FXニュース:米FRBパウエル議長発言で利上げ減速予想強まる

2022年12月01日
FXニュース:米FRBパウエル議長発言で利上げ減速予想強まる

 

東西FXニュース – 2022年12月1日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • パウエル議長の発言で大幅な円高ドル安と米株高に
  • 米長期金利低下で主要通貨に対し一時全面ドル安も
  • 日米株高時のリスクオンのドル売りユーロ買いと調整

今日2022年12月1日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時までの外為取引時間のドル円相場の為替レートは、円の安値の137円54銭前後から高値の135円85銭前後の値動き幅約1円69銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は136円53䬻〜54銭付近で、前日同時刻の前東京終値比で約1円99銭の大幅な円高ドル安であった。

昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場で一時139円89銭付近の市場高値をつけていたドルが円などの主要通貨に対して今日の日本の東京外国為替市場で一時135円85銭付近に急落した原因はやはり、昨日の東西FXニュースでも予告していた昨夜27時半の米国連邦準備制度理事会 (FRB) のジェローム・パウエル議長の発言で、「米国のインフレ引き下げに充分な高金利水準に近づくにつれて、利上げペースを緩やかにする事は理にかなっている。その時期は、早ければ来月12月の次回の米連邦公開市場委員会 (FOMC) で訪れるかも知れない」という部分が、フェッドウォッチ (FedWatch) の市場予想値でも過半数超えの優勢になっていた米利上げ減速予想を更に強めたことで、米長期金利が急落し、それまでの日米金利差拡大予想で買われていたドルが他の主要通貨に対して持ち高調整で売られた影響が大きく、日米金利差縮小時の円買いドル売りで大幅な円高ドル安になった。

また、金利上昇に警戒していた米株式市場でも株価が上昇し、株高時のリスクオンで安全資産のドル売りも加わって、一時全面ドル安にもなった。

パウエル議長の発言以前には、以前にお伝えした米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁や米セントルイス連銀のブラード総裁のタカ派発言などを受けて、昨夜の米国ニューヨーク外国為替市場では前述の通りドル円は一時139円台後半になっていたが、パウエル議長の発言直後からの米長期金利の急落で日米金利差の拡大幅の縮小予想を受けて円相場が急騰し、今日の日本の東京外国為替市場では一時135円台の大幅な円高ドル安への変動を始めた。

パウエル議長の発言は、以前にもドル円を数円動かした伝説があり、市場では発言直後から急激な反応を見せ、世界ニュースとしても伝わるにつれて、段階的な市場反応が加わった。

時間に沿った市場トレンドの動きとしては、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では、先立って最新米国経済指標の発表があり、昨夜22時15分の11月の米ADP雇用統計は前回の23.9万人と市場予想の20.0万人に対して12.7万人に減少していたことでは、米大幅利上げ継続条件の背景としての米雇用市場の陰りをやや見せたものの、15分後に発表された7〜9月の四半期の米国実質国内総生産 (GDP) 改定値の前期比年率は前回の2.6%と市場予想の2.7%に対して2.9%に増加し、米GDP個人消費の改定値も前回の1.4%と市場予想の1.6%よりも上昇した1.7%で、四半期コアPCEも前回と横ばいではあるが市場予想以上であったことからは、米利上げ抵抗要因の米景気懸念は一時後退した。

しかし、続いて昨夜23時45分に発表された11月の米シカゴ購買部協会景気指数は前回の45.2と市場予想の47.0を下回る37.2で、深夜24時発表だった10月米住宅販売保留指数は強弱が入り混じる結果になっていたが、それまでの米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁や米セントルイス連銀のブラード総裁のタカ派発言を受けては、それまでは全般的にはドルが買われてドル円相場でも一時139円台にドルが上昇していた。

そこに、前述の昨夜27時半から世界が注目の米国連邦準備制度理事会 (FRB) のジェローム・パウエル議長が米国ワシントンのシンクタンクのブルッキングス研究所の講演で、早ければ来月からの米利上げペース減速の可能性についての発言をしたことで、米利上げペース減速予想が急速に強まり、米長期金利が一時3.7%台から3.6%付近に急落し、日米金利差縮小時の円買いドル売りと、金利上昇への警戒緩和で米株価が大幅に上昇したことで、リスクオンの安全資産のドル売りも主要通貨に対しても起き、一時ドルが全面安に向かい、ドル円は139円台から137円台に円相場が一時急騰し、米国市場でのドルの安値を記録した。

