FXニュース:米中閣僚級通商交渉続く
2025年6月10日
東西FXニュース – 2025年06月10日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米消費者期待インフレ減
- 米国長期金利上昇幅縮小
- 週内には日米関税交渉も
- 日銀総裁2%に少し距離
- 米ハイテク関連株価上昇
- 日経平均株価高値引け
今日2025年6月10日火曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の高値でドルの安値の144円40銭付近から、円の安値でドルの高値の145円29銭付近の値幅約89銭で、今日17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は144円70銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の144円12銭付近の前東京終値比で約58銭の円安ドル高であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) マーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の欧州市場と英国ロンドン外国為替市場では、先週末の米国雇用統計発表後の高値のドルの利益確定売りや持ち高調整が進み、週末のドナルド・トランプ大統領の米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のジェローム・パウエル議長に対する1%の利下げ要求の政治圧への警戒感などの影響で、安全資産の米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が昨朝の一時4.520%付近から昨夜の一時4.481%付近に低下し、債券利回りの日米金利差縮小を受けた円買いドル売りと、昨夜に英国ロンドンで2回目の米中閣僚級通商交渉が開催されるイベントリスクのドルの持ち高調整や様子見の買い控えなどの影響もあって、昨夜18時13分頃にドルは円相場で一時143円97銭付近に反落していた。
また、昨日は日本政府の石破茂首相が午後の参院決算委員会の質疑応答で、「日本は金利上昇がトレンドとなる段階に突入している」と発言していたことなども、政治的利下げ圧のある米国と政治的利上げ支持のある日本との対照的な日米の金融政策の方向性の違いが市場で意識され、夕方の米国長期金利低下時の対ドルの円の買い戻しに影響を与えていた。
欧州市場でも、先日の欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) のクリスティーヌ・ラガルド総裁の「欧州利下げサイクルの終了が近い」というタカ派寄りの発言に続き、 他のECB理事会メンバー達が同調する発言を続けていたが、この日もスロバキア中央銀行のピーター・カジミール総裁が、「現状を見る限り、欧州利下げサイクルはほぼ終了していると思う」と発言した影響もあり、米国長期金利低下時のドル売りで欧州ユーロも買い戻された外貨影響の対ドル円相場への波及もあった。
しかし、一時143円台の日通しの安値後のドルには買い戻しが入り始めたことに続き、アメリカ合衆国国家経済会議 (NEC / National Economic Council) のケビン・ハセット委員長が今回の米中通商交渉について、「確実な進展を期待している」、「目的は互いの真剣さを確認し、握手を交わすこと」と発言し、また、「中国は米国が必要とする鉱物資源を開放すると見込んでいる」ことや、「中国との協議順調なら、米国は輸出規制解除」との発言に関する観測報道も伝わったことから、関税交渉および中国のレアアース (Rare earth elements / 希土類) 問題などの米中通商交渉への市場期待感が高まってドルは円相場で反発し、欧州市場と英国ロンドン外国為替市場の午後にあたる昨夜21時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時144円49銭付近の始値と144円台に戻した。
昨夜21時頃の米国市場では、米国長期金利は一時4.510%付近と再び一時4.5%台に上昇し、昨夜22時25分頃には米中通商交渉への期待感による安全資産の米国10年債売りの影響もあって債券価格低下に伴う利回り上昇が続き、米国長期金利が一時4.516%付近に上昇したため、債券利回りの日米金利差拡大を受けた円売りドル買いにより、ドルは円相場で一時144円77銭付近と、米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
米国ニューヨーク株式市場では、米国主要株価三指数が米中通商交渉への期待感から揃ってプラス圏から始まったが、金利に敏感な米国ダウ工業株 (DJIA / Dow Jones Industrial Average) と米国S&P 500種株価指数 (S&P500 / Standard and Poor’s 500 index) が米国長期金利上昇を受けて市場前半に一時反落したことでは、株価下落時のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) の低リスク通貨の円買いが起き、対ドルの円相場は反発した。
ただし、米国主要株価三指数の中でも国際的なハイテク株の比率が高い米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ / National Association of Securities Dealers Automated Quotations Composite) は、先週末にドナルド・トランプ米国大統領がドローン (Drone) の機能強化や飛行タクシーのエア・タクシー (Air Taxi) などの新技術を進める大統領令に署名したことから、エア・タクシー開発の米国ベンチャー企業のジョビー・アビエーション (JOBY / Joby Aviation) が前営業日比で一時14%の高騰に向けたほか、関連のハイテク株なども上昇した影響でプラス圏の推移を続けたことは抵抗になっていた。
