FXニュース:一時148円86銭付近の1990年8月以来の円安ドル高を記録

2022年10月17日
FXニュース:一時148円86銭付近の1990年8月以来の円安ドル高を記録

 

東西FXニュース – 2022年10月17日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 9月の米小売売上高の自動車と部品除くコア指数が市場予想超え
  • 最新米経済指標の10月米ミシガン大消費者態度指数が59.8に上昇
  • 米連邦準備理事会(FRB)大幅利上げ予想で米長期金利が再び4%台
  • 英トラス政権が市場安定の為に法人減税撤回表明と新財務相に

今日2022年10月17日月曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が148円80銭前後から高値148円45銭前後の値動き幅約35銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は148円63〜64銭前後で、前営業日同時刻の前東京終値比では約1円16銭の大幅な円安ドル高であった。

先週末の金曜の夜から土曜の朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では、対ドル円相場が下落し、1990年8月以来の一時148円86銭の約32年ぶりの円安ドル高も記録した。

原因は、前回の東西FXニュースで発表スケジュールをお知らせしていた通り、先週末の金曜の夜に米連邦準備理事会(FRB)と世界市場が注目の最新重要米国経済指標が発表され、市場予想を上回る結果などから、米連邦準備理事会(FRB)が米国のインフレ抑制のために今後も大幅利上げの継続と長期化をするという市場予想が優勢になり、かねてからの円安要因であった金利抑制の大規模緩和金融政策を継続の日本銀行(日銀、BoJ)との日米金利差拡大予想による円安ドル高が進行した。また、ユーロやポンドなどの他の主要通貨に対するドル高も円相場に波及した。

日本時間で先週金曜の夜の21時半に発表された最新米国経済指標の9月の米小売売上高は前月比では0.0%上昇の横ばいであったが、自動車と部品を除くコア指数の前月比の方が、前回の-0.3%と前回改訂と市場予想の-0.1%に対して0.1%に増えており、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ継続と長期化の抵抗要因であった米景気懸念が減退した。

続いて23時に発表された米ミシガン大学の10月の米消費者態度指数も、市場予想の59.0 を超えた59.8に上昇し、消費者物価の見通しを示す予想インフレ率の1年先の予測値が前月9月の4.7%から5.1%に上昇し、5年先のインフレ予測値も2.7%から2.9%に上昇した。

米国市場で前日までに発表されていた約40年ぶりの高インフレの最新の9月米消費者物価指数(CPI)のコア指数等と併せると、市場予想では来月11月と12月の次回とその次の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも、通常の3倍の0.75%の大幅利上げを継続するという市場予想が出ており、米長期金利は一時4.03%台に上昇していたが、今回の発表を受けて、今後も米連邦準備理事会(FRB)が米国の記録的なインフレ抑制のための大幅利上げ継続と長期化するという市場予想が更に強まり、米長期金利が再び上昇し、日米金利差拡大による円安ドル高が進行した。

欧州や英国にもインフレ対策の利上げ継続予想が出てはいるが、米国と比較して景気懸念が強いために、ユーロやポンドに対しても安全資産のドルが買われて全面ドル高を記録した。

円安ドル高が一時148円台後半になり149円台に迫ると、日本政府と日本銀行(日銀)によるドル円の為替介入への警戒もあったものの、欧州ユーロや英国ポンドなどの多通貨に対するドル買いの影響の円相場への波及が止まらず、特定の価格ではなく急激な変動によるボラティリティーが為替介入の基準という日本政府と日銀の介入レベルを試す動きになった。

しかし、先週に開催された20カ国(G20)財務大臣・中央銀行総裁会議の後に、米国のイエレン財務長官が、「米ドルの強さは各国の経済の違いを反映しており、為替レートは市場の決定を支持する」と発言していたことから、米国市場では米国政府のドル高容認と受け止められており、もしも今後再度の日本の為替介入があっても、日米協調介入ではなく日本の単独介入だけでは効果は持続しにくいとの予測からドルの上値が試されており、また介入で一時ドル安になったら買いのチャンスと狙ってのストップロスをかけた強気(ブル)のドル買いが米国市場では継続した。

週末の米国ニューヨーク市場の前半に同時進行していた金曜の夜の英国ロンドン市場では、リズ・トラス英首相が英ポンド・英国債・英国株のトリプル安の市場混乱の原因となった大規模減税案の一部を撤回し、クワーテング英財務相の解任を発表したことでは一時はポンドが買われたが、米国市場ではハント新英財務相が自分の中国人妻を日本人と偽って過去に紹介していた事等が話題になり、英新政権の政治的混乱や今後の経済政策の不透明さなどから、米国ニューヨーク市場では英ポンド売りと安全資産のドル買いが優勢で、ユーロもポンドのつられ安になりやすく、多通貨に対する全面的なドル高が円相場にも波及した。

