予想による安値でのドルの買いなどの持ち高調整が入った。

日本でも今朝のニュースでは、早朝のクレディ・スイス・グループへのスイス国立銀行 (SNB) とスイス金融市場監督機構(FINMA)の支援策の表明を受けて、クレディ・スイスもスイス国立銀行から最大500億スイスフラン (約7兆1000億円) の資金借り入れのオプションを行使する意向を発表したことで、欧米金融不安の緩和により、安値のユーロやドルの買いと高値の低リスク通貨の円の利益確定売りが入り、今朝10時台には今日の日本市場の円の安値でドルの高値の一時133円49銭付近を記録した。

ただし、欧米の株価指数先物は一時上昇したものの、昨夜の欧米株価の大幅下落の影響があり、今日の日経平均株価が一時は下げ幅を縮めたものの前日比では低下していたことでは、日本株安時のリスク回避で安全資産の低リスク通貨の円買いも根強かった。

今夜は、欧州中央銀行 (ECB) の新政策金利と声明の発表を控えており、持ち高調整や様子見も入っていたことでは、朝と比較すると昼や午後にはやや横ばいに近い動きが混じる時間もあった。先週までは、欧州中央銀行 (ECB) も0.5%の大幅利上げ予想が優勢であったが、欧州に近いスイスで金融不安があったことに配慮して、0.5%の市場予想は今でも優勢ではあるが、0.25%の小幅利上げ予想が混じり始めており、円相場でのユーロに対する持ち高調整や様子見の動きの影響が、ドル円相場に波及していた。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は133円11~12銭付近と、昨夜17時の前東京終値比では約1円75銭の大幅な円高ドル安になった。

今夜この後には米国の最新経済指標の発表予定もあり、21時半に3月の米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数、2月の米国輸入物価指数と輸出物価指数、2月の米国住宅着工件数と建設許可件数、そして前週分の米国新規失業保険申請件数と失業保険継続受給者数の発表予定がある。

そして、22時15分に欧州中央銀行 (ECB) 新政策金利と声明と、続いて22時45分からラガルド総裁の定例記者会見が予定されている。

欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は141円43~44銭付近と、昨夜17時の前東京終値比では約3円38銭の大幅な円高ユーロ安であった。

原因は、先述の欧州金融不安のリスク回避により、一時は前日比で5円くらいの大幅な円高が進行した後のため、これでも今朝発表されたスイス国立銀行のクレディ・スイスへの救済案を受けて、今夜の欧州中央銀行 (ECB0 の新政策金利発表前にユーロが買い戻された後の価格である。

ユーロドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0623~1.0625ドル付近と、昨夜17時の前東京終値比では約1.14セントの大幅なユーロ安ドル高であった。

円と同じく、ドルもリスク回避時の安全資産としてユーロに対して買われた影響があったが、米国発の金融不安であったために、低リスク通貨の円の上げ幅の方が大きかった。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は161円7~11銭付近と、昨夜17時の前東京終値比では約22銭の円安ポンド高であった。

昨夜は主要通貨に対する円高が進んだ分、今日の午後の英国の朝に英国の株価が一部上昇していた時間には英ポンドが買い戻された時の影響が今日の日本市場の夕方の終値に反映されていた。

しかし、今夜その後の英国ロンドン外国市場では、今日の英国株価がまだ不安定なこともあり再び低リスク通貨の円が買われて、20時台には再び前日比で大幅な円高ポンド安に市場反転もしている。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年3月16日の日本時間(JST)20時22分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替時間 (GMT) 11時22分)付近の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:22の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 132.71 〜 132.72 -2.15 (円高)
ユーロ/円 140.84 〜 140.86 -3.97 (円高)
ユーロ/ドル 1.0611 〜 1.0614 -0.0126 (ドル高)
英ポンド/円 159.82 〜 159.88 -1.03 (円高)
スイスフラン/円 142.84 〜 142.90 -0.07 (円高)
豪ドル/円 88.14 〜 88.18 -0.15 (円高)


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