FXニュース:米FRBパウエル議長がタカ派発言

2023年3月08日
FXニュース:米FRBパウエル議長がタカ派発言

 

東西FXニュース – 2023年03月08日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米大幅利上げ予想の0.5%が優勢に
  • 米長期金利上昇で日米金利差拡大
  • 今年最大の円安ドル高記録を更新
  • 主要通貨に対してもドル全面高に

今日2023年3月8日水曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値137円91銭前後から高値137円25銭前後の値幅約66銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は137円48~49銭付近で、前日17時の前東京終値比で約1円74銭の大幅な円安ドル高であった。

今日の為替相場のドル円の値動き要因はやはり、前回の東西FXニュースのタイトルとしても証言を予告していた米国連邦準備制度理事会 (FRB) のジェローム・パウエル議長の米国上院議会証言でのタカ派発言の影響が最も大きい。

市場トレンドの動きでは、日本時間で昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では、深夜24時からパウエル議長の半期に一度の米国上院銀行委員会での議会証言があり、最近発表された米国重要経済指標の1月の米国消費者物価指数 (CPI) と米国雇用統計が市場予想以上に上昇したことに言及し、根強い米国インフレと堅調な雇用市場を背景に、今後の経済指標のデータ次第では、米国政策金利の「利上げペースを加速させる用意がある」と、インフレ抑制のための利上げに積極的なタカ派の発言をしたことを受けて、今月21~22日に予定されている次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) での0.50%の大幅利上げ幅予想が、確定値と考えられている70%をフェッドウォッチ・ツール (CME FedWatch Tool) で一気に超え、発言以前には70%超で優勢だった0.25%の通常利上げ幅予想と形成が逆転し、より大幅な日米金利差拡大予想が優勢になったことで、円売りドル買いが強まった。

パウエル議長はまた、「最終的な米国政策金利水準のターミナルレート (TR) が、従来の想定よりも高くなる可能性がある」とも発言し、米国の大幅利上げ予想に加えて、追加利上げで利上げが長期化する市場予想も高まったことから、米国長期金利も再び一時4%台に上昇し、日米金利差拡大による円売りドル買いが勢いを増した。

パウエル議長の発言以前は136円台前半で推移していたドル円は、これらのタカ派の発言後に137円台へとドルが高騰し、円相場でのドルの今年の高値を更新した昨年12月以来の一時137円19~20銭付近の円安ドル高を記録したほか、日本円だけでなく欧州ユーロや英国ポンドなどの他の主要通貨に対してもドルが買われて高騰し、ドル全面高も記録した。

パウエル議長は、今夜この後にも上院に続いた下院での議会証言での再発言予定があるが、「今後の経済指標のデータ次第」ということもあり、今週発表予定の米国重要経済指標への市場での注目度も高まっている。特に今週は新たな米国雇用統計の発表予定があり、前回が市場予想以上に堅調であったことをパウエル議長が言及した通り、米国連邦準備制度理事会 (FRB) が今後の方針を決める際に重視しているデータであることが伺える。

そのため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値136円6銭前後から安値137円19銭前後の値動きで、今朝7時頃のニューヨーク終値を137円16銭付近の前日同時刻比で約1円23銭の大幅な円安ドル高でつけていた。

その後の今朝早朝8時台のアジア・オセアニア市場時間にも、パウエル議長のタカ派発言を受けた円売りドル買いが続いていたが、今朝8時50分には日本の財務省が最新経済指標を発表し、速報値の1月の日本の国際収支統計の経常収支は、円安や資源高や中国貿易問題などの影響もあり、1兆9766億円の約3ヶ月ぶりの赤字額で、比較用の過去の記録が残っている1985年以降のデータでは、過去最大である。同時発表の1月の日本の貿易収支の赤字額が過去最大の3兆1818億円であったことも、経常収支の赤字に影響を及ぼしており、パウエル発言後のドル買いに加えて、低リスク通貨の円の貿易赤字リスクによる円売りもあったことから、今朝9時から始まった今日の日本の東京外国為替市場では、137円台の今年最大の円安ドル高の記録を更新し、9時過ぎに一時137円49銭付近を記録した。

ただし、今朝9時55分頃の日本市場の仲値決済では、今日のドルが大幅な高値圏であることや貿易赤字の一因が円安であるために、日本の輸出大企業による高値のドル売りと安値の円買いが、円安への一時抵抗を交え、一時137円25銭付近の今日の日本市場での円の高値でドルの安値を記録した。

しかし、パウエル議長のタカ派発言以降の日米金利差拡大予想の大きな流れの円売りドル買いトレンドの中では、円相場では一時抵抗を交えながらも、再びドル上昇のトレンドが継続し、昼の13時台には、今年最大の円安ドル高の記録をさらに更新し、今日の日本市場の円の安値でドルの高値の一時137円91銭付近を記録し、前日比で2円を超える円安になった。

今日のニュース執筆時点でも、フェッドウォッチの予測値は、次回の米国政策金利の利上げ幅の予想値は、0.25%予想が29.5%で、0.50%予想が70.5%の確定値付近になっており、今日の日本市場の時間外の米国債権市場でも、パウエル議長発言後の米国長期金利は4%台を超えて上昇しており、よりトレンドに敏感な米2年債権の利回りは5%台に達したことなども、日米金利差拡大による円売りドル買いに影響を及ぼしていた。

