FXニュース:一時150円台の1990年8月以来の円安ドル高記録を更新

2022年10月20日
FXニュース:一時150円台の1990年8月以来の円安ドル高記録を更新

 

東西FXニュース – 2022年10月20日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米長期金利が一時4.18%台に上昇し日米金利差拡大の円安が進行
  • 最新の日本の貿易赤字が資源高と円安等で過去最大の11兆円規模に
  • 英消費者物価指数(CPI)が約40年ぶりの上昇率で欧英景気懸念も

今日2022年10月20日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が150円9銭前後から高値149円63銭前後の値動き幅約46銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は149円85〜87銭前後で、前日同時刻の前東京終値比で約52銭の円安ドル高であった。

今日の日本市場では、午後16時台に一時150円9銭付近の1990年8月以来のおよそ32年ぶりの円安ドル高の記録を再び更新した。

原因はまず、昨日の午後から始まった英国ロンドン市場で発表された最新の英国経済指標99月の英消費者物価指数(CPI)が、前年比で10.1%上昇の約40年ぶりの記録的な高インフレであったことから、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク市場では、同じ英語圏で金融市場の経済的な結びつきがある米国や、地理的にも近い欧州でも今後のインフレ対策の必要性が更に高まるという観測等から、米国連邦準備制度理事会(FRB)や英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)と欧州中央銀行(ECB)などによる金融引き締めの大幅利上げが継続と長期化する予想が強まった。

その一方で、主要通貨では日本円の日本銀行(日銀、BoJ)だけが、金利抑制方向の大規模緩和を継続する予測である違いが改めて意識され、日米英欧金利差拡大予想が高まり、ドルを始めとしたユーロやポンドなどの主要通貨に対する円売りの円安が強まった。

米長期金利が更に上昇し、4.1%台の約14年ぶりと言われる高利回りを記録する傍らで、日米金利差拡大による円安ドル高が進行し、今朝までのニューヨーク市場でも、一時149円91銭付近の1990年8月以来の約32年ぶりの円安ドル高の記録を更新した。

ただし、150円台の大台に乗りそうになると、米国市場でも日本政府と日銀の為替介入への警戒から、150円手前の自動売り含む利益確定売りや持ち高調整の一時抵抗が入った。

そのため、今朝6時までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の終値は149円85~95銭前後で、前日同時刻比では約65銭の円安ドル高であった。

また、今朝早朝までには米連邦準備理事会(FRB)高官の米セントルイス連銀のブラード総裁が、来月11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での通常の3倍の0.75%の大幅利上げ継続に関して、「市場ではもう既に大方で織り込み済であろう」と発言したことで、市場では、「肯定」とあると受け止められた。

同じく、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も、「インフレ対策をしないと、我々は受け入れ難い代償を支払うことになるだろう」と発言し、米国のインフレ抑制のための大幅利上げ継続に積極的な姿勢であることを示し、日米金利差拡大予想が更に強まった。

その市場トレンドの流れを受けて始まった今日の日本の東京外国為替市場でも、世界トレンドと同じく日米欧英金利差拡大予想の円売りが優勢で、外貨の中でも特に大幅利上げ継続と長期化の抵抗要因となる景気懸念が欧英と比較すると少なめで上昇トレンドの基軸通貨のドルが好んで買われた。

今朝は日本の最新経済指標の発表もあり、財務省が8時50分に発表した2022年度4〜9月の上期の貿易統計速報では、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が11兆74億円の赤字であった。原因には、原油・石炭・液化天然ガス(LNG)等の鉱物性燃料などの資源高で輸入コストが倍増しており、加えて円安などの影響も考えられる。今回の貿易収支の赤字額は、比較が可能な過去データでは1979年度半期以来の赤字額で、2013年度下期の8兆7600億円の赤字記録を更新した。

世界的に流動性が高いドルに続く安全資産の、低リスク通貨としての日本円の強みには、31年連続で世界最大の対外純資産国である外貨資金力によるものが大きく、貿易赤字や大規模な円買い介入などで日本の対外純資産額が減ることは、低リスク通貨としての円の価値を低めることにも繋がる。円買いの為替介入の警戒感の高まる中、為替介入のトリガー(引き金)となると考えられている「1日で1円や2円も急速に変動するボラティリティー」に注意が払われる一方で、日米金利差拡大予想の円安は、米国市場と比較すると急速ではない穏やかな上昇率を交えての日本市場の取引が開始された。

