FXニュース:米政治圧FRB独立性懸念
2025年8月21日
東西FXニュース – 2025年08月21日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米トランプFRB辞任要求
- 米FOMCインフレリスク
- 米S&P・ナズダック続落
- 日経平均株価続落大引け
- 欧州製造業PMI予想以上
- 今夜米ジャクソンホール
今日2025年8月21日木曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の高値でドルの安値の147円25銭付近から、円の安値でドルの高値の147円64銭付近の値幅約39銭で、本日17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は147円59銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の147円63銭付近の前東京終値比で約4銭の円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) マーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の昨夕の欧州市場と英国ロンドン外国為替市場では、昨日の日経平均株価下落に続いて欧州主要株価指数の独DAX (Deutscher Aktien-index) も下落し、株価影響のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) による世界的な安全資産の米国債買いで米国債券価格上昇に伴う利回り低下が起き、時間外の米国債券取引では米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が、昨夜17時8分頃の一時4.328%付近から昨夜19時31分頃には一時4.297%付近に低下し、その一方で日本の新発10年物日本国債利回りは昨夜18時50分頃に一時1.614%付近に上昇していたため、債券利回りの日米金利差縮小時の円買いドル売りの影響で、昨夜19時33分頃に対ドルの円相場は一時147円37銭付近に上昇していた。
ただし、米国債券価格の上昇を受けた米国債売りの抵抗も入り、昨夜20時台になると米国長期金利が4.3%台に反発しており、昨夜20時44分頃には一時4.310%付近に下げ幅を縮小し、米国市場を控えた英国ロンドン外国為替市場では世界的に流動性が高い主要取引通貨でもあるドルの買い戻しも入ったことでは、昨夜20時58分頃にドルも円相場で一時147円55銭付近に反発したため、昨夜21時頃からの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時147円54銭付近の始値となり、この時間が昨夜の米国市場の円の安値でドルの高値となっていた。
しかし、米国市場が始まると、かねてから米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) への米国利下げ要求の政治圧の発言を続けていたドナルド・トランプ米国大統領が、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) 高官のリサ・クック理事に対し、住宅ローン契約に関する主要居住地申請重複の不正疑惑の可能性を理由に挙げ、米国ブルームバーグ (Bloomberg) の「ドナルド・トランプ大統領の側近がリサ・クック理事の住宅ローンの調査をパメラ・ボンディ司法長官に求めている」という記事と共に、自己運営のソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS / Social Networking Service) のトゥルース・ソーシャル (Truth Social) に、「クック、今すぐ辞任すべし!」と投稿発言したニュースが米国現地時間の朝にあたる昨夜21時台から話題になった。
米国連邦住宅金融局 (FHFA / Federal Housing Finance Agency) のウィリアム・パルト局長が、「リサ・クック理事が、米国ミシガン州の自宅を主な住居としてローンで購入した後に、米国ジョージア州のマンションも主な住居として申告した」と主張し、米国CNBCニュースは、「ウィリアム・パルト局長は、リサ・クック理事所有の米国マサチューセッツ州の不動産についても調査中だと語った」としており、「ドナルド・トランプ大統領は、リサ・クック理事が辞任しない場合は懲戒免職する方向で協議している」との一部観測報道があり、米国経済紙のウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ / Wall Street Journal) は、米国ホワイトハウスの高官と関係者筋の情報として、「ドナルド・トランプ米国大統領が側近に、FRBのリサ・クック理事の解任を検討していると伝えた」と報じており、英国ロイター通信 (Reuters) は「確認できていない」としたものの、米国ホワイトハウスは報道について特に否定せずにコメントを差し控えていた。
