FXニュース:米FOMC小幅利下げ決定
2025年12月11日
東西FXニュース – 2025年12月11日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米雇用コスト指数下振れ
- 米金利見通しは据え置き
- 米国債購入で利回り低下
- 米FRBパウエル議長発言
- 米主要株価三指数が上昇
- 日経平均株価反落後安値
- 来週の日欧金融政策会合
今日2025年12月11日木曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の高値でドルの安値の155円49銭付近から、円の安値でドルの高値の156円17銭付近の値幅約68銭で、本日17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は156円3銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の156円67銭付近の前東京終値比で約64銭の円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と市場時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) マーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の欧州市場と英国ロンドン外国為替市場では、昨夜18時47分頃から時間外の米国債券取引で米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.209%付近と4.2%台に上昇してしばらく高止まりしており、昨夜19時28分頃の一時4.210%付近に向けていた債券利回りの金利差トレードの影響では、昨夜18時54分頃にドルは円相場で一時156円89銭付近に上昇していた。
しかし、その後の米国市場を控え、午前4時に米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の米国政策金利と声明の発表のイベントが予定されており、米国経済・政策金利見通し (SEP / Summary of Economic Projections) と午前4時30分頃からの米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のジェローム・パウエル議長の要人発言に世界市場の注目が集まる中で、イベントリスクのドルの利益確定売りと持ち高調整が入り始めたことでは、ドルは円相場で反落した。
また、昨夜19時55分頃から、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) のクリスティーヌ・ラガルド総裁の発言があり、来週発表予定の欧州ユーロ圏の最新経済予測について、「直近の予測作業では見通しを上方修正した。12月も上方修正するかもしれないと考えている」と、欧州経済成長見通しが引き上げられる可能性が高いとの見方を示したこともあり、景気影響のインフレ圧が意識されたほか、来週12月18日のECB理事会における欧州金利据え置き予想が優勢であったほか、フランス10年債の利回りが一時3.60%超とおよそ9カ月ぶりの高利回りに上昇したことから、イベントリスクのドル売りで欧州ユーロが買われ始めた外貨影響も対ドル円相場に波及したため、欧州英国市場の後半にあたる昨夜22時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時156円71銭付近で、昨夜22時20分頃の一時156円72銭付近がこの日の米国市場の円の安値でドルの高値となり、その後のドルは円相場で下落を続けた。
昨夜22時30分の米国市場では最新米国経済指標の発表があり、7〜9月第3四半期米国雇用コスト指数の前期比は、前回と市場予想の0.9%を下回る0.8%に鈍化し、米国雇用コスト関連のインフレ圧の鈍化が意識されたことでもドルは円相場で下落を続けたほか、発表後の昨夜23時9分頃には米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利も一時4.195%付近に反落して4.2%台割れを起こしたため、昨夜23時11分頃にはドルは円相場で一時156円50銭付近と156円台中盤になっていた。
なお、昨夜23時45分に、米国の隣国にあたる北米カナダの中央銀行にあたるカナダ銀行 (BoC / Bank of Canada) が政策金利を発表し、市場予想で優勢であった通りに、現状の2.25%で金利据え置きを決定したが、「現在の加政策金利は、カナダのインフレ率を2%付近に維持するために、ほぼ適切な水準にあると考える」との声明であったが、「不確実性は依然として高く、見通しに変化が生じた場合には、我々は対応する用意がある」と今後の調整の可能性も示唆していたことでは、主要通貨へのカナダドル売りは一時的な値動きに留まった。
