FXニュース:米FRBのセントルイス連銀ブラード総裁がタカ派発言

2022年11月18日

 

東西FXニュース – 2022年11月18日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米利上げペース減速予想の後退で米長期金利が再上昇
  • 日銀黒田総裁の金融緩和継続で日米金利差拡大予想
  • 英スナク新政権が大規模増税と削減の財政改革案を発表

今日2022年11月18日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値の140円50銭前後から高値の139円63銭前後の値動き幅約87銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は139円83〜85銭付近で、前日同時刻の前東京終値と比較すると約51銭の円安ドル高であった。

主な原因は、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場で、米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米セントルイス連銀のブラード総裁のタカ派発言があり、米利上げ減速予想が減退して米長期金利が上昇し、円安要因であった日米金利差拡大予想のドル買い円売りが再燃した影響が出た。

昨日の東西FXニュースでも予告していた日本時間の昨夜22時から、米連邦準備制度理事会 (FRB) の米セントルイス連銀のブラード総裁が米国のケンタッキー州での講演で、「現在の米国政策金利は、まだ充分にインフレ抑制的な水準には達していない。」と発言し、講演後も米ブルームバーグ等の記者団に、「私は以前、4.75〜5%という見解を示していた。だが、今日のこの分析に基づけば、5〜5.25%ということになろう。それは最低水準だ。今日の分析によれば、その水準なら少なくとも(充分にインフレ抑制的な)水準に達する。」と、一段の利上げの必要性を語ったタカ派発言が、米国市場での大きなニュースとなった。

この発言を受けて、先週の10月の米消費者物価指数(CPI)の発表以来は世界市場で優勢になっていた米利上げ減速予想が後退し、米利上げ継続が長期化するとの市場予想の浮上により、昨夜の米国ニューヨーク債権市場では米10年債の利回りが指標となる米長期金利が前日の終値の3.69%付近から一時3.80%に上昇し、米長期金利の上昇と連動する様に日米金利差拡大によるドル買い円売りが優勢になり、一時140円72銭付近のドルの米国市場の高値を記録した。

同時に、昨夜の米国ニューヨーク株式市場では、再び企業などへの貸付ローン金利の上昇警戒によるリスク回避の株売りの反応が出て、米株価下落時の安全資産でドルが買われたことも、米国市場での主要通貨に対するドル高に影響を与えた。

ただし、続いての24時40分からイベントでの発言が予定されていた米FRB高官の米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、「米政策金利をどこまで引き上げなければならないかは、まだ分からない」と発言しており、米連邦公開市場委員会 (FOMC) 参加メンバーの全員一致のタカ派の見解ではないことはやや意識され、市場高値のドルには利益確定売りも入った。

しかし、それまでには先週の米消費者物価指数(CPI)の発表後に米利上げ減速予想によるドル売り円買いの持ち高調整が進んでおり、昨夜の欧州英国市場では一時138円88銭付近のドル安を記録していたが、その欧州英国市場の午後から始まったこの米国市場でのニュースでの米FRB高官の新情報による持ち高調整や利益確定では、ドル買い円売り傾向が優勢だった。

そのため、今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場のドル円相場の終値は140円15~25銭付近で、前日同時刻比で約65銭の円安ドル高であった。

その市場トレンドを引き継いで始まった今日の日本の東京外国為替市場でも、米連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米セントルイス連銀のブラード総裁のタカ派発言を受けた日米金利差拡大予想により、今朝は140円49〜50銭付近の日本市場の高値圏からの開場になった。

ただし、今朝は日本の最新経済指標の10月の全国消費者物価指数 (CPI) が発表されており、前年同月比が前回の3.0%と市場予想の3.6%に対して3.7%であった。生鮮食料品・エネルギーを除く前年同月比でも前回の1.8%と市場予想の2.4%に対して2.5%で、前年同月比では前回の3.0%と市場予想の3.5%に対し3.6%であった。日本では1982年2月以来のインフレ率とも言われるが、日本はインフレでも利上げ予想はないので国内市場の反応は薄かった。

しかし、海外FX市場からは、2桁のインフレ率の国もある米欧英のインフレ目標の2%に、現在でも一番近い主要通貨は低リスク通貨でもある日本円であるために、やや円買いの注文が市場高値圏のドルの利益確定売りなどでは入っていた。

今朝10時の日本市場の仲値決済に向けては、今月は20日が日曜日のために、その前の平日にあたる今日が実質的な日本の貿易企業の決済日が集中しやすい5と10のつく日の五十日で、輸入実需の円売りドル買いと輸出企業のドル売り円買いが交錯した。

しかし、今朝は北朝鮮から大陸間弾道ミサイル (ICBM) 級のミサイルが発射されて、北海道の渡島大島の西にあたる日本の排他的経済水域 (EEZ) 内に落下したというニュースを受けて、日本では緊急の有事に備えた地政学的リスク回避のための低リスク通貨の円買いが起き、円相場が一時上昇し、ドル円は140円台から139円台になった。

