FXニュース:米高金利長期化予想が再燃

2024年5月08日
FXニュース:米高金利長期化予想が再燃

 

東西FXニュース – 2024年5月08日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米FRB高官が年内維持示唆
  • 金利差予想と為替介入警戒
  • 米財務長官介入牽制発言後
  • 日銀植田総裁円安注視発言
  • 日経平均株価が大幅に反落
  • 明日英金融政策委員会控え

今日2024年5月8日水曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの対ドル円相場の為替レートは、円の高値でドルの安値の154円69銭付近から、円の安値でドルの高値の155円36銭付近の値幅約67銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円の終値は155円34〜36銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の154円10〜12銭付近の前東京終値と比較すると約1円24銭の大幅な円安ドル高であった。

今日の為替相場の値動きの主な要因と、時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨日の連休明けの日本市場では先週末の米国政府のジャネット・イエレン財務長官の為替介入牽制発言を受けて一時は為替介入警戒感が緩和されたが、昨日の午後に経団連の十倉雅和会長が、歴史的な円安について「為替は日本の力を評価する一つの指標で、いくら何でも (ドル円が) 150円を超えるのは安すぎる。日本の経済を強くすることで、円高方向に是正されるのが望ましい」と発言し、先週の日本政府と日本銀行 (日銀 / BoJ / bank of Japan) の為替介入観測についても、「円高に振れたので、もし介入したのなら非常にいいタイミングだった」と、経済界からの円安是正圧力と介入支持が出た後に、「日銀の植田和男総裁が、午後に岸田文雄首相と意見交換するため官邸に入った。金融政策や最近の外国為替市場の動向などについて協議するとみられる」という夕方の国内ニュース報道が続いたため、為替介入への再警戒による日本市場終盤の円買いが入った影響では、昨夜17時の日本の東京外国為替市場の終値直後の昨夜17時6分頃の英国ロンドン外国為替市場で対ドル円相場は一時153円97銭付近にまで反発したが、昨夜の祝日連休明けの英国ロンドン外国為替市場では、低金利な円を利益確定で売り、高金利なドルを買う動きが優勢に転じた。

昨夜の英国市場では英国が祝日連休中だった前日6日の月曜日に、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) のリトアニア中銀のシムカス総裁が、「想定範囲内で全てが展開する場合には、将来的に数回の欧州の追加利下げがあるというのが私自身の考えだ。年内に3回の欧州利下げがあると予想している。4回目は確信できない」とハト派の発言をしていたことが連休明けの話題になっていたところに、欧州市場で昨日に発表された欧州ユーロ圏主要国ドイツの3月の独製造業新規受注指数の前月比がプラス圏からマイナス圏に転じたことに着目した欧州景気懸念も相まって、欧州の利下げの方が米国よりも時期的にも早くなり利下げ幅も大きくなる可能性から、欧州長期金利が低下し、欧州ユーロに対してもドルが買い戻され始めていたことも、対ドルの円相場でのドル上昇圧に影響が波及していた。

また、昨夜19時台頃から米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) 高官の米国ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁の発言がニュースになり始め、米国利下げを支持するためには「ディスインフレ (Disinflation) が順調に進んでいることを示すインフレ指標を、複数回確認する必要がある」とし、雇用市場も注視していくが著しく弱体化した場合のみ利下げが正当化される可能性があるとした上で、米国利上げへのハードルは高いものの可能性は排除せず、「金融政策の効果が表れるまで、予想よりも長く現状維持を続ける可能性が高い」とタカ派発言をしたほか、「おそらく、年内は金利据え置きの可能性が高い」とも発言し、先日の市場予想以下だった米国雇用統計でもまだ雇用市場の堅調さは保たれていることや、米国の根強い住宅インフレが要因となり、インフレ鈍化が停滞している要因を踏まえると、米国政策金利を現在の高金利のまま長期間据え置きする必要があるとの発言が話題になり、米国高金利長期化予想が再燃し、昨夜19時台にドルは円相場で一時154円63銭付近に上昇後にしばらく高止まりを見せていた時間があった。

欧州英国市場後半の昨夜21時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時154円52銭付近の始値であったが、米国ニューヨーク債券市場では、米国債買いが先行したため、債券価格上昇に伴う利回り低下の影響で米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が昨夜21時頃の一時4.477%付近の上昇後に反落して一時4.430%付近に向けて下げるという日米金利差縮小時の円買いドル売りを受けては、昨夜23時9分頃にドルは円相場で一時154円24銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。