また、米大幅利上げ継続で企業への貸付金利上昇等の警戒から、決済期を迎えている米株式市場では主要株価が下落し、株安時のリスク回避でも安全資産のドルが買われていた。

そのため、先週末の米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は円の高値147円65銭前後から円の安値148円86銭前後の値動きで、土曜の朝6時のニューヨーク終値は148円75~85銭の前日同時刻比で約1円60銭の大幅な円安ドル高だった。7営業日連続の円安ドル高を記録したほか、円はユーロに対しても4日連続で続落した。

週が明けて始まった今日の日本の東京外国為替市場では、今朝は日本政府の財務省の神田真人財務官が急速に進む円安ドル高について、「過度な変動(ボラティリティー)には、しっかりと対応することになる」と再度の為替介入を示唆する発言をし、先週末の米国市場からのトレンドで日米金利差拡大予想の円安ドル高が進む中でも、今日の日本市場時間には日本政府と日本銀行の為替介入に警戒したボラティリティーが少なめの値動きになった。

ただし、大きな流れでの円安ドル高の継続により日本企業の輸入実需の円売りからのドル買いなども入り、また今日の日本市場時間にも米長期金利が4%台付近の高水準で推移していたことなどから、午後からは欧州英国市場の参入もあったために、日本市場でも午後に一時148円80銭付近の円安ドル高を記録した。

148円台後半の前米ニューヨーク高値に迫ると、今日は鈴木俊一財務相も、「投機による過度な変動(ボラティリティー)には、断固たる措置を取る考えにいささかも変わりはない」と発言していたなどことから、再び日本市場では為替介入への警戒も高まった。しかし、その一方で、欧米市場では、日銀が金利抑制を止めない限りは、単独為替介入の一時抵抗が入るとしても、150円台の大台を試す日も遠くないとの専門家のコメントも入っていた。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドルの円相場の終値は148円63〜64銭付近で、前営業日同時刻の前東京終値比では約1円16銭の円安ドル高だった。

今夜この後にも最新の米国経済指標の発表予定があり、日本時間で21時半に10月の米ニューヨーク連銀製造業景気指数が発表される。また今日の米株式市場では主要企業の決済報告が続いており、今夜はバンク・オブ・アメリカやバンク・オブ・ニューヨークなどの米国の銀行や金融機関の決算報告も予定されており、世界の投資家達が注目している。

今日のユーロは、円相場は17時の今日の日本の東京外国為替市場の終値は144円86〜89銭付近で、前営業日同時刻の前東京終値比で約82銭の円安ユーロ高であった。ユーロの円相場は先述のニューヨーク市場でも円の続落で、土曜の朝6時の米国ニューヨーク外国為替市場のユーロ円の終値も144円50~60銭で、前日同時刻比約55銭の円安ユーロ高だった。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は0.9747~0.9748ドル付近で、前営業日同時刻の前東京終値比で約0.20セントのユーロ安ドル高だった。

先週末金曜の夕方の欧州市場では、ドイツやフランスなど欧州主要株価指数の上昇を受け、一時は投資家のリスク回避姿勢が後退し、ユーロ買いのドル売りが起きていた。しかし、その後に始まった米国ニューヨーク市場で発表された先述の最新米国経済指標を受けて、米国の大幅利上げ継続と長期化予想により、企業等への貸付金利上昇への警戒などから米株式指数が下落したために、リスク回避のユーロ売りと安全資産のドル買いに転じた。

欧米金利差拡大予想でもドルが買われて、ユーロが売られて下げたことなどから、ドルの全面高に転じ、一時0.9708ドル付近のユーロ安ドル高を記録したほか、土曜の朝6時の米国ニューヨーク外国為替市場のユーロドルの終値は0.9720~0.9730ドル前後で、前日同時刻比で約0.55セントのユーロ安ドル高になった。

加えて、今日のニュースでは、ロシアのウクライナ進行の情勢悪化と長期化により緊張が高まり、ウクライナに近い欧州ユーロ圏の地政学リスク回避から、ユーロ売りと安全資産のドル買いが優勢になった。

今日の英国ポンドの円相場は、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は167円37〜43銭付近で、前営業日同時刻の前東京終値比比では約1円27銭の大幅な円安ポンド高であった。

先週末の金曜の夜の英国ロンドン外国為替市場では、リズ・トラス英首相が、先月末の英ポンド・英国債・英国株の急落のトリプル安の金融不安と市場混乱の原因となった大規模減税策の一部の法人税の減税を撤回すると発表した。今年の春と秋の英国エネルギーショックと記録的なインフレによる英生活費危機(コスト・オブ・リビング・クライシス=Cost Of Living Crisis)で生活困窮者のための支援策の筈だった大規模減税案に、富裕層や大企業の法人税減税案までが含まれていたことで、英財政懸念のポンド売りで歴史的なポンド暴落と債権と株安を引き起こしたことからの一部修正で、欧州英国市場では英財政懸念が一時緩和され、ポンド買いと安全資産のドルと円売りが起き、ポンドが一時上昇した。

