FXニュース:日米欧英の金融政策の違いと株高円売りで円安ドル高継続
2022年3月23日
東西FXニュース – 2022年3月23日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 日米金利差拡大予想と対照的な金融政策で一時121円台の円安ドル高に
- 日銀円売り波及と欧州株上昇リスクオンの133円台の円安ユーロ高
- 日英金利差と英株価上昇で160円台になったポンド下落の原因はインフレ
今日2022年3月23日の東京外国為替市場では、日米金利差拡大予想と日米金融政策の違いから円相場が続落しており、今夜の東京終値の17時は121円8~9銭で前日比61銭の円安ドル高であった。
今日で11日連続の、2016年2月以来の記録的な円安ドル高となった。
原因は、昨日の東西FXニュースでもお伝えした通り、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長や、他のFRBの高官からも、米国のインフレ抑制の為に、早期に積極的な利上げの必要があると思わせる発言が相次いでいることが大きい。また、今夜この後の日本時間21時頃にもパウエル議長の議会発言が予定されているので、今後のドルの値動きに影響の出る可能性が高いので注意が必要である。
今朝の東京外為市場が始まる前のニューヨーク市場では、米クリーブランド連銀のメスター総裁も、米国のインフレを抑制して物価高騰の継続を避ける為に、今年前半により大幅の利上げを行い、年内に2.5%程度まで金利を引き上げ、来年も更に利上げすることが適切というタカ派の意見を講演し、日米金利差拡大予測からニューヨーク市場時間にもドル買いが起きていた。その為、その後に始まった東京外為の朝9時頃に、今日の東京の安値の121円41銭を記録した。
しかし、その一時間後の仲値決済の10時頃には、利益確定売りや輸入企業を助ける為かと思うほどの大規模な調整売りなどが起きて一時は120円台後半まで戻したが、ボリンジャーバンドを突き破るほどの一時的なドル売りで安値になったドルを買い戻すトレンド変換が起き、更に1時間後の11時頃までには再び121円台の元の円安ドル高トレンドになった。再度、120円台後半に戻したのは、今夜の東京外為17時終了後の、時差で朝の欧州市場時間である。
日本円はユーロに対しても、東京終値17時には133円41~43銭で前日比1円9銭の円安ユーロ高で、一時は133円82銭前後の安値も記録した。
日銀の金融政策の違いからドルで進行していた円安が、ユーロにも波及していた。今日未明のニューヨーク市場では、米株高によるリスク選好ムードが強まっており、低リスク円が売られてユーロが買われていたので、その後の東京9時頃に今日の安値を記録した。
日銀の円売り円安波及と、欧州株上昇のリスクオンのユーロ買いで、133円台の円安ユーロ高が欧州の早朝市場まで続いたが、日本時間18時半頃に時差で朝9時半頃のロンドン市場では、利益確定売りやインフレ景気懸念の他にも、欧州と地理的に近いウクライナ戦争の継続とロシアの報復に関する報道があり、地政学リスク回避用にユーロを売って安全資産のドルを買い、ついでに安値で低リスク通貨の円も買う抵抗も入っていた。
同様の理由で、株高リスクオンのニューヨークと東京終値と欧州早朝まではユーロが買われて、東京終値17時は1.1018~19ドルで前日比0.35セントのドル安ユーロ高であったが、18時半から欧州市場がインフレ物価景気懸念と地政学リスクオンのムードが高まってからは、ユーロが売られて安全資産の流動性の高いドルが買われる抵抗も入っていた。
先週に0.75%への政策金利上昇があった英ポンドも、日英金融政策の違いから買われており、海外からの投資が集まり英国株価指数が今月になって急上昇で、今朝のニューヨーク市場から今日の東京市場の16時頃までは160円台の円安ポンド高であったが、東京終値17時頃の早朝のロンドンでは、英国現地の今朝のトップニュース速報が、年内6.2%予想の記録的なインフレ懸念のニュースであった。
今日の夕方、先ほど景気指数速報で英国の2月の消費者物価指数(CPI)上昇が伝わったところであったが、インフレ景気懸念のポンド売りが起き、159円台に戻ったのが日本の17時頃だったので、159円90銭前後が東京終値になった。その後の欧州市場でも高値になっていたポンドが利益確定などでも売られたので、20時2分には159円92〜98銭で、東京前日比28銭ほどの円高ポンド安になった。
英国ではエネルギーと食料を中心に、過去30年間で最速のインフレ加速率の懸念がある。
英ガス電力市場監督局(Ofgem)が来月4月から電気代を54%も引き上げ、コスト増が要因にあるが、以前の世界的なガス価格高で英電気供給業者の経営難によるものであり、さらに脱ロシアで原油原料高も加わったので、今後も値上げとコスト増が続く可能性がある。英国は昨年からもEU離脱後の通関手続き増加とコロナ禍の人手不足で、輸入貨物運搬用の長距離トラック運転手が不足して賃金値上げの人件費増加も加わり、輸入品を中心に、元々高い物価が記録的に上昇していた。そのため、英国では米国に先駆けてインフレ抑制と海外投資を集める積極的景気対策などで英政策金利が上がったところであった。
今後も積極的な金融政策が期待され、英ポンドが160円台に上昇していたが、それでも今夜インフレ加速の予想が出てきたことに市場の動揺が伺える。
今後も為替の値動きに影響を与える景気経済などのニュースには、注意が必要である。
少し前のロシアがウクライナの原発を占領した時に、万一の事故で汚染の心配のない南半球の資源輸出国オーストラリアドルがリスク回避で買われていたが、日本では輸入実需の値動きもあるが、欧米市場では世界的な株高による今日のリスクオンや地政学リスクのリスクオフの値動きも影響しており、豪ドルにも円安と円高にもなる値動きが見られた。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年3月23日の日本時間(JST)20時20分(英国時間11時20分)付近の、クロス円を中心とした東京前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア |
JST 20:20の為替レート |
東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 |
120.97 〜 120.99 |
+0.50(円安) |
ユーロ/円 |
133.01 〜 133.03 |
+0.69(円安) |
ユーロ/ドル |
1.0993 〜 1.0995 |
+0.0010(ドル安) |
英ポンド/円 |
159.78 〜 159.84 |
-0.42(円高) |
スイスフラン/円 |
129.41 〜 129.47 |
-0.06(円高) |
豪ドル/円 |
90.41 〜 90.45 |
+0.18(円安) |
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