しかし、昨夜23時に発表された最新米国経済指標の4月米国卸売売上高が前回の0.6%と前回上方修正の0.8%と市場予想の0.3%を下回る0.1%に低下したことに続き、深夜24時頃に発表された5月の米国ニューヨーク連邦準備銀行の米国消費者調査の予想物価上昇の期待インフレ率が、1年先は前月の3.6%から3.2%に低下し、3年先も前回の3.2%から3.0%に低下しており、5年先も前回よりも低下したことでは、市場予想ほど米国関税政策が米国消費者予想の期待インフレ率に上昇圧を与えなかったことが意識され、発表後の深夜24時40分頃に米国長期金利が一時4.485%付近と4.5%台から4.4%台に低下したため、債券利回りの日米金利差縮小時の円買いドル売りが入り、深夜24時49分頃にドルは円相場で一時144円35銭付近と、米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
米国ニューヨーク株式市場では、米国長期金利低下を受けて、米国主要株価三指数の米国ダウ工業株 (DJIA / Dow Jones Industrial Average) と米国S&P 500種株価指数 (S&P500 / Standard and Poor’s 500 index) が米国長期金利上昇を受けて反発し、プラス圏になったことでは、株価上昇時のリスク選好のリスクオン (Risk-on) で市場高値後の低リスク通貨の円が売られたほか、米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ / National Association of Securities Dealers Automated Quotations Composite) はプラス圏の推移を続けていたことでは、安全資産の米国債買いの後の売り抵抗も入った。
米国ニューヨーク債券市場では、安全資産の米国債買いの影響で午前4時10分頃に一時4.475%付近にまで低下していた米国長期金利は、米国株式市場終盤の午前4時35分頃から50分頃にかけて一時4.491%付近に下げ幅を縮小したが、米国ダウ工業株 (DJIA) が終盤に反落して前営業日比で小幅安の終値をつけると米国長期金利も再低下し、 米国S&P 500種株価指数 (S&P500) と米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ) は前営業日比で高値の終値をつけたものの小幅高になったため、今朝早朝のニューヨーク終値の頃の米国長期金利は一時4.478%付近と4.4%台に低下していた。
昨夜に英国ロンドン中心部にある英国外務省が管理のランカスターハウスで行われていたという米中通商交渉については、翌日の今夜この後にも継続することになったが、会談後にスコット・ベッセント米国財務長官は、「良い話し合いができた」と前向きな発言をしており、ハワード・ラトニック米国商務長官も「実りある協議ができた」と述べたほか、ドナルド・トランプ米国大統領も、「中国との協議は継続中。近く協議に加わる予定だ」などと発言しており、今夜この後の米中通商交渉継続への様子見が再開した。
このため、昨夜21時頃から今朝6時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の144円77銭付近から、円の安値でドルの高値の144円35銭付近までの値幅約42銭で、今朝6時頃のニューヨーク終値は144円57銭付近と、前営業日同時刻の144円85銭付近の前ニューヨーク終値比で約28銭の円高ドル安をつけていた。
今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時144円57銭付近の始値であったが、今日は10日で日本の貿易企業の決済日が集中しやすい5と10がつく「五十日(ごとおび / ゴトーび)」であったことから、今朝9時55分の日本市場の仲値決済に向けては、日本企業の輸入実需の円売りドル買いよりも国内輸出企業の円買いドル売りが優勢で、今朝9時30分頃にドルは円相場で一時144円40銭付近と、今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
しかし、今朝のニュースでは、米国ブルームバーグ通信 (Bloomberg) などが、ドナルド・トランプ米国大統領が、昨夜の閣僚級の米中通商交渉について、「(中国は) 簡単な相手ではない」が、「良い報告しか届いてない」と前向きに話したとの報道があったほか、今夜この後も続く米中通商交渉では、米国側が中国に対しレアアース輸出規制撤廃を求めていることに対し、中国側も米国に輸出規制撤廃を求めているとの観測報道もあり、米中通商交渉進展への市場期待感が高まり、ドルは円相場で買い戻されて反発上昇を始めた。
その一方で、日本政府の赤沢亮正経済財政再生相が、先週末に米国政府のスコット・ベッセント米国財務長官達と閣僚級の日米関税協議をしたものの貿易協定合意には至らず、また日米関税交渉材料の一つとして日米間での対中パッケージを用意していたことなどが知られていたが、米中通商交渉で直接の合意に至る場合には日米間の交渉材料が減り難航する可能性が警戒される中で、赤沢亮正経済財政再生相は、週内に米国ワシントンを訪れて6回目となる日米関税交渉に向けて調整中というニュースがあった。
今朝は日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の植田和男総裁の発言も話題になり、「利下げで経済を追加的に刺激する余地は限られている」とした上で、「基調的物価上昇率はまだ2%に少し距離がある。2%に近づく確度が高まれば、引き続き利上げ」と、これまでの日銀の追加利上げ方向維持を繰り返す発言をしていたが、「まだ2%に少し距離がある」という今回の発言では次回の追加利上げを急がない姿勢が意識され、市場では円売りドル買いが勢いを増し、発言後の今朝11時7分頃にドルは円相場で一時145円29銭付近に上昇し、今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