これに対し、FRBのリサ・クック理事は、「脅されて辞任するつもりはない。FRBメンバーとして、私の財務履歴についてのいかなる疑問も真剣に受け止める意向であり、あらゆる正当な質問に答え、事実を提示するための正確な情報を収集している」と反論の声明を出し、米国下院金融サービス委員会の民主党議員達もSNSのX (旧ツイッター) への投稿などで、「ドナルド・トランプ氏は、FRB初の黒人女性理事を解任するために、あからさまな嘘をでっち上げて自分の言いなりになる不適格な人物と入れ替えようとしている。これはFRBの独立性への新たな攻撃であり、容認できない」と発言したことが市場で話題になり、第二次ドナルド・トランプ米国政権の政治圧によるFRBの独立性が脅かされることへの信任懸念のドル売りが起きた。
FRBのリサ・クック理事は、ジョー・バイデン前大統領が指名した3人のFRB現役理事の1人で任期もドナルド・トランプ大統領の任期よりも長く、残り6人のFRB理事の中で前回も米国早期利下げを支持した金利維持への反対票を投じていたハト派のクリストファー・ウォラー理事とミシェル・ボウマン副議長はドナルド・トランプ大統領による指名であるが、米国関税インフレ懸念のタカ派発言後にドナルド・トランプ大統領からの発言を受けて今月8月8日の米国相互関税発動時期に早期辞任したFRBのアドリアナ・クグラー理事の後任に、ハト派のスティーブン・ミラン米国大統領経済諮問委員会 (CEA / Council of Economic Advisers) 委員長を指名するなど、FRBに対する第二次ドナルド・トランプ米国政権の政治圧への懸念が市場で再燃した。
米国では、今夜この後の8月21日から8月23日にかけて米国カンザスシティー連邦準備銀行が主催する米国ワイオミング州のジャクソンホールで毎年開催されている世界的に有名な経済政策シンポジウムのジャクソンホール会議のイベントが前日にも意識された市場警戒感があり、日本時間の8月22日の夜23時頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) 高官らの中でも市場への影響力が大きいジェローム・パウエル議長の講演による要人発言予定を控えていることから、イベントリスクによる持ち高調整が進む中で警戒感や様子見もあり動きにくい市場となっていたが、米国ニューヨーク株式市場で米国主要株価三指数が揃ってマイナス圏になり、株価下落時のリスク回避のリスクオフによる低リスク通貨の円買いが入っていた昨夜23時台にもドル信任懸念のドル売りが続いていたため、深夜23時54分頃にドルは円相場で一時146円87銭付近と、一時146円台の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
一方、深夜24時には同時進行中の世界最大規模の英国ロンドン市場で金価格値決めなどのロンドン・フィキシング (London Fixing) があったことでは、主要取引通貨のドルの買い戻しも入り、一時146円台の市場安値後のドルは円相場で反発して下げ幅を縮小した。
また、午前2時頃に時差先行の英国市場が終了した後に、米国ニューヨーク債券市場で米国主要株価下落時のリスク回避のリスクオフで安全資産の米国債が買われた影響により、米国債券価格上昇に伴う利回り低下で米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が午前2時22分頃には一時4.278%付近まで低下し金利警戒感の緩和を受けて、米国ニューヨーク株式市場の米国主要株価三指数の中でも金利に敏感な米国ダウ工業株 (DJIA / Dow Jones Industrial Average) が反発上昇してプラス圏に転じたことから、安全資産の米国債の価格上昇後の売りが入り始めて米国長期金利が下げ幅を縮小し、高値引けの終値に向けたことも市場安値後のドルの買い戻しに影響を与えたが、国際的なハイテク企業が多い米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ / National Association of Securities Dealers Automated Quotations Composite) と米国S&P500種株価指数 (S&P500 / Standard and Poor’s 500 index) はマイナス圏の推移のままで安値引けの終値に向けたことではドルの買い戻しは今夜から始まるジャクソンホールを前にしたイベントリスクの影響もあってやや限定的となっていた。
