FXニュース:米関税影響景気減速警戒
2025年6月05日
東西FXニュース – 2025年06月05日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米ADP雇用報告下振れ
- 米ISM非製造業景況悪化
- 米長期金利低下4.3%台
- 米連銀経済報告不確実性
- 欧ECB政策金利発表控え
今日2025年6月5日木曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の高値でドルの安値の142円57銭付近から、円の安値でドルの高値の143円40銭付近の値幅約83銭で、今日17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は143円32銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の144円10銭付近の前東京終値比で約78銭の円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) マーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の欧州市場と英国ロンドン外国為替市場の後半にあたる昨夜21時頃からの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時144円27銭付近の始値で、この時間と最新米国経済指標発表前の昨夜21時14分頃が昨夜の米国市場の円の安値でドルの高値となった。
昨夜21時15分に雇用関連の最新米国重要経済指標である5月米国ADP (Automatic Data Processing) 雇用統計の前月比が発表されたが、前回6.2万人が前回6.0万人に下方修正されたほか、市場予想の11.2万人を大幅に下回る3.7万人に下振れし、2023年3月以来の低水準となり、前日の4月米国雇用動態調査 (JOLTS / Job Openings and Labor Turnover Survey) 求人件数上振れ後の市場期待感に反して米国雇用市場の軟化の可能性を示したことから、物価安定と雇用最大化の二大責務を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の年内の追加利下げ予想が意識され、米国長期金利が急落を始めて、債券利回りの日米金利差縮小を受けた円買いドル売りが起き、ドルは欧州ユーロなどの他の主要通貨にも売られて大幅な下落を始めた。
また、ドナルド・トランプ米国大統領が、「米国ADP雇用統計データが出た! “遅すぎる”パウエル議長は今すぐ利下げしなければならない。欧州は既に9回も利下げしているのに、信じられない!」と自己運営のソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS / Social Networking Service) のトゥルース・ソーシャル (Truth Social) で発言した影響もあり、これまでにも政治圧の米国利下げ要求後にドル信任感低下などによるドル売りが起きたことがあったが、この日にもドナルド・トランプ米国大統領が米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のジェローム・パウエル議長への米国利下げ要求を再開していた。
さらに、昨夜の米国ニュースでは、第二次ドナルド・トランプ政権になってからの人員および資源的な制約により、米国労働省経済統計局 (BLS / Bureau of Labor Statistics) が全米地域で米国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) の収集サンプルを削減していることが明らかになっていると報じられており、全体的なデータに与える影響は最小限に留めることを目標としてはいるが、4月米国CPIのデータ収集が米国ネブラスカ州とユタ州の各1都市で停止されたほか、米国ニューヨーク州バッファローでも6月米国CPIデータ収集が停止されるなど、サンプル削減と収集停止により地域別や品目別のインフレデータの品質への懸念がある中で、今週最も注目度が高い明日の最新米国重要経済指標の米国雇用統計も集計しているが、データ重視の米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のジェローム・パウエル議長が先日にデータ分析の新ツールを求めている発言をしていたが、インフレ指標や雇用指標に第二次ドナルド・トランプ政権の影響による統計漏れなどの数値が出る懸念や、更なる政治圧などがかかるのではないかという警戒感なども意識されていた。
ただし、昨夜22時45分に発表された景気関連の最新米国経済指標の5月米国サービス部門購買担当者景気指数 (PMI / Purchasing Managers’ Index) の改定値は前回の速報値と市場予想の52.3を上回る53.7に上方修正され、5月米国総合購買担当者景気指数 (PMI) の改定値も前回と市場予想の52.1を上回る53.0に上方修正されていたことは一時抵抗となった。
しかし、昨夜23時に発表されたより重要度が高い景気関連の最新米国重要経済指標の5月米国サプライマネジメント協会 (ISM / Institute for Supply Management) 非製造業景況指数が前回の51.6と市場予想の52.0を下回る49.9に下振れし、好景気と不景気を分ける景気ボーダーラインの50を下回る不景気寄りの重要景気指標になり、2024年6月以来初の米国景気縮小を示したことで、今年4月に発動後の米国関税政策に起因する米国景気減速懸念が高まり、先述の米国雇用市場の軟化以降のドル売りトレンドが勢いを増し、ドルは円相場や他の主要通貨に対しても急落を続け、午前1時58分頃にドルは円相場で一時142円60銭付近と、142円台の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
