FXニュース:米卸売物価指数予想以下
2025年5月16日
東西FXニュース – 2025年05月16日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米小売売上高は強弱混合
- 米長期金利低下ダウ上昇
- 国内総生産マイナス成長
- 日物価関連指標高止まり
- 日銀追加利上げ予想継続
- 日経平均株価終値小幅安
- 来週の日米貿易交渉控え
今日2025年5月16日金曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の安値でドルの高値の145円62銭付近から、円の高値でドルの安値の144円92銭付近の値幅約70銭で、今日17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は145円29銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の145円97銭付近の前東京終値比で約68銭の円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) マーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の欧州市場と英国ロンドン外国為替市場ではドルの買い戻しが入っていたため、昨夜21時頃からの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時146円8銭付近の始値であった。
米国市場では昨夜21時30分に最新米国重要経済指標の発表があり、4月米国小売売上高は、前回の1.4%が前回1.7%に上方修正された上で市場予想の0.0%を上回る0.1%であったことや、同時発表だった前週分米国新規失業保険申請件数は前回の22.8万件が前回22.9万件に修正されたものと横ばいに近かったが、前週分米国失業保険継続受給者数は前回の187.9万人と前回修正の187.2万人と市場予想の189.0万人よりも堅調な188.1万人に改善されており、5月米国ニューヨーク連銀製造業景気指数は前回の−8.1と市場予想の−8.0を下回る−9.2と市場予想以下ではあったが、5月米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数は前回の−26.4と市場予想の−11.2に対し−4.0と市場予想より大幅に改善し、昨夜21時50分頃には安全資産の米国債が売られて米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.527%付近に上昇し、債券利回りの日米金利差拡大時の円売りドル買いでドルは円相場で一時146円25銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
また、昨夜21時40分頃から、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のジェローム・パウエル議長の発言があり、米国金融政策決定のための指針となる枠組みについて、過去の低金利・低インフレ時代に設定された現在の枠組みを過去のデータを振り返りながら、主要部分の変更を検討していることを示唆し、 「幅広い経済環境や展開に対応できる強固な合意文書を目指していく」と述べたことでは期待感も漂った。
2020年にも米国連邦準備制度理事会 (FRB) は金融政策運営方針で2つのポイントの見直しをしており、一つは米国インフレ率が目標の2%を持続的に下回った後には、「一定期間」はそれをやや上回るのを容認するというので、もう一つは潜在的な米国インフレ圧を抑えるために米国失業率が低い状態では先回りして予防的な米国利上げを実施することはしないというアプローチで、これは最大雇用化の目標の「未達」を緩和するための仕組みであった。
「目標未達についての文言を、再考することが適切になるということを示唆している。先週の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) では、平均インフレ目標について同様の見解が示された」と、米国連邦準備制度理事会 (FRB) の二大責務である「物価安定と雇用最大化」についての目標未達に対する見方や、インフレ目標へのアプローチなどの再考を示唆しており、今後の米国関税政策の経済影響などの不確実性を踏まえた金融政策の対応が意識されていた。
しかし、最新米国重要景気指標でもある4月米国小売売上高では、自動車を除くコアが前回の0.5%は前回0.8%に上方修正されたが市場予想の0.3%を下回る0.1%に低下するなど、実際は強弱混合であったことに加えて、同時発表されていた4月米国卸売 (生産者) 物価指数 (PPI / Producer Price Index) が、前月比は前回の−0.4%が前回0.0%に上方修正されたが市場予想の0.2%を下回る−0.5%に低下しており、前年同月比も前回の2.7%と前回上方修正の3.4%と市場予想の2.5%を下回る2.4%で、食品とエネルギー除く4月米国PPIコア指数も前月比は前回の−-0.1%と前回上方修正の0.4%と市場予想の0.3%を下振れするマイナス圏の−0.4%に鈍化し、前年同月比は前回の3.3%は前回4.0%に上方修正されたものの市場予想通りの3.1%であったことでは、市場予想よりもインフレ鈍化の指標を受けた米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が反落し、ドルも円相場で反落を始めた。
4月米国卸売 (生産者) 物価指数 (PPI / Producer Price Index) ではサービス価格の下振れが大きく、低下率が2020年4月以来になったことが話題になり、先日の4月米国消費者物価指数も市場予想以下であったことや、続いて発表された最新米国経済指標である昨夜22時15分の4月米国鉱工業生産の前月比も前回の−0.3%と市場予想の0.1%を下回る0.0%で、4月米国設備稼働率も前回と市場予想の77.8%以下の77.7%となり、昨夜23時の5月米国NAHB (National Association of Home Builders / 全米住宅建設業者協会) 住宅市場指数も前回と市場予想の40以下の34と弱く、3月米国企業在庫も前回と市場予想の0.2%以下の0.1%と市場予想以下の指標となり、米国ニューヨーク債券市場では安全資産の米国債買いの影響で、一時4.5%台だった米国長期金利が米国市場終盤の一時4.435%付近の4.4%台に向けた大幅な低下を見せたため、債券利回りを受けた日米金利差縮小時の円買いドル売りで円相場が反発上昇し、昨夜23時11分に対ドル円相場は一時145円41銭付近と、米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
