FXニュース:日米金利差拡大予想で1998年以来の139円台の円安ドル高を記録

2022年9月01日
FXニュース:日米金利差拡大予想で1998年以来の139円台の円安ドル高を記録

 

東西FXニュース – 2022年9月1日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • パウエル議長に続くFRBタカ派発言継続で米長期金利が3.2%台に
  • 米クリーブランド連銀メスター総裁は来年早期の金利4%以上を主張
  • 過去最高の欧消費者物価指数9.1%上昇継続でECB大幅利上げ予想

今日2022年9月1日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時の外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値が139円69銭前後から高値139円14銭前後の値動き幅約55銭で、今夜17時の東京外国為替市場の終値は139円29〜31銭前後で、前日同時刻の前東京終値の138円60〜61銭前後と比較すると、約71銭の円安ドル高であった。

また、今日の日本市場では一時139円69銭付近の、1998年9月以来の約24年ぶりの円安ドル高の記録を更新した。

主な原因は、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク市場時間に米連邦準備理事会(FRB)高官の相次ぐタカ派発言が継続し、今日の日本市場でも米長期金利が3.2%台付近に上昇し、かねてからの円安要因であった日米金利差拡大による円安ドル高が進行した。

米連邦準備理事会(FRB)高官のクリーブランド連銀のメスター総裁は昨夜の講演で、「米国の高インフレの鎮静化のために、来年早々に米フェデラル・ファンド(FF)金利を4%を超える水準に利上げし、その後も暫く据え置く必要がある」と発言し、現在の2.25~2.5%から大幅の利上げ継続を示唆し、来年の利下げの可能性も否定した。

先週のパウエル議長の米インフレ抑制を最優先とするタカ派の発言に続き、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の米連邦準備理事会(FRB)高官達の相次ぐタカ派発言の継続で、米大幅利上げ継続予想が優勢になり、米ニューヨーク債券市場では米長期金利の指標となる米10年債の利回りが上昇し、前日の終値の3.10%から一時3.19%台に急上昇して約2ヶ月ぶりの高利回りに達したことから、米国ニューヨーク市場で日米金利差拡大のドル買い円売りが起き、ニューヨーク市場時間に139円付近の円安ドル高を記録していた。

ただし、先週のパウエル議長のインフレ抑制最優先宣言以来、円安ドル高が急速に進んでいることからは、月の変わり目で高値のドルの利益確定売りや安値の円の持ち高調整買いなどの抵抗も加わり、また昨夜に発表された最新の米国経済指標の8月のADP雇用統計が前回の26.8万人と市場予想の29.5万人以下の13.2万人であったことでは、一時的にドルが売られた時間もあったものの、米利上げ予想や米長期金利上昇時の上げ幅と比較すると下げ幅の方が少なく、今日の為替市場への影響は限定的であった。

そのため、今朝6時の米国ニューヨーク外国為替市場のドル円相場の終値は138円90銭~139円0銭付近で、前日同時刻の前ニューヨーク終値比で約15銭の円安ドル高であった。

そのトレンドを引き継いで始まった今日の日本の東京外国為替市場でも、朝から日米金利差拡大予想による円売りドル買いが優勢で、今朝9時過ぎに139円59銭付近に円安ドル高が更に進行した。

原因はやはり、世界のFXニュースになった米連邦準備理事会(FRB)高官達のタカ派発言の連続コンボで、日米金利差拡大予想の円売りドル買いが日本市場時間にも起きた。米国市場と比較するとより長期的な投資を念頭に置きやすい日本市場の投資系では、米クリーブランド連銀のメスター総裁の発言の中でも、大幅利上げの後も「来年の利下げを見込んでいない」という、米利上げ継続後の長期化予測が影響を及ぼしていた。

今朝の日本時間の取引でも米長期金利が3.2%台に上昇し、日米金利差拡大のよる円売りドル買いが優勢だった。

また今朝は日本の最新経済指標の発表もあり、4〜6月の四半期法人企業統計調査・ソフトウェア含む全産業設備投資の前年同期比は前回と市場予想の3.0%に対して4.6%であったが、同時発表の前週分対外対内証券売買契約等の状況は、対外中長期債が前回のマイナス792億円からマイナス3037億円に大幅減少し、対内株式も前回のプラス285億円からマイナス5360億円に転じたことからも、今朝は円が売られやすかった。

ただし、今日の日本市場の円安抵抗要因としては、記録的な高値のドルの利益確定売りと持ち高調整の円買いがあり、今朝10時頃の仲値決済で日本企業の輸入実需の円売りドル買いで10時半過ぎに今日の日本市場のドルの高値の139円69銭付近の1998年以来の円安ドル高を記録した後には、日本の輸出企業や投資系による高値のドル売り円買い抵抗が入り始めた。

また、午後になって米長期金利の上昇トレンドに落ち着きが見え始めたことからも、月の変わり目の持ち高調整などで、歴史的な高値圏になったドルの利益確定売りと安値の円の持ち高調整買いが入った。

米金利大幅上昇と据え置きは米国に支店を置く日系大企業などの取引先の米現地企業の貸付ローン金利上昇なども意味するために、今日は日経平均株価が下落しており、15時台に27,661円47銭の前日比430円6銭安で大引けしたことから、株安時のリスク回避で低リスク通貨の円が買われたことでも、午後にはドルは今朝の上昇幅を縮めた。