しかし、就任後に短期でクワーテング英財務相が解任され、リズ・トラス首相の保守党(トーリー)党主選挙時の公約が変更され、一部では辞任を求める声もある中で、新英財務相に任命されたハント財務相が英国景気懸念の中での増税について言及するなど、過去にも自らの中国人妻を日本人と呼び問題になったことのあるおぼっちゃま新財務相であることが話題にあった米国市場では、英新政権の信頼性の疑問と政情不安定になる懸念などから、リスク回避で再びポンド売りで安全資産のドル買いが起き、米ニューヨーク市場の円相場に他の主要通貨へのドル高が波及する事態になった。

英国でも秋の英国エネルギーショック第二弾の電気代高騰への対応は、生活困窮者や年金受給者などへの福祉支援で全国民が暖かく冬が過ごせる様にと春までの期間限定の光熱費のばら撒き型の支援がされたことは一時好感されたものの、一律の電気代支援の基礎給付に追加支援の算出形式では特に生活に困窮していない高所得者にも給付金が今月から自動で振り込まれており、政府への返納が不可能な電気会社経由の自動振込であるために、長期的な英新政権の福祉財源を含む財政懸念があり、安全資産のドルに対しては、英景気懸念のリスク回避で英ポンドが売られる機会があった。ただし、この計画も見直される可能性が出てきた。

一方、世界の投資は集めやすくなる英ポンド安と、投資資金運用に有利な英高金利により、英国が注目されている部分には、原油と天然ガスの埋蔵から北海油田とガス田の再開発がある。英国の北海移行局(NSTA)は先週、北海の油田・ガス田開発ラインセスの次回の公募に34鉱区を追加し、対象を932鉱区にすると発表した。入札は2023年1月12日の締め切りで、第2四半期の4~6月から優先ライセンスを発行予定で、英政府はエネルギー安全保障の強化を推進させ、北海移行局(NSTA)は既存の英国北部の北海油田のインフラに近い北海南部4海域の優先域は、わずか1年からの早期原油生産開始が可能としている。

ロシアのウクライナ侵攻の長期化で、石油と天然ガスなどのエネルギー供給不安が欧州経済不安を高めている中で、元欧州連合(EU)で経済的なつながりが強く、地理的にも近い英国での原油とガスの新規開発への経済効果の期待がある一方で、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標とは矛盾するとして、環境保護団体は猛反対をしている。

しかし、北海移行局(NSTA)では新規プロジェクトにより、温室効果ガス排出量を低減させたり、二酸化炭素(Co2)の回収と貯留や水素燃料開発等への利用等も可能で、昨年の英国の石油とガス生産のCo2排出量は2018年と比べて2割以上も減少したと報告している。

先週末にはまた、英景気懸念や政府政治懸念の一方で、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)のチーフが来月の英大幅利上げを示唆するニュースもあり、そこで10月の英国インフレ率が11%超えの予想であることに言及されていたことで、利上げ競合のドルに対しては英ポンドが売られる機会があるものの、世界投資の獲得力と日英金利差拡大予想では、円に対しては英ポンドが買われる機会が多く、今日の夕方の日本市場では前営業日比で大幅な円安ポンド高の終値をつけた。

比較すると、日本は世界からの投資よりも自国の財源で投資資金を賄うことが多いために、円安でも世界市場から日本への投資のためのまとまった外貨から円買いの機会が少なく、今月から日本の旅行規制が解除され、外国人観光客の小口の円買いは入るものの、日本経済は自立性が高く、観光産業への依存率が低いことなどから円が大きく買われる機会が少なく、為替介入も日本の単独介入では効果を長期間持続させることが難しいため、遅かれ早かれ150円台の円安ドル高を視野に入れての円の安値を試すFX投資家達も増えてきている。

ドルが高すぎて買いにくい場合には、次の為替介入直後の一時安値が狙い目になる可能性もあるが、日本政府と日銀の直ぐに使える為替介入資金は、前回程度の規模であればあと6回くらいは余裕で介入可能な日本の資金力があることが、日本市場では当面の為替介入警戒材料となっている。ただし、ストップロスを上手く使えば挑戦可能なドル買いが現在のドル高市場を支えており、日本の単独為替介入後の一時安はドル買いのチャンスとも捉えられ始めているために、日本市場時間外のボラティリティーは再び大きくなってきており、株式市場と比較してもFXの外国為替取引の注目度は世界的に高まっている。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年10月17日の日本時間(JST)19時1分(英国夏時間(GMT+1)11時1分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:01の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 148.67 〜 148.69 +1.20(円安)
ユーロ/円 144.94 〜 144.96 +0.90(円安)
ユーロ/ドル 0.9748 〜 0.9750 -0.0019(ドル高)
英ポンド/円 167.77 〜 167.83 +1.67(円安)
スイスフラン/円 148.25 〜 148.31 +0.35(円安)
豪ドル/円 92.86 〜 92.90 +0.66(円安)


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