FXニュース:中東情勢懸念の安全資産買い
2024年1月12日東西FXニュース – 2024年1月12日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米CPIは市場予想以上に上昇
- 今夜の米PPI控えた様子見も
- 米新規失業保険申請件数減少
- 米国債入札堅調で利回り低下
- 欧米長期金利低下時の円買い
- 米英軍が紅海船舶襲撃に報復
今日2024年1月12日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値の145円40銭前後から円の高値でドルの安値の144円84銭前後の値幅約56銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円の終値は145円14~15銭付近と、昨日17時の145円41~42銭付近の前東京終値比で約27銭の円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨夜22時頃からの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時145円39銭付近の始値であったが、昨夜22時30分に発表された最新米国重要経済指標の先月12月の米国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) の前月比が前回の0.1%と市場予想の0.2%を上回る0.3%の上昇率で、前年同月比も前回の3.1%と市場予想の3.2%を超える3.4%に上昇した米国インフレ指標を受けては、インフレ抑制のために米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) は追加利上げの可能性を排除していないことなどから、米国長期金利が一時4.07%台付近に向けて急上昇し、日米金利差拡大による円売りドル買いや主要通貨に対してもドルが一時高騰したため、昨夜23時6分頃にドルは円相場で一時146円41銭付近の米国市場および日通しの円の安値でドルの高値を記録した。
ただし、天候条件などで価格変動の激しい生鮮食品を除いた物価の基調を測る米国CPIコア指数は、前月比が前回と市場予想通りの0.3%の横ばいで、前年同月比も前回の4.0%と市場予想の3.8%に対し3.9%と、市場予想ほどではないものの前回よりも基調的な米国インフレ鈍化が続いているということでは、今年に遅かれ早かれ米国利下げが開始されるという市場予想は継続し、今年3月の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) での早期の米国利下げ予想は減退後の現在も70%の確定値は下回っているものの、0.25%の小幅利下げ予想値が68.1%台にやや上昇しており、それに対する0.50%の一部の大幅利下げ予想も3.3%であることに対して追加利上げ予想は0.0%で、金利据え置き予想は28.6%との市場予想値をフェドウォッチ (FedWatch) が示しているほか、今夜この後の翌米国市場でも米国生産者 (卸売) 物価指数 (PPI / Producer Price Index) の発表予定を控えていることから、市場高値後のドルには利益確定売りの抵抗が入り始めた。
とはいえ、同時発表だった米国雇用市場関連の最新経済指標の前週分の米国新規失業保険申請件数が、前回の20.2万件と前回修正の20.3万件と市場予想の21.0万件に対し20.2万件に改善され、前週分の米国失業保険継続受給者数も前回の185.5万人と前回修正の186.8万人と市場予想の187.1万人に対し183.4万人と堅調であったことでは、賃金インフレ圧もやや意識されていたことでは、ドルはしばらく146円台の高値圏で推移した。
しかし、午前2時40分頃からは米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米国リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言があり、今回の12月の米国消費者物価指数 (CPI) は、「ほぼ予想通り」で、「今年利下げ開始の可能性を検討しているFRB当局者にとっては、米国のインフレの行方を明確にするほどのものではなかった」と言及したことでは、米国長期金利が上げ幅を縮め始めて、主要通貨に対するドルの利益確定売りが始まり、ドル円も146円台から145円台に戻し始めた。
一方で、バーキン総裁は、米国の商品価格低下に対するサービス・インフレは依然として高いことを指摘し、「商品とサービスの間のインフレにはまだギャップがあり、もし前月比の改善がより広範なものになれば、インフレの道筋はさらに安心できるものになる」とも言及したことでは、日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) のインフレ下方修正予想が浮上していた日本円に対しては、ドルは再び146円台にタッチする反発も混ざった。
原因は、同じく米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米国クリーブランド連銀のメスター総裁は、「12月の米国消費者物価指数 (CPI) の結果は、我々の仕事がまだ終わっていないことを示唆している」ことや、「3月は米国利下げ開始時期としては、恐らく早過ぎる」と、市場の早期米国利下げ観測を牽制していた。
しかし、3時に米国30年債入札があり、中東情勢懸念の安全資産の米国債買いの影響があり、堅調な米国債入札の結果となったために、米国債需給に対する市場の懸念が緩和され、他の種類の米国債も幅広く買われたことから、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利3.96%台付近に向けて低下したため、日米金利差縮小時の円買いドル売りや、欧州ユーロや英国ポンドなどの主要通貨に対するドル売りに波及も起きてドルが反落し、午前6時36〜37分頃にドルは円相場で一時145円26銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
午前4時に発表された最新米国経済指標の先月12月の米国月次財政収支が、前回の-3140億ドルと市場予想の-653億ドルに対し-1294億ドルと、赤字額の改善幅が市場予想に届かなかったこともドル売りの一因となった。
また、米国ニューヨーク株式市場でも、今夜の一部の主要企業決算報告予定を控えていた時に市場予想を上回る米国インフレ指標が出てきたことへの警戒感などもあり、米国主要株価三指数では米国ダウ工業株 (Dow Jones Industrial Average) とナズダック平均 (NASDAQ Composite) は小幅高で終値をつけたものの、S&P500 (Standard and Poor’s 500) は小幅安と、米国主要株価が軒並み小幅な値動きになったことでも、安全資産でもある米国債の入札結果や中東情勢警戒などを受けた米国債買いによる債券価格の上昇に便乗して利益を狙う値動きや、米国長期金利上昇後の急落時に低リスク通貨でもある円が日米金利差縮小時に対ドルで上昇したボラティリティの高い値動きへの便乗投資も見られていた。
このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の146円41銭前後から円の高値でドルの安値の145円26銭前後の値動きで、今朝7時前の6時55分頃のニューヨーク終値は145円29銭付近と前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の145円76銭付近と比べて約47銭の円高ドル安をつけていた。