ただし、今年最大の高値記録を更新後のドルが200日移動平均線を超え、やや短期間にドルが急速に買われ過ぎたリスクもあったため、午後からの欧州英国市場の参入もあり、高値のドルの利益確定売りと安値の円の持ち高調整買いの抵抗も入った。

また、午後14時に速報で発表された日本の最新経済指標の1月の景気一致指数 (CI) は前回の99.1と市場予想の96.4に対し96.1で、景気先行指数 (CI) は前回の97.2と前回修正と市場予想の96.9に対し96.5の市場予想以下ではあったものの、同時発表の2月の景気ウオッチャー調査の現状判断DIは前回の48.5と市場予想の49.0に対し52.0で、2月の景気ウオッチャー調査の先行き判断DIも前回の49.3と市場予想の49.7に対し50.8の市場予想以上であったことでは、日本の景気好感から安値の円買いの抵抗が増えた。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は137円48~49銭付近で、昨夜17時の前東京終値比で約1円74銭の大幅な円安ドル高になったが、一時の今年最大の前日比2円超えの円安ドル高からは、やや円相場は下げ幅は縮めていた。

今夜この後にも、最新の米国経済指標やパウエル議長の再発言予定などがあり、FXトレーダー達が今後の市場予想のためのデータとして注目している。今夜の日本時間でのスケジュールは、21時に米国MBA住宅ローン申請指数、22時からは米国連邦準備制度理事会 (FRB) の高官ではあるが次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権はない米国リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言、22時15分に2月の米国ADP雇用報告、22時半に米国と北米カナダの1月貿易収支、深夜24時には以前にお隣の米国の市場予想に影響を及ぼしたことがある北米カナダのカナダ銀行 (BoC) の新政策金利と声明発表、そして同じく24時からは米国連邦準備制度理事会 (FRB) のパウエル議長の米国下院金融委員会での議会証言での再発言予定と、同時刻には米国労働統計局のJOLTS求人労働異動調査発表予定もあり、24時半には米国週間原油在庫、27時に米国長期金利の指標となる米10年債の入札予定、28時に米国地区連銀経済報告のベージュブックの発表予定などがある。

また、今週金曜には日本銀行 (日銀 / BoJ) の日銀金融政策委員会の予定があり、米国連邦準備制度理事会 (FRB) の「今後のデータ」の要点としても注目されている米国雇用統計の発表予定があり、今週はイベント週でもあることには注意が必要である。

一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は144円95~97銭付近で、昨夜17時の前東京終値比では約9銭の小幅な円高ユーロ安であった。ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0542~1.0544ドル付近で、昨夜17時の前東京終値比で約1.43セントの大幅なユーロ安ドル高だった。

原因は、前述の米国連邦準備制度理事会 (FRB) のパウエル議長のタカ派発言を受けて、米国政策金利の最終的な到達点であるターミナルレート (TR) の予測値が市場予想以上に上昇する可能性から、後から利上げを始めた欧州中央銀行 (ECB) のTRとの欧米金利差が意識され、米長期金利上昇時のドル買いでは、円相場だけでなく欧州ユーロも大幅安になり、今日は今年1月上旬以来のユーロ安ドル高を記録した。

今日の午後16時には欧州ユーロ圏の主要国のドイツの最新経済指標の発表もあり、1月の独小売売上高は、前月比が前回の-5.3%と前回修正の-4.9%と市場予想の2.0%に対し-0.3%で、前年同月比は前回の-3.9%と前回修正の-3.3%と市場予想の-3.7%に対し-1.6%であった。ただし、同時発表の1月の独鉱工業生産の前月比は前回の-3.1%と前回修正の-2.4%と市場予想の1.4%に対し3.5%だったことでは、ユーロ買い戻しの抵抗もあった。

しかし、今夜19時には欧州ユーロ圏総合の前年10~12月四半期域内総生産 (GDP) 確定値が発表され、前期比で前回の0.1%に対し市場予想通りの0.0%で、前年同期比は前回と市場予想の1.9%に対し1.8%に低下したことでは、対ドルでのユーロ売りのユーロ安の影響が残る一因となった。

今夜19時からは欧州中央銀行 (ECB) のラガルド議長の発言もあったが、米国の後から利上げを始めた欧州の次回の0.5%の利上げ幅は、既に市場では織り込み済みの印象が強い。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は162円53~59銭付近で、昨夜17時の前東京終値比では約27銭の円安ポンド高であった。

原因は、パウエル議長のタカ派発言を受けた米国の利上げ長期化予想と比較した場合、英国は利上げ終了時期が近いという市場予想があり、ドルに対してはポンドが売られて下げていたが、金利抑制の日銀と比較すると英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) は利上げ方向だったために、ドルに対してはポンド安だが、円に対しては円安ポンド高になった。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年3月8日の日本時間(JST)20時29分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替時間 (GMT) 11時29分)付近の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:29の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 137.34 〜 137.35 +1.60 (円安)
ユーロ/円 144.69 〜 144.71 -0.35 (円高)
ユーロ/ドル 1.0535 〜 1.0536 -0.0150 (ドル高)
英ポンド/円 162.62 〜 162.68 +0.36 (円安)
スイスフラン/円 145.61 〜 145.67 +0.01 (円安)
豪ドル/円 90.67 〜 90.71 +0.27 (円安)


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