米国ニューヨーク株式市場では、先ほどの米国長期金利上昇時の影響やイベントリスクへの警戒感などもあって、米国主要株価三指数の米国ダウ工業株 (DJIA / Dow Jones Industrial Average) と米国S&P500種株価指数 (S&P500 / Standard and Poor’s 500 index) と米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ / National Association of Securities Dealers Automated Quotations Composite) が一時は揃ってマイナス圏になっていた時間があったため、米国主要株価三指数下落時のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) でも世界的な安全資産の米国債買いが入り、米国債券価格上昇に伴う利回り低下が起きたほか、ドルからの低リスク通貨の円買いも為替相場に影響を及ぼし、米国ニューヨーク債券市場ではイベントリスクの警戒感もあって米国長期金利が更に低下し、午前2時頃には米国長期金利は一時4.163%付近になったため、債券利回りの金利差トレードの影響もあって、午前2時52分頃にはドルは円相場で一時156円25銭付近と156円台前半に下落していた。
ただし、米国長期金利の低下を受けては、前述の米国ダウ工業株 (DJIA) と米国S&P500種株価指数 (S&P500) が反発してプラス圏に転じたほか、米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ) も下げ幅を縮小したことでは、午前3時41分頃にドルも円相場で一時156円49銭付近に下げ幅を縮小して、午前4時の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の米国政策金利と声明の発表のイベントに向けた。
今朝未明の午前4時には、国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) が米国政策金利を発表し、市場予想で優勢であった通りに、これまでの3.75〜4.00%から3.50〜3.75%への0.25%の米国小幅利下げを決定したことを受けては、90%近い小幅利下げ予想値に対し10%超えの一部の金利据え置き予想もあったため、発表時の午前4時0分の1分間の値動きの中でドルは円相場で一時156円47銭付近から156円21銭付近に急落したほか、午前4時11分頃には一時156円18銭付近に下落した。
この下落の原因は、FOMCの米国政策金利決定発表の声明と同時に公開された米国経済・政策金利見通し (SEP / Summary of Economic Projections) のドット・チャート (Dot chart / Dot plot / ドット・プロットとも呼ぶ) で、来年2026年と2027年の各1回の米国追加利下げの見通しが前回から維持されており、中立金利の指標となる米国長期金利の見通しも3.0%で据え置かれていたことに加えて、「準備預金残高が十分な水準まで減少したと判断し、準備金を恒常的に十分な水準に維持するため、必要に応じて短期国債の購入を開始する」とあったことから、米国債券購入に絡む債券価格上昇に伴う利回り低下が警戒された米国債購入が起き始めて米国長期金利に低下圧がかかったことが影響を及ぼしていた。
しかし、今回のFOMCでの多数決での米国小幅利下げの決定には3票の反対票が入っており、ハト派の米国大幅利下げ支持の反対1票が前回に続き第二次ドナルド・トランプ米国政権のスティーブン・ミラン理事から入ったことは市場の想定範囲内であったが、残りはインフレ警戒のタカ派寄りの米国金利維持の支持2票で米国シカゴ連邦準備銀行 (連銀) のオースタン・グールズビー総裁と米国カンザスシティー連銀のジェフリー・シュミッド総裁であったことでは、米国でFOMCメンバーの賛成9名に対して反対が3名も出たことはおよそ6年ぶりであったことではややタカ派寄りとの受け止めによるドルの買い戻しも混ざり、その後の午前4時29分頃にはドルは円相場で一時156円49銭付近に反発していた。
午前4時30分頃からFOMC終了後の定例記者会見のライブ中継が始まり、米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のジェローム・パウエル議長の要人発言では、米国における雇用最大化と物価安定のFRBの二大責務のリスクバランスについて、「米国のインフレ率は依然として目標値よりもやや高い」との発言もあったものの、「米国雇用市場の下振れリスクは、最近高まっている様だ」とより警戒感を示し、「来年の米国政策金利の見通しなどは、あくまで目安であって確定はしていない」と、追加利下げについては、「データ重視で、会合毎に決める」という中道姿勢を強調したことでは、午前4時50分頃にドルは円相場で一時156円66銭付近と、156円台後半に買い戻された時間があった。