今朝早朝のアジア・オセアニア市場でも、米国長期金利の低下を受けた主要通貨に対するドル売りが入ったため、今朝9時頃からの今日の日本の東京外国為替市場の対ドル円相場は、一時145円10銭付近から始まった。
日本市場では、市場予想以上だった昨夜の米国インフレ指標を受けた円売りドル買いが先行したため、今朝の日本企業の輸入実需もあった仲値決済後の午前10時11分頃にドルは円相場で一時145円40銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
また、今日の日本市場での時間外米国債券市場では一時低下後の米国債の利回りが一時3.99%台付近に向けて戻したことも、円相場でのドル買いに影響を及ぼしていた。
しかし、中東情勢警戒が続いていたが、先日の紅海での米国軍事作戦示唆の原油高はその後のサウジアラビアの原油価格値下げの価格調整で一時収まったものの、先日から紅海やアデン湾でイスラエル支援物資運搬の米国船や旧英国領のインドの商船など含む商船を標的にしたイエメンの武装組織フーシ派に対し、イランの支援を受けてパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスの支持でも知られていたフーシ派への自衛的報復として、米軍と英国軍がイエメンのフーシ派を標的とした空爆を実施した中東情勢のニュースが再び話題になり、緊張感の高まりにより、欧米の安全資産の国債が買われた影響で、一時反発後の米国債利回りやドイツなどの欧州国債の利回りが低下したため、日米欧金利差縮小により低リスク通貨の円が買われる値動きが入り始め、ドルは円相場で今日の昼の12時9分頃に一時144円84銭付近の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
ただし、日本市場では東京株式市場で今日も日経平均株価がバブル崩壊後の高値を続伸し、午後15時15分には日経平均株価は3万5577円11銭の終値と、前日比で527円25銭高の大幅高で大引けしたことでは、リスク選好のリスクオンで低リスク通貨の円売りが入り、ドルは円相場で一時145円台前半に下げ幅を縮小していた。
しかし、日本時間の午後が時差で朝の欧州英国市場の参入では、米国や英国政府の軍事行動の声明を受けた中東情勢警戒による米国債買いで米国長期金利が低下し、今夜この後の米国生産者物価指数 (PPI) の発表イベントを控えたイベントリスクのドルが売られたほか、ドイツ国債などが買われた影響で欧州長期金利も低下したため、ドルやユーロなどの主要通貨に対する日米欧金利差縮小時の円相場の上昇が起きた。
このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は145円14~15銭付近で、昨夜17時の145円41~42銭付近の前東京終値比で約27銭の円高ドル安になった。
今夜この後にも、最新米国経済指標発表や米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の発言予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜22時30分に注目度の高い先月12月の米国生産者 (卸売) 物価指数 (PPI) 発表のイベントがあり、続いて深夜24時頃から米国ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の発言予定などがある。
また、今夜の米国ニューヨーク株式市場でも、21時頃から大手金融の米国JPモルガン・チェース決算、米国バンク・オブ・アメリカ決算、23時頃から米国シティグループ決算などが予定されている。
一方、今日の欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は159円16〜21銭付近と、昨夜17時の159円62〜64銭付近の前東京終値比で約48銭の円高ユーロ安であった。
主な要因は、中東情勢懸念の影響や欧州景気懸念もあり、安全資産のドイツ国債などが買われて利回りが低下し、日欧金利差縮小時の低リスク通貨の円買いで円相場が上昇した。
ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0966〜1.0968ドル付近で、昨夜17時の1.0977〜1.0979ドル付近の前東京終値比で約0.11セントのユーロ安ドル高であった。
主な要因は、中東情勢警戒の安全資産は米国債だけでなく、欧州ユーロに対しては世界的に流動性の高いドルも安全資産であり、欧州長期金利の低下時には低リスク通貨の円に対してもユーロが売られたほか、今日の午後16時45分に発表された欧州ユーロ圏のフランスの12月の仏消費者物価指数 (CPI) の改定値は、前回と市場予想一致の横ばいで、米国ではCPIが上昇した一方で欧州横ばいが意識された。
一方で、フランスの最新経済指標の11月の仏消費支出の前月比は、前回の-0.9%と市場予想の-0.1%に対し0.7%に改善されたことでは、小幅な値動きとなった。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は185円15〜21銭付近で、昨夜17時の185円53〜59銭付近の前東京終値比で約38銭の円高ポンド安であった。
主な要因は、今日の午後16時に発表された最新英国重要経済指標の11月の英国月次国内総生産 (GDP / Gross Domestic Product) の前月比は前回の-0.3%と市場予想の0.2%を上回る0.3%であったが、同時発表の11月の英国鉱工業生産は、前月比では市場予想通りに前月から改善されたものの、前年同月比ではマイナス圏に転じており、強弱入り混じったほか、中東情勢を受けては米国軍と英国軍の空爆による戦争関与が警戒されており、低リスク通貨の円が小幅に上昇した東京終値となった。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年1月12日の日本時間(JST)20時50分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で9時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の冬時間 (GMT / JST-9) の11時50分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 20:50の為替レート | 昨日の日本時間JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 145.26 〜 145.27 | -0.15 (円高) |
ユーロ/円 | 159.02 〜 159.04 | -0.60 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.0947 〜 1.0948 | -0.0030 (ドル高) |
英ポンド/円 | 184.86 〜 184.92 | -0.67 (円高) |
スイスフラン/円 | 170.08 〜 170.14 | -0.88 (円高) |
豪ドル/円 | 97.01 〜 97.05 | -0.63 (円高) |
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