米国ニューヨーク債券市場では、昨夜21時10分頃の米国重要経済指標の発表前には一時4.458%付近と4.4%台だった安全資産の米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が大幅に低下し、発表後の午前1時55分頃には一時4.354%付近と4.3%台に急落しており、債券利回りを受けた金利差トレードで日米金利差縮小時の円買いドル売りや主要通貨に対するドル売りが起きており、ドルは円相場だけでなく欧州ユーロなどの他の主要通貨に対しても一時全面安となり、主要通貨全般に対するドルインデックス (ドル指数) も一時98.67付近に低下していた。
また、昨夜22時45分頃には米国と隣接する北米カナダの中央銀行にあたるカナダ銀行 (BoC / Bank of Canada) の政策金利と声明の発表があり、市場予想で優勢であった通りの従来の2.75%の加政策金利の据え置きであったが、市場の一部では0.25%の加追加利下げ予想もあったこともありカナダドルがドルに対しても買われており、その後の昨夜23時30分頃からBoCのティフ・マックレム総裁の記者会見での発言があったが、米国関税政策の不確実性と警戒感が市場で意識されたこともあり、カナダドルも対ドルで市場高値に向けていた外貨影響の波及もあった。
午前3時には、米国地区連銀経済報告のベージュブック (Beige Book) が公表されたが、「12の米国連邦準備銀行地区の報告によると、経済活動は前回からわずかに低下」しており、「一部地区では関税の影響を受けると予想される品目への支出が増加したと報告」され、「全体的な見通しは、前回報告と変わらず、わずかに悲観的で不確実性が高いまま」と米国関税政策の経済への影響の不確実性が強調されていた。
一方、米国ニューヨーク株式市場では、米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の今年年内の米国追加利下げ予想が意識される中で、米国長期金利低下を受けた金利警戒感緩和を受けては、米国主要株価三指数の米国ダウ工業株 (DJIA / Dow Jones Industrial Average) と米国S&P 500種株価指数 (S&P500 / Standard and Poor’s 500 index) と米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ / National Association of Securities Dealers Automated Quotations Composite) が一時揃ってプラス圏の推移をしていたことでは、株価上昇時のリスク選好のリスクオン (Risk-on) で低リスク通貨の円売りとドルの買い戻しが入る抵抗になったが、米国雇用市場軟化と米国景気減速懸念が意識されていた中では、早期の利益確定売りや持ち高調整などで米国ダウ工業株 (DJIA) が反落して前日比で小幅安の終値に向けたが、米国S&P 500種株価指数 (S&P500) と米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ) は前日比で小幅高に留まった株価影響では、市場安値後のドルには終盤に向かう中での買い戻しもやや入っていた。
とはいえ、安全資産の米国債券価格上昇に伴う利回り低下の影響が続き、今朝早朝のニューヨーク終値の頃にも米国長期金利は一時4.359%付近と4.3%台に低下したままであったことなどでは、債券利回りを受けた日米金利差縮小時の円買いドル売りや主要通貨に対するドル売りの影響は残り、ドルは円相場で142円台後半に留まり、前ニューヨーク終値比で大幅な円高ドル安が進行していた。
このため、昨夜21時頃から今朝6時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の144円27銭付近から、円の高値でドルの安値の142円60銭付近までの値幅約1円67銭で、今朝6時頃のニューヨーク終値は142円77銭付近と、前営業日同時刻の143円97銭付近の前ニューヨーク終値比で約1円20銭の大幅な円高ドル安をつけた。
今朝早朝のアジア・オセアニア市場でも、昨夜の最新米国重要経済指標を受けたドル売りが入り、米国関税政策の先行き不透明感が漂う中で、今朝8時21分頃にドルは低リスク通貨の円に対し一時142円53銭付近に下落し、今朝早朝までの米国市場での安値を下抜けた。
ただし、今朝8時30分には日本の最新経済指標の発表があり、厚生労働省の4月日本毎月勤労統計調査の現金給与総額の前年同月比は、前回2.1%は前回2.3%に上昇修正されたものの、市場予想の2.6%を下回る2.3%と前回修正後の横ばいになり、物価変動の影響を除く実質賃金の前年同月比では1.8%減少と4カ月連続でマイナスとなったと報じられたことでは、米国関税政策の不透明感もあり様子見の金利据え置きをしていた日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の金利維持予想が意識されたことでは円売りドル買いも入り、今朝8時52分頃にはドルは円相場で一時142円83銭付近に反発した。
今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時142円73銭付近の始値であったが、今朝の東京株式市場では日経平均株価がマイナス圏から始まったことでは、日経平均株価下落時のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) で国内第一安全資産の低リスク通貨の円買いドル売りが入り、今朝10時4分と10時7分頃に対ドル円相場は一時142円57銭付近と、今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
日本企業のドル資金調達などで市場安値後のドルに買い戻しが入り始めたことでは、ドルは円相場で下げ幅を縮小したが、今日の日経平均株価はマイナス圏の推移を続けたまま、午後15時30分頃の3万7554円49銭の前日比で192円96銭安の-0.51%の終値に向けていたことは抵抗要因となっていた。
