FXニュース:151円台の1990年夏以来の円安ドル高記録続伸の原因とは

2022年10月21日
FXニュース:151円台の1990年夏以来の円安ドル高記録続伸の原因とは

 

東西FXニュース – 2022年10月21日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米長期金利が一時4.28%付近に上昇し2008年以来の日米金利差拡大
  • 今日は円安ユーロ高も進行し2014年末以来の一時147円台を記録
  • 英トラス首相辞任表明で英財政懸念一時緩和の英ポンド一時上昇後は

今日2022年10月21日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が150円49銭前後から高値150円14銭前後の値動き幅約35銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は150円47〜48銭前後で、前日同時刻の前東京終値比で約61銭の円安ドル高であった。

今夜その後の欧州英国市場でも、1990年8月以来の約32年ぶりの円安ドル高の記録を再び更新中で、19時半過ぎには、東西FXでも扱うスプレッドの狭い海外FXでは、ドル円が151円台の151円24〜25銭台付近の値動きをしている。米長期金利の指標となる米10年債利回りも、今夕に4.28%付近に上昇していた。

原因はまず、昨日の東西F Xニュースでもお知らせしていた通り、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場で最新米国経済指標が発表され、米新規失業保険申請件数が前週比で減少し、市場予想以上に改善していた。堅調な米労働市場の需給逼迫から、米国のインフレが高止まりをするという市場予想に加えて、米国連邦準備制度理事会(FRB)が今後も高インフレ対策での大幅利上げ継続をしやすくなるという市場予想が強まった。

また、米連邦準備理事会(FRB)関係者の米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が、「利上げは当面継続される」と発言し、現在3〜3.25%の米フェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標は、年内に4%を大きく超える水準に利上げされるという見解を示した。

米連邦準備理事会(FRB)のクック理事も、「米インフレは依然として容認できないほどに高過ぎであり、抑制しなくてはならない。これは利上げを継続し、その後も金融政策を当面の間は維持することが必要になる可能性が高い」と発言し、米連邦準備理事会(FRB)が今後も積極的なインフレ対策での大幅利上げを継続するという市場予想を後押しした。

米国の大幅利上げ継続予想などから米長期金利が上昇を続け、一時4.24%台の2008年6月以来の高利回りを記録したことで、かねてからの円安要因であった日米金利差拡大によるドル買い円売りの勢いが加速し、今朝までのニューヨーク市場で一時150円29銭付近の1990年8月以来の約32年ぶりの円安ドル高の記録を更新した。

同時進行の米国ニューヨーク株式市場でも、現地朝には決済報告期の米株価三指数が共に一時上昇して始まった時にはリスクオン(リスク選好)のムードだったが、その後の米長期金利上昇を受けて、企業への貸付ローン金利上昇などへの今後の決算への警戒感から株価が反落し、リスクオフ(リスク回避)の安全資産のドル買いが優勢になっていたこともドル高に影響を与えていた。

そのため、今朝6時の米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の終値は150円10~20銭前後で、前日同時刻比では約25銭の円安ドル高であった。米国市場では、今朝までに11営業日連続での円安ドル高が進行していた。

そのトレンドを受けて始まった今日の世界市場と日本の東京外国為替市場でも、日米金利差拡大予想による円売りドル買いが優勢であった。

今朝は日本の最新経済指標が発表され、総務省の9月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合指数が市場予想通りに前年同月比で3.0%上昇した102.9であった。

日本ではインフレ率の上昇があっても日本銀行(日銀、BoJ)が金利抑制の大規模緩和金融政策を継続の予定であるために、市場予想通りで反応は限定的ではあったが、輸入物価上昇には資源高と円安の関連があり、また急速な円安の変動(ボラティリティー)には日本政府と日銀の為替介入の警戒感もあったために、今朝の円売りドル買いの勢いは日本市場時間になりやや弱まったが、ドルの上昇のトレンドは継続した。

今日の日本市場での為替介入警戒の一因は、今朝の閣議後記者会見で鈴木俊一財務相が、約32年ぶりの円安ドル高が進行している市場(マーケット)について、「投機による、過度な変動(ボラティリティー)は容認できない」の発言を繰り返し、過度な変動には適切に対応するとの考えを繰り返した。

以前の日本政府などの発言内容から、為替介入の引き金(トリガー)は150円台などの「特定の価格ではなく、1日で1円や2円も急速に市場価格が変動するボラティリティー」の方が、為替介入のトリガーであるという市場予想が現在は優勢になってきており、日本市場時間にはゲーム攻略法の様に、急な値動きのボラティリティーによる為替介入のトリガーに注意した慎重な取引がされていた。また、介入後の一時安時のドル買い待ちも混ざった。