一方、米国ニューヨーク株式市場では、米国長期金利低下を受けた金利警戒感の緩和では、米国主要株価三指数の中で金利に敏感な米国ダウ工業株 (DJIA / Dow Jones Industrial Average) が前日比のマイナス圏からプラス圏に上昇し、米国S&P 500種株価指数 (S&P500 / Standard and Poor’s 500 index) も連れ高の終値に向けたことでは、市場高値後の低リスク通貨の円売りでドルの買い戻しが入り、ドル円は一時146円台に戻したが、世界的なハイテク企業比率が高い米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ / National Association of Securities Dealers Automated Quotations Composite) は、米国アップル社 (Apple) の中国工場を米国関税回避でインドに移転する案に対してドナルド・トランプ米国大統領が「米国に工場を建ててくれ」と発言するなど、90日間の米中相互関税一時停止後の国際ビジネスへの不透明感や政治介入などへの警戒感も一部で燻り、一時反発後に反落して小幅安の終値に向けるなど強弱混合となったことでは、ドルは円相場で再145円台になった。
午前3時5分頃からは、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のマイケル・バー理事の発言があり、中小企業向けの講演で「私見では、米国経済と米国雇用は堅調に推移しており、インフレ率は目標の2%に向けて鈍化していくと思う」と発言した一方で、「米国関税政策の不確実性と、サプライチェーンの混乱が成長鈍化やインフレ圧の高まりにつながる恐れがある」との警告もしていた。
一方、午前4時には、南米のメキシコの中央銀行のメキシコ銀行 (Banco de México )の政策金利発表があり、これまでの9.00%から市場予想通り8.50%に利下げし、声明文で「今後も金融政策のスタンスを継続し、同様の規模の調整を検討する可能性がある」ことや「物価は利下げサイクル継続を許容」と、追加利下げ継続の可能性を示唆したことを受けては、メキシコペソが世界的に流動性の高いドルに対して売られた外貨影響が対ドル円相場に波及したが、産油国でもあるメキシコペソはこの日のWTI原油先物価格が一時4%以上も下落した影響もあり、低リスク通貨の円などの主要通貨に対しても売られて下落したことでは外貨影響は限定的となり、市場終盤に向けた米国長期金利の大幅な低下の影響が続き、前日同時刻比で円高ドル安のニューヨーク終値に向けていた。
このため、昨夜21時頃から今朝6時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の146円25銭付近から、円の高値でドルの安値の145円41銭付近の値幅約84銭で、今朝6時頃のニューヨーク終値は145円67銭付近と、前営業日同時刻の146円75銭付近の前ニューヨーク終値比で約1円8銭の大幅な円高ドル安をつけていた。
今朝早朝のアジア・オセアニア市場時間にあたる今朝8時50分には日本の最新重要経済指標の1〜3月第一四半期の日本実質国内総生産 (GDP / Gross Domestic Product) 速報値の発表があり、前期比は前回の0.6%と市場予想の−0.1%を下回る−0.2%のマイナス圏に低下し、年率換算も前回の2.2%と前回上方修正の2.4%と市場予想の−0.3%を下振れする−0.7%と、2024年第一四半期以来の4四半期ぶりのマイナス成長になったが、物価高による個人消費停滞などが原因とされたことでは、 物価関連の国内指標の高止まりを受けて日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の追加利上げ予想が意識されたため、今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時145円58銭付近の始値と、今朝早朝のニューヨーク終値時点よりも円高ドル安で始まり、今朝9時0分の1分間の値動きの中で瞬時記録した一時145円62銭付近が今日の日本市場の円の安値でドルの高値となり、今日の日本市場ではドルに対して円相場が上昇を続けた。
日本市場の今朝9時55分の仲値決済でも、来週の日米財務相会談を控えた為替協議の可能性への国内輸出企業の円安是正への警戒感が燻り続けた円買いドル売りが優勢で、昨夜の4月米国卸売 (生産者) 物価指数 (PPI / Producer Price Index) の鈍化を受けた米国長期金利の4.5%台から4.4%台への低下の影響による債券利回りの日米金利差縮小時の円買いドル売りも続き、米国経済の先行き不透明感への警戒感などもあって低リスク通貨の円が買われたほか、今日の東京株式市場では、今朝の日銀の追加利上げ予想への警戒感もあって日経平均株価が大幅な下落を見せていた時間も午前中にあったため、株価リスク回避のリスクオフ (Risk-off) でも国内第一安全資産の低リスク通貨の円が買われやすかった。
今日の日経平均株価は、午前中の一時大幅だった下落幅を午後に縮小したものの、午後15時30分頃に3万7753円72銭の終値をつけて、前日比1円79銭安小幅安で大引けした。
午後の株の買い戻しの一因は、日銀の中でもハト派として知られている中村豊明審議委員が、今日の昼の13時頃から西日本政経懇話会で講演し、金融政策について、「当面は現状維持が適当。米国関税で賃上げモメンタムが低下する可能性」と発言したことでは、国内金利上昇への警戒感が一時緩和したことも影響を及ぼしたが、元々ハト派で知られていたことや来月末に任期満了となることから、円相場への影響は限定的であった。