ただし、パウエル議長は、「インフレとの戦いはまだ終わっていない」との発言もしており、前回の米連邦公開市場委員会 (FOMC) の後の記者会見でも、米利上げペースの速度よりも、最終的なターミナルレートの米金利の高さと維持期間を重視するという発言をしていたこともあり、現実的には最新のデータなどを見ながら、2名のタカ派も含めた他のFOMC参加者達との話し合いで来月の会合で決定する事実には注意が必要であるために、米国市場では安値のドルの買い戻しも入り、今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の終値では138円5~15銭付近で、前日同時刻比で約60銭の円高ドル安に留まっていた。

しかし、その後に始まった日本と時間帯が近い今朝のアジア・オセアニアの海外FX市場と今日の日本の東京外国為替市場では、今朝未明のパウエル議長発言のFXニュースを受けた米国の利上げペース減速予想の強まりにより、これまでの円安要因であった日米金利差拡大ペースの減速予想などで時間外の債権市場で米長期金利がさらに低下したことで、更なる円買いドル売りで反応し、今朝のドル円は137円台から136円に移行した。

今朝は日本の最新経済指標の発表もあり、前週分の対外対内証券売買契約等の状況は、対外中長期債が前回の-5266億円と前回修正の-5271億円に対し-512億円に大幅上昇し、また対内株式も前回の45億円と前回修正の44億円に対して4429億円に大幅増加したことも、円買いによる円相場上昇の一因となった。同時発表の7〜9月四半期法人企業統計調査のソフトウェア含む全産業設備投資額の前年同期比も前回の4.6%と市場予想の6.4%に対して9.8%に上昇しており、日本の景気好感があった。

今朝10時頃の仲値決済では、日本企業の輸入実需の円売りドル買いの抵抗は入ったものの、投資系や輸出企業のドル売り円買いで横ばいに近く、また、パウエル議長の発言を受けた米利上げ減速予想での日米金利差縮小時の円相場の上昇トレンドが継続し、午後には欧州英国市場の参入もあり、16時台に一時135円85銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。

今夜この後にも米国の最新経済指標の発表があり、また他の米連邦準備制度理事会 (FRB) 関係者達の発言予定もあるために、米長期金利の下げも一段落してきていたこともあり、再び136円台へと安値のドル買いと数ヶ月ぶりの高値の円の利益確定売りなどで持ち高調整が入り、今夜17時の今日の日本の東京外国為替市場のドル円相場の終値を136円53䬻〜54銭付近の、前日同時刻の前東京終値比で約1円99銭の大幅な円高ドル安でつけた。

今夜この後には最新米国経済指標の発表予定があり、日本時間でのスケジュールは21時半に11月米チャレンジャー人員削減数、22時半に10月の米個人所得と米個人消費支出 (PCE)とPCEデフレーターとPCEコア・デフレーター、前週分の米新規失業保険申請件数と米失業保険継続受給者数、23時45分に11月の米製造業購買担当者景気指数、深夜24時に11月の米ISM製造業景況指数と10月の米建設支出などがあり、世界のFXトレーダー達が注目している。また、他の米FRB関係者達の発言予定もあり、23時20分から米ダラス連銀のローガン総裁の発言や、23時半から米FRBのボウマン理事の発言、そして29時から米FRBのバー副議長の発言予定も注視される。

一方、今日の欧州ユーロは、今夜17時の日本の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は、基軸通貨のドルに対する大幅な円高の影響もあって142円1~5銭付近で、前日同時刻比で約1円39銭の大幅な円高ユーロ安であった。

ユーロドルも、円に対する大幅なドル安の影響や、米長期金利低下時の米欧金利差縮小のユーロ買いドル売りや、米株高時のリスクオンのドル売りなどもあり、17時の今日の日本の東京外国為替市場のユーロドルの終値は、1.0401~1.0403ドル付近で前日同時刻比で約0.49セントのユーロ高ドル安になった。

今日は英国ポンドに対しても円相場上昇の影響が波及しており、今夜17時の今日の日本の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は164円90~96銭付近で、前日同時刻比で約1円50銭の大幅な円高ポンド安であった。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年12月1日の日本時間(JST)20時26分(英国時間(GMT)11時26分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:26の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 136.36 〜 136.37 -2.16 (円高)
ユーロ/円 142.25 〜 142.26 -1.15 (円高)
ユーロ/ドル 1.0431 〜 1.0433 +0.0079 (ドル安)
英ポンド/円 165.58 〜 165.64 -0.82 (円高)
スイスフラン/円 144.26 〜 144.32 -1.75 (円高)
豪ドル/円 92.70 〜 92.74 -0.97 (円高)


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