ただし、午前3時には米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) が、前回7月29〜30日開催分の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) 議事要旨を公表し、米国関税政策によるインフレリスクの方が米国雇用統計の大幅な下方修正前の時期ではあったが雇用下振れリスクよりも重視された会合で、大多数のFOMCメンバーが前回の米国政策金利の据え置きを「適切」と判断しており、早期の米国利下げ支持の反対票を投じていたのはドナルド・トランプ大統領の次期FRB議長候補として反対票を投じていたハト派のクリストファー・ウォラー理事と金融監督担当に任命されてからハト派転向が話題になったミシェ・ボウマン副議長の2名のみであったことが話題になり、今朝5時10分頃にはドルは円相場で一時147円49銭付近にまで下げ幅を縮小したが、市場終盤には再びドルのイベントリスクの持ち高調整や買い控えが入った。
このため、昨夜21時頃から今朝6時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の147円54銭付近から、円の高値でドルの安値の146円87銭付近の値幅約67銭で、今朝6時頃のニューヨーク終値は147円33銭付近と、前営業同時刻の147円67銭付近の前ニューヨーク終値比で約34銭の円高ドル安をつけていた。
今朝早朝のアジア・オセアニア市場でも、米国ドナルド・トランプ大統領の政治圧による米国中央銀行制度の米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の独立性懸念のニュースなどを受けたドル売りがあり、今朝7時11分頃にドルは円相場で一時147円26銭付近に下げており、今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時147円31銭付近の始値であったが、今朝9時0分の1分間の値動きの中でも瞬時に一時147円26銭付近への再低下を見せていた。
今朝9時55分の日本市場の仲値決済に向けては、日本企業の輸入実需の円売りドル買いが入り始めたこともあってドルは円相場で一時反発し、今朝10時33分頃には一時147円51銭付近になったが、今朝の東京株式市場では今日の日経平均株価が一時上昇した後に反落して下落幅を拡大していたことから、株価影響のリスク回避のリスクオフで国内第一安全資産の低リスク通貨の円が買い戻されたため、今朝11時15〜16分頃に対ドル円相場で一時147円25銭付近と、今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
今日の日経平均株価は一時下げ幅を縮小したものの、昨日にも上昇していた新発10年物の日本国債利回りが指標となる国内長期金利上昇への金利警戒感などもあってマイナス圏に留まり、午後15時30分頃に4万2610円17銭の終値をつけて、前日比278円38銭安の-0.65%と続落して大引けした。
午後からの欧州市場に続き、夕方からの英国ロンドン外国為替市場が参入すると、米国債売りが起きており、時間外の米国債券取引では米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が夕方16時7分頃には一時4.304%付近と4.3%台に戻したため、債券利回りの影響を受けたドルの買い戻しが入り、この夕方16時7分頃にドルは円相場で一時147円64銭付近と今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録したが、今夜から始まる米国ジャクソンホールのイベントリスクもあり、日本市場終盤の利益確定や持ち高調整と様子見のドルの買い控えはやや抵抗になっていた。
このため、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は147円59銭付近で、昨夜17時の147円63銭付近の前東京終値比では約4銭の小幅な円高ドル安になった。
なお、今夜その後の欧州英国市場では、米国債売りに伴う米国債券価格低下に伴う利回り上昇の影響が続いたことでは、米国長期金利上昇時のドルの買い戻しにより、今夜19時44分頃にはドルは円相場で一時147円89銭付近と前東京終値比で小幅な円安ドル高にも転じ、その後の今夜20時2分頃にもドル円は一時147円90銭付近となっている。
今夜この後の米国市場では、今週のイベントとしてすでに話題になっている8月21~23日の米国ジャクソンホール会議のイベントの初日が始まるが、最新米国経済指標の発表予定もあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜21時30分に前週分米国新規失業保険申請件数と前週分米国失業保険継続受給者数と、8月米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数が同時発表され、続いて今夜22時45分に8月米国製造業購買担当者景気指数 (PMI / Purchasing Managers’ Index) の速報値と8月米国サービス部門購買担当者景気指数 (PMI) 速報値と8月米国総合購買担当者景気指数 (PMI) 速報値、今夜23時に7月米国景気先行指標総合指数と7月米国中古住宅販売件数の発表などを控えている。