しかし、日本市場の時間外の米国債券取引では、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が反発して一時4.381%付近に向けて下げ幅を縮小していたことに対し、国内債券市場では今日の正午12時35分の財務省の30年物の日本国債の入札結果が低調だったことを受けて、その後の安値の日本国債買い入れの反動で30年物の超長期債の利回りが急低下すると、新発10年物の日本国債の利回りが指標となる国内長期金利も前日比で低下したことでは、債券利回りの日米金利差を受けた円売りドル買いが入り、午後からの欧州市場と英国ロンドン外国為替市場の参入後にはドルは円相場で大幅な下落幅を小幅域に縮小し、夕方16時58分頃に対ドル円相場は一時143円39〜40銭付近と、今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
また、午後のニュースでは、日本政府の赤沢亮正経済財政再生相が日米関税交渉のための閣僚協議に出発し、今回の米国政府との日米関税交渉では、中国が輸出規制した希土類のレアアース (Rare earth elements) や米国から調達停止の液化天然ガス(LNG / Liquefied Natural Gas)などの国際供給網のサプライチェーン(Supply chain)の連携などの対中協力パッケージを提示するという観測報道の影響もあった。
このため、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は143円32銭付近で、昨夜17時の144円10銭付近の前東京終値比では約78銭の円高ドル安になった。
なお、欧州市場では、今夜この後の21時15分頃に欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会の欧州政策金利と金融政策声明の発表イベントを控えており、続いて、今夜21時45分頃からクリスティーヌ・ラガルド総裁の要人発言も予定されている。
今夜この後の米国市場でも、最新米国経済指標の発表予定と次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) 高官達の発言予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜20時30分に5月米国チャレンジャー人員削減数、今夜21時30分に4月米国貿易収支と1〜3月第1四半期米国非農業部門労働生産性の改定値と米国単位労働費用の改定値と前週分米国新規失業保険申請件数と前週分米国失業保険継続受給者数が同時発表され、25時頃から次回のFOMC投票権を持つFRBのアドリアナ・クーグラー理事の発言予定と、26時30分頃から同じく次回のFOMC投票権を持つFRB高官の米国カンザスシティ連邦準備銀行のジェフリー・シュミッド総裁の発言予定などを控える。
さらに、世界の株式市場や債券市場やコモディティ市場などの為替相場への影響や、各国の米国関税交渉なども含めた政治経済の影響に加えて、世界情勢と要人発言などのファンダメンタル分析向けのニュースは、テクニカル分析と共に世界のFXトレーダー達の値動き予想材料になっている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は163円58銭付近で、昨夜17時の164円6銭付近の前東京終値比で約48銭の円高ユーロ安であった。
主な要因は、今日の日経平均株価下落を受けたリスク回避のリスクオフなどで低リスク通貨の円買いが欧州ユーロや英国ポンドなどの主要通貨に対して起きたことに対し、今夜この後の欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会の欧州政策金利発表イベント前のイベントリスクでは欧州ユーロの買い控えが混ざっていた。
そのため、欧州ユーロの影響を受けやすい英国ポンドも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は194円39銭付近と、昨日の夜17時の194円93銭付近の前東京終値比で約54銭の円高ポンド安だった。
ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.1414ドル付近と、昨夜17時の1.1386ドル付近の前東京終値比では約0.28セントのユーロ高ドル安であった。
主な要因は、昨夜の最新米国重要経済指標の影響などで、今年年内の米国利下げ予想が上昇するなど、米国長期金利低下時のドル売りの影響が他の主要通貨にも観測されていた。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2025年6月5日の日本時間(JST / Japan Standard Time)の19時50分(チャート画像の時間帯は英国夏時間 (BST / British Summer Time / JST-8) の英国ロンドン外国為替市場時間の11時50分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。なお、米国市場は2025年3月9日から11月2日まで米国夏時間 (DST / Daylight Saving Time / JST-13) に日本との時差が1時間短縮に調整されており、欧州英国市場も2025年3月30日から10月26日まで英国夏時間のサマータイム (BST / British Summer Time / JST-8) に時差調整されたことには注意が必要である。
通貨ペア | JST 19:50の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 143.10 〜 143.11 | −1.00 (円高) |
ユーロ/円 | 163.46 〜 163.48 | −0.60 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.1422 〜 1.1424 | +0.0036 (ドル安) |
英ポンド/円 | 194.19 〜 194.25 | −0.74 (円高) |
スイスフラン/円 | 174.65 〜 174.71 | −0.37 (円高) |
豪ドル/円 | 93.18 〜 93.22 | +0.07 (円安) |
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