また、台湾行政院副院長が、「米国との貿易協議には、為替は含まれていない」と発言したことは、時間帯が近い世界市場でのドルの買い戻しの抵抗の一因となっていたが、日本市場では日銀と日本政府が過去に円安是正の為替介入などを実施していた影響もあり、日米双方での円安是正の為替協議への警戒感は根強く燻り続けていた。
午後からの欧州市場に続き、夕方からの英国ロンドン外国為替市場が参入を始める頃には、時間外の米国債券取引で世界的な安全資産の米国債買いの影響が続いており、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.404%付近に低下していたため、債券利回りを受けた日米金利差縮小時の円買いドル売りや、米国長期金利低下時の主要通貨に対するドル売りの影響があり、夕方16時10分頃にドルは円相場で一時144円92銭付近と、一時144円台の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
一時144円台の市場高値後の円には利益確定売りや持ち高調整の抵抗も入り、ドル円は一時145円台に戻したが、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は145円29銭付近で、昨夜17時の145円97銭付近の前東京終値比では約68銭の円高ドル安になった。
今夜この後の米国市場では、最新米国経済指標の発表予定があり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜21時30分に4月米国住宅着工件数と4月米国建設許可件数と4月米国輸入物価指数と4月米国輸出物価指数が同時発表され、続いて今夜23時に5月米国ミシガン大学消費者態度指数の速報値と、29時に3月対米証券投資などの発表を控えている。
また、世界の株式市場と債券市場や商品先物市場などの為替相場への影響と、世界各国の米国関税交渉の行方と世界経済と政治影響に加えて、世界情勢と要人発言などのファンダメンタル分析向けのニュースは、テクニカル分析と共に世界のFXトレーダー達の値動き予想材料になっている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は162円81銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の163円38銭付近の前東京終値比では約57銭の円高ユーロ安であった。
主な要因は、日本市場では来週の日米財務相会談を控え、先日に加藤勝信財務相が為替問題の議論の可能性を示唆していたことへの警戒感が続いており、同時に物価関連指標の高止まりを受けて日銀の追加利上げ予想も燻り、日経平均株価下落時には低リスク通貨の円買いもあったため、ドルだけでなく欧州ユーロや英国ポンドなどの主要通貨に対しても円高の東京終値になった。
その影響から、英国ポンドも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は193円40銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の193円60銭付近の前東京終値比で約20銭の円高ポンド安だった。
ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.1207ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の1.1193ドル付近の前東京終値比で約0.14セントのユーロ高ドル安であった。
主な要因は、米国長期金利低下時の主要通貨に対するドル売りの影響があったことに加え、欧州追加利下げ継続予想が優勢であったことに対し、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 政策委員会メンバーのラトビア中央銀行のラトビア銀行 (Latvijas Banka) のマールティンシュ・カザークス総裁が、「あと数回」の欧州追加利下げはあるかもしれないとしたものの、欧州インフレ率が今年中に2%になるという基本シナリオが実現すれば欧州利下げは終点に近づいているとの見解を示し、世界の貿易についての状況が不透明なことを理由に挙げて、「欧州追加利下げを急ぐ必要はない」と、タカ派寄りの発言をしたニュースが今日は話題になっていた。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2025年5月16日の日本時間(JST / Japan Standard Time)の19時54分(チャート画像の時間帯は英国夏時間 (BST / British Summer Time / JST-8) の英国ロンドン外国為替市場時間の11時54分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。なお、米国市場は2025年3月9日から11月2日まで米国夏時間 (DST / Daylight Saving Time / JST-13) に日本との時差が1時間短縮に調整されており、欧州英国市場も2025年3月30日から10月26日まで英国夏時間のサマータイム (BST / British Summer Time / JST-8) に時差調整されたことには注意が必要である。
通貨ペア | JST 19:54の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 145.52 〜 145.54 | −0.45 (円高) |
ユーロ/円 | 162.94 〜 162.95 | −0.44 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.1195 〜 1.1197 | +0.0002 (ドル安) |
英ポンド/円 | 193.41 〜 193.47 | −0.19 (円高) |
スイスフラン/円 | 173.85 〜 173.91 | −0.27 (円高) |
豪ドル/円 | 93.42 〜 93.46 | −0.24 (円高) |
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