昼頃のニュースでは、今日も日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁は、午前中に行われた衆院財務金融委員会で、「金融緩和を継続することが適当」であると以前と同じ発言を続けており、円安要因である日銀の金利抑制姿勢を継続する構えであることが意識され、再び日米金利差拡大予想での円売りドル買いも入り、ドル円は再び140円台に達したが、140円台になるとドルの利益確定や為替介入警戒の持ち高調整などが入り、再び139円台後半にも戻していた。

午後からの欧州英国市場の参入では、米長期金利に連動する様な形での値動きを見せていた。

そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は139円83〜85銭付近で、前日17時の前東京終値比では約51銭の円安ドル高になった。

今夜その後の欧州英国市場では、一時低下していた米長期金利の再上昇により、再びドル円は18時前後に140円台に上昇したが、140円台では利益確定が入りやすく、再び139円台後半に戻す値動きも出ていた。

今夜この後にも最新の米国経済指標や米連邦準備理事会 (FRB) 関係者の発言などが予定されており、世界のFXトレーダー達が注目している。今夜の発表スケジュールは、日本時間で22時40分から米ボストン連銀のコリンズ総裁の発言や、深夜24時に10月の米中古住宅販売件数や米景気先行指標総合指数などが予定されている。

一方、今日の欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は145円10~13銭付近で、前日同時刻の前東京終値比で約31銭の円安ユーロ高であった。主要通貨のドルに対する円安が、ユーロに対しても円安として波及した。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0375~1.0376ドル付近で、前日同時刻比で約0.17セントのユーロ安ドル高だった。

原因は、前述の米連邦準備理事会 (FRB) の米セントルイス連銀のブラード総裁のタカ派発言を受けて、米長期金利上昇時のドル買いに加えて、先に利上げを始めた米国の利上げが長期化する場合には欧米金利差の縮小が弱まる予想もあるために、円だけでなくユーロなどの主要通貨に対してもドル高として影響を与えていた。

しかし、今夜その後の欧州市場では、17時半から欧州中央銀行 (ECB) のラガルド総裁がドイツのフランクフルトの講演で、「欧州ユーロ圏のリセッション(景気後退)リスクは高まったが、景気悪化だけでは物価上昇を抑えるには不充分」であることを指摘し、「欧州中央銀行 (ECB) の創設以来の最速ペースで利上げ実施をして来たが、欧州ユーロ圏のインフレ率は2%の目標の5倍の10%を超えているために、来月には更なる追加利上げを実施し、欧州政策金利を現在の1.5%から2%又はそれ以上の高水準に利上げする見込み」などについての発言をしたことではユーロも買いも混ざり始め、ユーロドルは横ばいに近い値動きも見せている。

今日の英国ポンドは、今夜17時の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は166円56〜62銭付近で、前日同時刻の前東京終値比で約34銭の円安ポンド高であった。

ただし、昨夜の英国ロンドン外国為替市場では、英国のスナク新政権が大規模増税と歳出削減による総額約550億ポンドの財政改革計画案を発表した。ハント英財務相が増税と歳出削減を含んだ英財政再建策を発表した後から、既に11.1%を超えている記録的な英国のインフレの中での増税と緊縮財政で英景気悪化のリセッション(景気後退)懸念が強まり、市場では計画発表時の予測値にあった2023年の英実質経済成長率がマイナス1.4%であったことから、ポンド売りと世界的に流動性の高い安全資産のドル買いが優勢だった。

その昨夜の英国市場の後半から始まった今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場でも、英景気懸念のポンド売りとドル買いが続き、加えて前述の米連邦準備理事会 (FRB) の米セントルイス連銀のブラード総裁のタカ派発言による米長期金利上昇時のドル買いもあったために、ポンドドルは一時1.1764ドルの市場安値を記録していた。

しかし、今日の日本市場時間に発表された最新の英国経済指標の11月のGFK消費者信頼感調査は、前回の-47と市場予想の-46に対して-44で、午後16時に発表された英国の10月の小売売上高の前年同月比も、前回の-6.9%〜-6.8%と市場予想の-6.5%に対して-6.1%で、マイナスの下げ幅がやや改善されていたことでは、高インフレ率の対策では英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) の利上げ継続予想もあり、ドルに対しての安値を記録後のポンドは買い戻されていき、円に対しては日英金利差拡大予想が優勢で、今日の日本市場では前日比で円安ポンド高になっていた。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年11月18日の日本時間(JST)20時45分(英国時間(GMT)11時45分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 20:45の為替レート 東京外国為替市場前日比
ドル/円 139.92 〜 139.93 +0.60 (円安)
ユーロ/円 145.00 〜 145.01 +0.21 (円安)
ユーロ/ドル 1.0364 〜 1.0366 -0.0028 (ドル高)
英ポンド/円 166.45 〜 166.51 +0.23 (円安)
スイスフラン/円 146.83 〜 146.89 -0.35 (円高)
豪ドル/円 93.89 〜 93.93 +0.16 (円安)


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