しかし、先述の米国の高金利長期化予想を受けては、日米の政策金利の金利差は拡大したままの状態が続くという日米金利差予想では、先週末の米国政府のイエレン財務長官の為替介入牽制発言の影響も続き、円安ドル高トレンドが再び優勢となった。

米国ニューヨーク債券市場では、深夜0時55分頃には米国10年債の利回りは一時4.429%付近にまで低下したが、その後には債券価格上昇後の米国債の利益確定売りも入って反発を始めたほか、午前2時の米国2年債の入札後には、米国10年債の利回りも午前4時台の一時4.468%付近に向けて下げ幅を縮めたため、日米金利差トレードでもドルが買い戻された。

その米国長期金利の下げ幅縮小時の影響もあり、ドルは円相場で午前3時39〜40分と50〜51分と59分と午前4時5分頃に何回も高止まりする形で一時154円75銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。

また、決算報告シーズンの米国ニューヨーク株式市場では、米国主要株価三指数のうち米国ナズダック総合 (NASDAQ Composite) だけは小幅な反落を見せたものの、前日までに大幅に続伸後の米国ダウ工業化株30種 (Dow Jones Industrial Average) とS&P500種 (Standard and Poor’s 500) は小幅ながらも続伸していたことでも、ドルから低リスク通貨の円を買う市場需要は少なかった。

このため、昨夜21時頃から今朝6時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の154円24銭付近から、円の安値でドルの高値の154円75銭付近の値幅51銭の値動きで、今朝早朝のニューヨーク終値は154円69銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の153円92銭付近と比べて約77銭の円安ドル高をつけていた。

今朝9時頃から始まった今日の日本の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時154円77銭付近の始値で、今朝の日本市場の時間外の米国債券取引で米国長期金利が一時4.455%付近に低下した時間に利益確定と持ち高調整が先行したことでは今朝9時13〜14分頃に一時154円69銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録したが、先述の欧米市場のトレンドを受け継いだ米国高金利長期化予想により米国長期金利は反発上昇に転じ、日米金利差予想の円売りドル買いの影響もあり、ドルは円相場で再び上昇を始めた。

また、昨日の朝9時55分の仲値決済ではゴールデンウィークの大型連休明けの日本企業の輸入実需の円売りドル買いが間に合わなかったケースが多かったが、今朝の仲値決済では日本企業の輸入実需の円売りドル買いが入り始めたことでも、対ドルの円相場が下落した。

ただし、今朝は日本銀行 (日銀 / BoJ) の植田和男総裁が衆院財務金融委員会に出席し、円安進行について、「為替レートは経済・物価に影響を与えるもので、動向次第で金融政策運営上の対応が必要」で、「最近の円安は十分注視している」と、昨日の経済界の歴史的な円安への懸念に配慮を示す発言をしたことでは、持ち高調整の円買いがやや見られたほか、金融政策対応については、将来的な日本の金利上昇への警戒感が高まるため、今日の東京株式市場では、前日は大幅に上昇していた日経平均株価が大幅な反落を見せたため、国内第一安全資産の低リスク通貨の円が買われる抵抗も入った。

なお、今朝の衆院財務金融委員会には、日本政府の鈴木俊一財務相も出席しており、円安について、「引き続き、市場動向をしっかりと注視し、万全の対応を取りたい」と口先介入を継続したほか、為替介入観測については実施実績についてはノーコメントであったが、為替介入については、「守るべきラインがあるわけではない。あくまで変動に着目する」と発言しており、特定の価格ではなく急速な価格変動性のボラティリティ (Volatility) が為替介入の引き金となるという市場の観測を強めていたことでは、再びじわじわとした円売りでドルが買われてドル円は155円台に向かった。

今日の日本市場の時間外米国債取引で米国長期金利は一時4.481%付近に上昇したため、ドルは円相場で155円台に乗せて上昇したが、午後からの欧州市場と英国ロンドン外国為替市場の参入を受けて、米国長期金利が再上昇を始めたことで日米金利差を受けた円売りドル買いが進み、午後16時1分頃と東京終値に向かう17時0分の値動きの中でも、ドルは円相場で一時155円36銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。

このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は155円34〜36銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の154円10〜12銭付近と比較すると約1円24銭の大幅な円安ドル高になった。

今夜この後の米国市場では、利回りが米国長期金利の指標になる米国10年債の入札予定と最新米国経済指標発表予定と米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達の発言予定があり、日本時間の経済カレンダーのスケジュール予定は、今夜20時に米国MBA住宅ローン申請指数、今夜23時に3月の米国卸売売上高、今夜23時30分に週間の米国原油在庫、深夜24時頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) のジェファーソン副議長の発言予定、24時45分頃から米国ボストン連銀のコリンズ総裁の発言予定、26時に米国10年債の入札予定、26時30分頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つクック理事の発言予定などがある。

一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は166円79〜80銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の165円86〜91銭付近と比べると約93銭の円安ユーロ高であった。

主な要因は、ドイツの独10年物国債の利回りが指標となる欧州長期金利も今日の日本市場の午後の欧州市場の参入時には前日比で上昇して始まっており、日欧金利差トレードで低金利通貨の円が売られたほか、為替介入観測後に一時上昇した円が利益確定や持ち高調整で売られたことで欧州ユーロが買い戻されていた。

なお、今日の午後16時30分には、欧州ユーロ圏ではなくスウェーデンクローナの独自通貨を持つが、欧州連合 (EU / European Union) の加盟国ではある北欧スウェーデンの中央銀行のスウェーデン国立銀行 (Sveriges Riksbank) が、市場予想通りの利下げを決定し、更に今年2回の追加利下げも示唆したことから、欧州ユーロなどの主要通貨に対するスウェーデンクローナ(SEK)売りが進んだが、欧州周辺国の方が米国よりも利下げに積極的であるという市場の受け止め方が広がっていたことでは、欧州ユーロもドルに対して売られていた。

そのため、ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.0735〜1.0737ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の1.0763〜1.0765ドル付近と比べると約0.28セントのユーロ安ドル高であった。

また、今日の午後15時に発表された欧州ユーロ圏主要国ドイツの最新経済指標の3月の独鉱工業生産も、前月比が前回プラス圏の2.1%と前回下方修正の1.7%と市場予想の-0.6%に対し、市場予想ほどではないものの前回のプラス圏からマイナス圏に転じた-0.4%に悪化し、前年同月比は前回の-4.9%と前回下方修正の-5.3%と市場予想の-3.6%に対し-3.3%と改善されたものの、マイナス圏に留まっていた。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は193円71〜77銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の193円15〜21銭付近と比べると約56銭の円安ポンド高であった。

主な要因は、欧州地域にありながらも米国と文化的な関係が強い英国債の利回りが米国債に連れやすくなっており、日英金利差トレードの円売りの英国ポンドの買い戻しがあった。

また、明日9日の夜20時には、英国中央銀行のイングランド銀行 (英中銀 / BoE / Bank of England) が英国の新政策金利と金融政策を決定する英中銀金融政策委員会 (MPC / Monetary Policy Committee) のイベントを控えており、現在の英国インフレ率は3.2%付近といずれとして目標である2%を上回り続けていることなどから、市場では現在5.25%の英国政策金利が据え置きされる市場予想が優勢であるために、低金利通貨の円との日英金利差が意識されていた。

今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年5月8日の日本時間(JST)20時0分(チャート画像の時間帯は、3月最終日曜日から英国夏時間 (BST / British Summer Time) に1時間時差変更され、日本から時差8時間遅れになった英国ロンドン外国為替市場の英国夏時間 (BST / GMT+1 / JST-8) の12時0分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。(なお、米国市場でも3月第二日曜日から米国夏時間 (EDT / Eastern Daylight Time / GMT-4 / JST-13) になっている。)

通貨ペア JST 20:00の為替レート 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比
ドル/円 155.38 〜 155.40 +1.28 (円安)
ユーロ/円 167.04 〜 167.06 +1.18 (円安)
ユーロ/ドル 1.0747 〜 1.0751 −0.0016 (ドル高)
英ポンド/円 194.17 〜 194.23 +1.02 (円安)
スイスフラン/円 170.92 〜 170.98 +0.96 (円安)
豪ドル/円 102.07 〜 102.11 +0.36 (円安)


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