また、米露宇三者会談の続報や今週と発表予告のあった米国半導体関税など分野別関税政策や、世界の株式市場と債券市場と原油先物価格などを含むコモディティ市場などの為替相場への影響と、世界情勢や政治経済のニュースと要人発言などのファンダメンタルズの分析は、最新経済指標データやテクニカル分析と共に世界のFXトレーダー達の値動きの予想材料になっている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は172円5銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の171円92銭付近の前東京終値比では約13銭の円安ユーロ高であった。
主な要因は、今日の夕方16時台に発表された欧州ユーロ圏主要国のドイツとフランスの最新経済指標の8月仏・独製造業購買担当者景気指数 (PMI / Purchasing Managers’ Index) の速報値がいずれも前回と市場予想を上回ったことで欧州ユーロが買われた。
今夜17時に発表された欧州ユーロ圏総合でも、8月欧州製造業購買担当者景気指数 (PMI) の速報値は前回の49.8と市場予想の49.5を上回る50.5に上振れし、不景気と好景気を分ける景気ボーダーラインの50を超えた好景気指標になったことが好感されており、8月欧州サービス部門購買担当者景気指数 (PMI) 速報値は前回の51.0と市場予想の50.8を下回る50.7であったが、同じく景気ボーダーライン超えの好景気側に留まっていたこともあり、ドル信任懸念で欧州ユーロが反発上昇した。
そのため、ユーロドルも、今日17時の東京外国為替市場の終値は1.1657ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の1.1646ドル付近の前東京終値比で約0.11セントのユーロ高ドル安だった。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は198円58銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の199円40銭付近の前東京終値比では約82銭の円高ポンド安であった。
主な要因は、今日の日経平均株価下落を受けたリスク回避の低リスク通貨の円買いに対して、欧州ユーロや英国ポンドが売られたが、夕方の欧州景気指標のPMIの上振れを受けた欧州ユーロの買い戻しがあった一方で、最新英国景気指標のPMIの発表は今夜17時の東京終値の後の17時30分であったことから英国ポンドにはイベントリスクがあった。
なお、今夜17時30分に発表された最新英国景気指標の8月英国製造業購買担当者景気指数 (PMI / Purchasing Managers’ Index) の速報値は前回の48.0と市場予想の48.3を下回る47.3に下振れしたが、8月英国サービス部門購買担当者景気指数 (PMI) 速報値は前回と市場予想の51.8を上回る53.6に上振れした強弱混合となり、イベント後の英国ポンドの買い戻しでは円相場で一時199円台に下げ幅を縮小している。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2025年8月21日の日本時間(JST / Japan Standard Time)の20時12分(チャート画像の時間帯は英国夏時間 (BST / British Summer Time / JST-8) の英国ロンドン外国為替市場時間の12時12分頃) の人気のクロス円を中心とした為替レートは下表の通りである。なお、米国市場は2025年3月9日から11月2日まで米国夏時間 (DST / Daylight Saving Time / JST-13) に日本との時差が1時間短縮に調整されており、欧州英国市場も2025年3月30日から10月26日まで英国夏時間のサマータイム (BST / British Summer Time / JST-8) に時差調整されたことには注意が必要である。
通貨ペア | JST 20:12の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00前東京終値比 |
ドル/円 | 147.83 〜 147.84 | +0.20 (円安) |
ユーロ/円 | 172.32 〜 172.34 | +0.40 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.1655 〜 1.1657 | +0.0009 (ドル安) |
英ポンド/円 | 199.08 〜 199.14 | −0.32 (円高) |
スイスフラン/円 | 183.46 〜 183.52 | +0.77 (円安) |
豪ドル/円 | 95.08 〜 95.12 | ±0.00 (レンジ) |
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