しかし、記者会見の質疑応答が進むにつれて、市場の一部で期待されていたほどのタカ派発言は出なかったほか、今回のタカ派寄りの米国政策金利の据え置き支持の反対2票を入れていた高官達を含めて、「利上げを基本的なシナリオに入れている人は現時点では誰もいない」と、ややハト派寄りの発言もあったことや、「1月の次回の会合までにより多くのデータが得られるだろう」と様子見の中道的姿勢が続き、市場の一部で燻っていたタカ派発言への期待感が後退したほか、今後の政策判断において経済指標を見極める姿勢を示したため、先ほどのドル売りの原因となった米国債購入方針の発表に絡む米国債券価格上昇時の米国長期金利低下が市場で意識された米国債買いが入って米国債券価格上昇と利回り低下が起きたため、午前5時14 分頃にはドルは円相場で一時155円80銭付近と150円台に下落し、この日の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
会見終了後の午前5時32分頃には、米国債買いが続いたことから、米国債券価格上昇時の利回り低下により、米国長期金利は一時4.141%付近に低下し、債券利回りの金利差トレードのドル売りが入っていたが、米国長期金利低下を受けた金利警戒感の緩和では、米国ニューヨーク株式市場では米国主要株価三指数が揃って反発上昇してプラス圏の終値をつけたため、株価上昇時のリスク選好のリスクオン (Risk-on) で低リスク通貨の円が売られたことは対ドルの円相場の抵抗となったため、今朝6時46分頃にはドルは円相場で一時156円10銭付近と、156円台に反発して下げ幅を縮小していた。
なお、米国経済の見通しには楽観的な見解があったことに加えて、午前4時に発表されていた最新米国経指標の11月米国月次財政収支も、前回−2844億ドルと市場予想の−2050億ドルに対し−1733億ドルと市場予想以上に赤字額が改善されていたことでは、米国債券価格上昇後の安全資産の米国債売りもやや混ざったが、前日比では米国長期金利は低下し、債券利回りの日米金利差が縮小していたことでは円高ドル安のニューヨーク終値に向けた。
このため、昨夜22時頃から今朝7時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の値動きは、円の安値でドルの高値の156円72銭付近から、円の高値でドルの安値の155円80銭付近の値幅約92銭で、今朝7時頃のニューヨーク終値は156円2銭付近と、前営業日同時刻の156円88銭付近の前ニューヨーク終値比で約86銭の円高ドル安をつけた。
今朝早朝のアジア・オセアニア市場では、3会合連続となった米国小幅利下げと今朝の米国長期金利低下を受けて、今朝8時44分頃にドルは円相場で一時155円63銭付近と再び155円台に下落していたため、続いて今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時155円76銭付近であった。
なお、日本市場の開場前の今朝8時50分に日本の最新経済指標の発表があったが、10〜12月第4四半期日本法人企業景気予測調査の大企業全産業業況判断指数 (BSI / Business Survey Index) は、前回の4.7から4.9に上昇し、大企業製造業業況判断指数 (BSI) も前回の3.8から4.7に上昇していた。
日本市場が始まると、今朝9時55分の仲値決済で日本企業の輸入実需や準備金などの円売りドル買い需要があったことでは、今朝9時57分頃にドルは円相場で一時155円89銭付近に反発した。
しかし、その後には輸出企業の円買いドル売りも入ったほか、今朝未明の米国小幅利下げ決定の発表時に米国債の購入方針が示されたことは債券利回りの金利低下圧となることもあり、今日の日本市場時間の時間外米国債券取引でも米国長期金利の低下が続き、正午12時45分頃の一時4.121%付近に向けた更なる低下を見せたため、債券利回りの日米金利差縮小を受けた円買いドル売りと、来週12月18〜19日の日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) 金融施策決定会合における利上げ予想の影響もあり、今朝11時31分頃にはドルは円相場で一時155円49銭付近と今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
また、今朝の東京株式市場ではプラス圏から始まった今日の日経平均株価が反落し、マイナス圏に転じたことも株価リスク回避のリスクオフによる国内第一安全資産の低リスク通貨の円買いに影響を及ぼしていたが、ランチタイム明けの昼過ぎに午後の部が始まった頃の下げ幅を縮小し始めたことでは、市場高値後の低リスク通貨の円の利益確定売りや持ち高調整のドルの買い戻しが入ったほか、国内債券市場の20年物の日本国債入札の影響の波及で新発10年物の日本国債の利回りが指標の国内長期金利が低下した一方で、米国債には債券価格上昇後の売りが入り米国長期金利は午後15時19分頃に一時4.130%付近に下げ幅を縮小したため、債券利回りの金利差トレードの影響もあり、午後15時26分頃にドルは円相場で一時156円17銭付近と、今日の日本市場における円の安値でドルの高値を記録した。