また今日の午後のニュースでは、日本政府の松野博一官房長官が記者会見に応じて、外国為替市場で急速に進む円安ドル高に関して、「急速な変動は望ましくない」と口先介入をしていた。

日本市場の午後には時差で朝の欧州英国市場の参入があり、9月始めの日米金利差拡大予想や欧州景気懸念のユーロ売りのドル買いが入る一方で、高値のドルの利益確定売りや安値の円の持ち高調整買いなどの抵抗を加えながら、17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は139円29〜31銭前後で、前日同時刻比較で約71銭の円安ドル高であった。

今夜この後にも最新の米国経済指標の発表が予定されており、特に8月の米購買担当者景気指数(PMI)や、米ISM製造業景況指数などが世界の投資家達に今後の為替相場の値動きの予想で注目されている。

今夜の米経済指標の詳細なスケジュールとしては、日本時間の今夜20時半に8月の米チャレンジャー人員削減数、21時半に4〜6月期四半期非農業部門労働生産性と前週分新規失業保険申請数と前週分失業保険継続受給者数、22時45分に8月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)、23時に8月の米ISM製造業景況指数と7月の米建設支出の発表が予定されている。

今日のユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は139円71~74銭付近で、前日同時刻比で約1円9銭の大幅な円安ユーロ高であった。また、今日の日本市場では、一時140円付近の約1カ月ぶりの円安ユーロ高も記録した。

原因は、昨夜発表された欧州ユーロ圏の最新経済指標の8月の消費者物価指数(HICP)の速報値が前回の8.9%と市場予想の9.0%を上回る9.1%の上昇率で、史上最高の4ヶ月連続の伸び率の欧州インフレ対策で、欧州中央銀行(ECB)も今月の次回理事会で大幅利上げをする予想が強まり、日欧金利差拡大予想の円売りユーロ買いが優勢となった。

また、今日のドルに対する記録的な円安も、他の主要通貨であるユーロにも影響していた。当然、円に対する大幅なユーロ高も他の主要通貨のドルに波及し、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロドルの終値は1.0029~1.0031ドルで、前日同時刻比で約0.27セントのドル安ユーロ高になった。

ただし、市場の流れとしては、昨夕の欧州市場では一時下落していた天然ガス価格の再上昇時に欧州エネルギー問題による景気懸念などでユーロが売られていた時間もあり、その後に欧州ユーロ圏の消費者物価指数(HICP)が過去最高の9.1%で欧州大幅利上げ予想のユーロ買いが起きたが、同じく利上げ安全資産のドルに対しては、欧州景気懸念でユーロが売られてドルが買われる動きも入っていた。

一方で、記録的な欧州インフレ率に加えて、欧州中央銀行(ECB)メンバーのドイツ連邦銀行のナーゲル総裁が、「9月には力強い利上げが必要だ」と発言したことで、ECBの0.75%の大幅利上げ予想が強まり、ユーロ買いの円売りが優勢となっていた。

今日の午後と今夜発表があった最新の欧州ユーロ圏の経済指標では、ドイツの7月の小売売上高の前月比が前回のマイナス1.6〜1.5%と市場予想の0.1%に対して1.9%に改善されていた。しかし、ドイツの8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、前回と市場予想の49.8%に比べて49.1%に低下し、ユーロ圏総合の同PMIも前回と市場予想の49.7に対して49.6に低下していた。ただし、ユーロ圏の雇用統計は前回と同じ横ばいであった。

英国ポンドは、今夜17時の東京外国為替市場の円相場の終値は161円59〜65銭付近で、前日同時刻比で約33銭の円安ポンド高であった。

今日の午後に発表された英国の最新経済指標の8月のネーションワイド住宅価格は前回と市場予想の0.1%に対して0.8%に英国の住宅インフレが更に悪化しており、英国中央銀行のイングランド銀行の利上げ予想による日英金利差拡大予想も出ていた。

また、今夜17時半に発表された最新の英経済指標の8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前回と市場予想の46.0に対し47.3に改善されていた。

ただし、英国エネルギーショックが春の60%強の値上げに対して、秋に80%超えとも言われており、既に10%超えの記録的なインフレによる英国景気減速懸念によるポンド売りで、安全資産のドルに対しては昨夜の米ニューヨーク市場で記録的な安値圏になっていた時間もあった。

豪ドルとスイスフランに対しても、17時の今日の東京終値は前日比で円安で、今日は主要通貨に対する全面的な円安の日本市場になっていた。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年9月1日の日本時間(JST)19時27分(英国夏時間(GMT+1)11時27分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 19:27の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 139.29 〜 139.30 +0.71(円安)
ユーロ/円 139.50 〜 139.51 +0.88(円安)
ユーロ/ドル 1.0014 〜 1.0016 +0.0012(ドル安)
英ポンド/円 161.34 〜 161.40 +0.08(円安)
スイスフラン/円 142.16 〜 142.22 +0.09(円安)
豪ドル/円 95.01 〜 95.05 +0.02(円安)


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