貿易収支の赤字の一方で、日本の昨年末時点での対外純資産額は、円安の影響もあって円換算で増えており、411兆円を超えた過去最大で、31年連続で世界1位の対外純資産国となった。今年になってからも円安の影響で円換算の対外純資産額は更に増えている可能性が高く、前回規模の為替介入は日本政府と日銀にはまだ何回も実行可能な外貨資金力があるために、日本政府と日銀のドル売り円買いの為替介入への警戒感は日本市場では持続していた。

ただし、今朝10時頃の仲値決済に向けては、今日は日本の貿易企業の決済日の集中しやすい5と10のつく五十日であることから、日本企業の輸入実需での円売りドル買いがあり、10時過ぎには一時149円96銭付近になり、今朝までの米国ニューヨーク市場でつけた円の安値の149円91銭付近の円安ドル高の記録を更新した。

午後になると時差で朝の欧州英国市場が参入し、米長期金利の指標となる米10年債の利回りが更に上昇し、一時4.18%付近に達したことなどから、日米金利差拡大予想によるドル買い円売りの勢いが再び強まり、今日の日本市場の午後16時台には、一時150円9銭付近の1990年8月以来の約32年ぶりの円安ドル高の記録を再び更新した。

しかし、ドル円が150円の大台に乗った直後には、為替介入警戒の高値のドルの利益確定売りや安値の円の持ち高調整などで、一時149円68銭付近に急落し、今日の円の日本市場での市場高値を記録した。日本政府と日銀の為替介入懸念も高まったが、為替介入にしては戻りが早く、前回よりも下げ幅が少なかったために、150円付近になった際に高値のドルの利益確定のテイクプロフィット(T/P)や安値の円の損切りのストップロス(S/L)と持ち高調整の安値買いの指値注文などの自動売り注文などが瞬時にまとまって入った可能性も高いと市場では考えられた。

欧州市場でも日本の為替介入への警戒が高まったことから、その後は再び149円台後半で取引され、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は149円85〜87銭付近で、前日同時刻の前東京終値比では約52銭の円安ドル高であった。

今夜この後にも最新の米国経済指標などの発表予定があり、今後の為替相場の値動き予想材料として世界市場が注目している。今夜21時半には、10月の米フィラデルフィア連銀製造業景気指数、前週分の米新規失業保険申請件数と米失業保険継続受給者数、9月の米中古住宅販売件数と9月の米景気先行指標総合指数が予定されている。また、深夜1時以降から明朝未明にも、米連邦準備理事会(FRB)高官の米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁の発言予定や、米連邦準備理事会(FRB)のクック理事とジェファーソン理事とボウマン理事の発言が予定されている。

今日のユーロは、今夜17時の今日の日本の東京外国為替市場の円相場の終値は146円66~69銭付近で、前日同時刻比では約27銭の円高ユーロ安だった。

主な原因は、英国インフレを受けて、欧州でもインフレによる欧州中央銀行(ECB)の積極的な金融引き締め継続予想の一方で欧州景気懸念が高まり、今日はリスク回避のユーロ売りで安全資産のドルが買われて、低リスク通貨の円も買われたことなどが影響した。

そのため、ユーロドルも、17時の今日の東京外国為替市場の終値は0.9787~0.9788ドル付近で、前日同時刻比で約0.51セントのユーロ安ドル高であった。また、今日は米長期金利上昇時の、欧米金利差拡大のユーロ売りとドル買いも優勢だった。

今日の英国と欧州では、高インフレと金融引き締めの継続と長期化予想により、景気後退(リセッション)懸念が高まっていた。

そのため、英国ポンドの円相場も、今夜17時の今日の日本の東京外国為替市場の終値は168円8〜14銭付近で、前日同時刻比で約5銭の円高ポンド安であった。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年10月20日の日本時間(JST)19時19分(英国夏時間(GMT+1)11時19分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:19の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 149.84 〜 149.86 +0.51(円安)
ユーロ/円 146.60 〜 146.62 -0.33(円高)
ユーロ/ドル 0.9782 〜 0.9784 -0.0056(ドル高)
英ポンド/円 167.80 〜 167.86 -0.33(円高)
スイスフラン/円 149.00 〜 149.06 -0.19(円高)
豪ドル/円 94.22 〜 94.26 +0.24(円安)


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