ただし、今日の日経平均株価は昼頃の一時の下げ幅は縮小したものの、午後15時30分に5万148円82銭の終値をつけて前日比453円98銭安の-0.90%で大引けしており、株価下落時の低リスク通貨の円買いの影響はやや残っていた。
夕方からの欧州市場と英国ロンドン外国為替市場参入の影響もあり、欧州ユーロが対ドルで上昇した外貨影響の波及は対ドル円相場でもドルの下落圧となったため、ドルは円相場で再び下落した。
このため、今日17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は156円3銭付近で、昨日17時の156円67銭付近の前東京終値比では約64銭の円高ドル安になった。
今夜この後の米国市場では、最新米国経済指標の発表予定や米国債入札予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜22時30分に前週分米国新規失業保険申請件数と前週分米国失業保険継続受給者数と、同時刻に発表が延期されていた9月米国貿易収支の発表もあり、深夜24時に9月米国卸売売上高と、27時には米国30年債入札などを控えている。
また、世界の株式市場と債券市場と金や原油先物などを含むコモディティ (商品先物) 市場などの為替相場への影響と、ウクライナ情勢や中東などの世界情勢と、世界政治経済のニュースやドナルド・トランプ米国大統領や高市早苗首相などを含めた要人発言などのファンダメンタルズ分析は、最新経済指標データやテクニカル分析と共に世界のFXトレーダー達の値動き予想材料になっている。
一方、欧州ユーロは、今日17時の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は182円49銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の182円44銭付近の前東京終値比で約5銭の円安ユーロ高であった。
主な要因は、来週12月18日の欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会で欧州金利据え置き予想が市場で優勢であることでは欧州ユーロが買われやすかったが、今日の日経平均株価が反落した株価リスク回避のリスクオフでは低リスク通貨の円買いも入りやすかった時間があったことなどからユーロ円は小幅域まで円が買い戻された東京終値になったほか、英国ポンドは小幅な円高ポンド安の終値になった。
そのため、英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は208円63銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の208円71銭付近の前東京終値比では約8銭の円高ポンド安であった、ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.1695ドル付近と、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の1.1645ドル付近の前東京終値比で約0.50セントのユーロ高ドル安であった。
主な要因は、米国小幅利下げ決定と米国債券購入方針を受けた米国長期金利低下によるドル売りが影響を及ぼしたほか、来週の欧州中央銀行 (ECB) 理事会では欧州金利据え置き予想が優勢であることからユーロドルでは欧州ユーロが上昇していた。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2025月12月11日の日本時間(JST / Japan Standard Time)の21時15分(チャート画像の時間帯は英国冬時間 (GMT / Greenwich Mean Time / JST-9) の英国ロンドン外国為替市場時間の12時15分頃) の人気のクロス円を中心とした為替レートは下表の通りである。なお、米国市場も2025年11月2日から米国冬時間 (EST / Eastern Standard Time / GMT-5 / JST-14) になっており、欧米のサマータイム終了後の日本時間との時差調整があったことには注意が必要である。
| 通貨ペア | JST 21:15の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00前東京終値比 |
| ドル/円 | 155.63 〜 155.64 | −1.03 (円高) |
| ユーロ/円 | 182.35 〜 182.36 | −0.08 (円高) |
| ユーロ/ドル | 1.1715 〜 1.1717 | +0.0072 (ドル安) |
| 英ポンド/円 | 208.37 〜 208.43 | −0.28 (円高) |
| スイスフラン/円 | 195.44 〜 195.50 | +0.91 (円安) |
| 豪ドル/円 | 103.61 〜 103.65 | −0.50 (円高) |
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