また、今日の東京株式市場では、日銀総裁の発言を受けた金利上昇警戒感の緩和と、今朝早朝までの米国株式市場におけるハイテク関連株上昇の日本関連株への影響などがあり、今日の日経平均株価がプラス圏に上昇して始まった後に上昇幅を拡大していた時間があったことも、株価影響のリスク選好のリスクオンの低リスク通貨の円売りに影響を与えていた。
ただし、昼頃により大幅な上昇を見せていた日経平均株価が、利益確定や持ち高調整の影響もあって上昇幅を縮小し始めたほか、中国市場では中国ファーウェイ創業者の任氏が、「中国は米国の半導体規制を心配する必要はない。様々な手段を通じてチップの供給制約を克服することができるし、中国には活用可能なオープンソースソフトウェア(OSS / Open Source Software) がたくさんあるからだ」と中華人民日報紙のインタビューで語るなど、米中通商交渉進展への懸念も混じったことなどでは中国株や人民元などが売られており、リスク回避のリスクオフによる低リスク通貨の買い戻しの抵抗も入った。
しかし、今日の日経平均株価は一時の大幅な上昇幅は縮小したものの、プラス圏の推移を続けており、午後15時30分に3万8211円51銭の終値をつけ、前営業日比122円94銭高の+0.32%で大引けしたことでは、ドルは円相場で下げ止まって反発した。
午後からの欧州市場と夕方からの英国ロンドン外国為替市場の参入では、午後15時に発表された最新英国経済指標の5月英国失業保険申請件数が前回の0.52万件と前回修正の−2.12万件に対し3.31万件に悪化し、5月英国失業率も前回の4.5%が前回4.4%に改善の修正がされた後に今回が4.5%に戻すなど弱い英国雇用指標となり、今日の日本市場の時間外の米国債券取引で今朝は一時4.492%付近に反発していた米国長期金利が、夕方には安全資産の米国債買いで一時4.452%付近に低下した影響もあり、今夜も続く米中通商交渉の様子見もあってドルの反発幅はやや限られていたが、英国ポンド売りでドルや欧州ユーロが買われた外貨影響が対ドル円相場にも波及していた。
このため、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は144円70銭付近で、昨夜17時の144円12銭付近の前東京終値比では約58銭の円安ドル高になった。
今夜この後の米国市場では、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) 高官はブラックアウト期間入りしており発言予定はないものの、米中通商交渉の行方が注目されているほか、米国債の入札予定があり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールでは、26時に米国3年債入札を控えている。
また、世界の株式市場や債券市場やコモディティ市場などの為替相場の影響と、各国との米国通商交渉なども含めた政治経済の影響に加えて、世界情勢と要人発言などのファンダメンタル分析向けのニュースも、最新経済指標データやテクニカル分析と共に世界のFXトレーダー達の値動き予想材料になっている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は164円88銭付近で、昨日の夜17時の164円61銭付近の前東京終値比で約27銭の円安ユーロ高であった。
主な要因は、日経平均株価上昇を受けた株価上昇時のリスク選好のリスクオンで、低リスク通貨の円がドルや欧州ユーロなどに対して売られやすかった。
ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.1395ドル付近と、昨夜17時の1.1423ドル付近の前東京終値比で約0.28セントのユーロ安ドル高であった。
主な要因は、米中通商交渉期待感が影響を及ぼしていたが、その後の様子見のドルの買い控えでは、欧州市場では小幅なユーロ高ドル安に市場反転も見せている。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は194円99銭付近と、昨日17時の195円50銭付近の前東京終値比で約51銭の円高ポンド安だった。
主な要因は、先週末の最新米国雇用統計が上振れしたことに対し、今日の午後に発表された前述の5月英国雇用統計の弱い指標が影響を及ぼし、英国ポンドが売られて下落した。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2025年6月10日の日本時間(JST / Japan Standard Time)の20時16分(チャート画像の時間帯は英国夏時間 (BST / British Summer Time / JST-8) の英国ロンドン外国為替市場時間の12時16分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。なお、米国市場は2025年3月9日から11月2日まで米国夏時間 (DST / Daylight Saving Time / JST-13) に日本との時差が1時間短縮に調整されており、欧州英国市場も2025年3月30日から10月26日まで英国夏時間のサマータイム (BST / British Summer Time / JST-8) に時差調整されたことには注意が必要である。
通貨ペア | JST 20:16の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 144.50 〜 144.51 | +0.38 (円安) |
ユーロ/円 | 164.52 〜 164.53 | +0.94 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.1422 〜 1.1424 | +0.0011 (ドル安) |
英ポンド/円 | 195.11 〜 195.17 | +0.72 (円安) |
スイスフラン/円 | 175.35 〜 175.41 | +0.61 (円安) |
豪ドル/円 | 93.50 〜 93.54 | +0.32 (円安) |
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