そのため、今朝の10時頃の仲値決済でも、ドル上昇のトレンドの中でも今日は輸入実需の円売りドル買いと輸出企業のドル売り円買いがバランス良く相殺し合っていた。

ただし、今朝10時10分に日本銀行(日銀)が再び公開市場操作の国債無制限買い入れの指値オペを通知したことでは、金利抑制姿勢から再び日米金利差拡大予想が強まった。

その一方で、日本市場では日本政府と日銀による外貨預金のドル売り円買いの為替介入に対する警戒感は継続していたが、午後になると時差で現地朝の欧州英国市場が参入し、米金利上昇による金利差拡大予想のドル買いや、英国のトラス首相辞任表明後の財政懸念の一時緩和で英ポンドやユーロが一時上昇した後の利益確定売りで安全資産のドルを買ったことなどで、再び円安ドル高の勢いが増し始めた。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は150円47〜48銭付近で、前日同時刻の前東京終値と比較して約61銭の円安ドル高になった。

今夜その後の欧州英国市場でも、為替介入直後の一時ドル安を求めたバーゲンハンターの様な煽りさえも感じるドル上昇のボラティリティーの増加で、英国ロンドン外国為替市場では日本時間の今夜19時半頃には、英国ロンドン外国為替市場で151円台の円安ドル高になり、上昇中である。

今夜この後の米国ニューヨーク市場では、今日は経済指標の発表予定はないものの、今夜22時10分に米連邦準備理事会(FRB)高官の米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言予定があり、海外FXトレーダー達が注目している。

また、米株式指標でも決済期の週末で、アメリカン・エキスプレスなどの米主要企業の決算発表予定が続き、リスクオンやリスクオフになれば再び為替相場に影響を与える可能性もあるので注意が必要である。

一方、今日のユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の円相場の終値は147円26~30銭付近で、前日同時刻比では約60銭の円安ユーロ高だった。欧州ユーロに対する日欧金利差拡大などでの円安も進行し、今日は一時147円46銭付近の2014年12月以来と言われる円安ユーロ高も記録していた。

ユーロドルは、昨夜深夜過ぎまでの欧州英国市場で、リズ・トラス英首相が英国のトリプル安の金融市場混乱の原因となった公約の大規模減税案を実行できないことの責任を取り辞任を表明したことで、英財政懸念の一時緩和から元欧州連合(EU)の英国経済の影響の懸念が欧州で緩和された時にポンドやユーロが買われていた影響や、欧州株高時のリスクオンのユーロ買いの影響などが残り、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は0.9787~0.9788ドル付近の前日同時刻比で約0.01セントの僅差のユーロ高ドル安であった。

しかし、今夜その後の欧州英国市場では、堅調な米国雇用市場と米長期金利上昇の米欧金利差拡大予想などで、米国と比較すると欧州や英国の景気懸念の方が強く、前日までに高値になっていたポンドやユーロが利益確定で売られて、世界的に流動性の高い安全資産のドルが買われたことなどから、19時台には再びユーロや英ポンドに対するドル高に転じていた。

英国ポンドの円相場は、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は168円21〜27銭付近で、前日同時刻比では約43銭の円高ポンド安であった。

昨夜の英国ロンドン市場では、前述の通りのリズ・トラス英首相の辞任表明を受けて、英国財政懸念の一時後退から英ポンドが一時上昇したが、その後には英景気懸念や時期首相を巡っての政治不安などで高値圏になったポンドが利益確定などで再び売られて、安全資産のドルや低リスク通貨の円が買われたことなどが影響した。

英国の次期首相となる英保守党(トーリー)の新党首が決まるまでは、トラス首相は公務を継続する予定であるが、ジョンソン前首相やスナク元財務相などの候補名は挙がるもののまだ決定しておらず、当面は英国政治の混乱が継続する可能性も指摘されている。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年10月21日の日本時間(JST)19時30分(英国夏時間(GMT+1)11時30分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:30の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 151.10 〜 151.12 +1.24(円安)
ユーロ/円 147.25 〜 147.27 +0.59(円安)
ユーロ/ドル 0.9744 〜 0.9746 -0.0042(ドル高)
英ポンド/円 167.83 〜 167.89 -0.81(円高)
スイスフラン/円 149.34 〜 149.40 -0.35(円高)
豪ドル/円 94.38 〜 94.42 +0.05(円安)


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