FXニュース:米FOMCと議長発言控え
2025年12月10日
東西FXニュース – 2025年12月10日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米JOLTS求人件数上振れ
- 欧英通貨に年初円安更新
- 米主要株価三指数は混合
- 日経平均株価反落小幅安
- 米長期金利4.2%台に上昇
今日2025年12月10日水曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の安値でドルの高値の156円94銭付近から、円の高値でドルの安値の156円56銭付近の値幅約38銭で、本日17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は156円67銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の156円20銭付近の前東京終値比で約47銭の円安ドル高であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と市場時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) マーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の欧州市場と英国ロンドン外国為替市場では、昨夜17時26分頃の時間外の米国債券取引で米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.183%付近に上昇し、17時50分頃になっても4.18%台の高止まりを続けたことを受けては、債券利回りの金利差トレードの円売りドル買いにより昨夜17時40分頃にドルは円相場で一時156円44銭付近に上昇していた。
ただし、昨夜18時頃から英国経済紙フィナンシャル・タイムズ (FT / Financial Times) のイベントで日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の植田和男総裁が発言し、「為替相場はファンダメンタルズに沿うべき」としたが、市場や家計の物価先行きの期待インフレ率は、「過去数年間と比べて著しく高い」とし、日銀の2%のインフレ目標は、「まだ完全には達していないものの、近づいている」としたことから日銀の利上げ予想が優勢で、同じ頃に大量の米国債が買われたことから債券価格上昇時の利回り低下で米国長期金利が昨夜18時22分頃に一時4.153%付近に急反落したため、債券利回りの日米金利差縮小時の円買いドル売りが入ったことでは、昨夜18時22分頃にドルは円相場で一時155円98銭付近に反落していた。
しかし、その後の昨夜21時台には米国長期金利は一時4.169%付近に反発したため、ドルも円相場で156円台に戻しており、欧州英国市場の後半にあたる昨夜22時頃から始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時156円36銭付近であった。
米国市場では、昨夜12月9日から米国現地時間の本日10日 (日本時間では時差で明日11日未明) まで開催される米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) での米国政策金利については、米国小幅利下げ予想が市場で確定値と考えられている70%を超える87.6%付近と9割近い優勢さを保っていたことでは米国長期金利が再び低下し、昨夜22時50分頃に一時4.149%と4.41%台に低下したため、昨夜22時53分頃にドルは円相場で一時156円29銭付近に下押しし、この日の米国市場における円の高値でドルの安値を記録した。
とはいえ、市場の関心は米国政策金利と声明の発表と同時公開予定の米国経済および米国政策金利の見通しのドット・チャート (Dot chart / dot plot / ドット・プロットとも呼ばれる) による先行きと、米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) 終了後の定例記者会見における米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のジェローム・パウエル議長の要人発言に集まっており、今回のFOMCでは米国小幅利下げ予想がすでに織り込み済みとなっている部分が多かったため、その後の来年5月のジェローム・パウエル議長の任期満了までの米国追加利下げに慎重なタカ派予想が意識された持ち高調整も入り始めたことでは、ドルは円相場で156円台後半に向けて買い戻された。
深夜24時には、雇用関連の最新米国経済指標の10月米国雇用動態調査 (JOLTS / Job Openings and Labor Turnover Survey) 求人件数の発表があり、前回の765.8万件と市場予想の715.0万件を上回る767.0万件に上振れしたため、雇用最大化と物価安定の二大責務を掲げる米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の来年の追加利下げに慎重なタカ派予想が高まり、米国長期金利の反発上昇と共に主要通貨に対してドルが買われて上昇し、深夜24時10分頃にドルは円相場で一時156円86銭付近に上昇した。
同じく深夜24時には米国政府機関の一部閉鎖中に発表が延期されていた9月分のデータも公開されていたが、9月米国景気先行指標総合指数は前回の−0.5%に対し市場予想通りの−0.3%で、同じく9月米国雇用動態調査 (JOLTS) 求人件数も前回の722.7万人に対し765.8万人と堅調さが継続していた。
米国ニューヨーク債券市場では、深夜24時56分頃に米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利は一時4.186%付近と再び4.18%台で再上昇したが、午前3時には米国10年債入札に絡む米国債買いによる債券価格上昇時の利回り低下の抵抗があったことではやや上昇幅を縮小したものの、米国債の入札後には再び米国長期金利が上昇し、今朝6時49分頃の一時4.193%付近と4.19%台に向けた再上昇を見せたことでは、今朝4時13分頃にドルは円相場で一時156円96銭付近に上昇し、この日の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
一方、昨日の日本政府の衆院予算委員会で日銀の植田和男総裁と日本政府の高市早苗首相が利回り急上昇時の日本国債の買い入れ増額による金利抑制について言及したことへの警戒感もあり、新発10年物の日本国債の利回りが指標となる国内長期金利が低下したことから、昨夜の欧米市場では米国長期金利上昇時のドルだけでなく欧州ユーロや英国ポンドに対しても円安が進行しており、午前1時37頃の英国ロンドン外国為替市場の終盤にはユーロ円は1999年のユーロ制定以来の一時182円65銭付近の円安ユーロ高を更新し、同時刻に欧州ユーロに連れやすい英国ポンドの円相場も一時208円95銭付近と今年最大規模の円安ポンド高を更新した外貨影響もあり、それに対して主要通貨に対するドルインデックスは一時99.31付近に上しており、外貨に対するドル上昇圧の対ドル円相場への波及もあった。
なお、米国長期金利上昇を受けた金利警戒感では、米国ニューヨーク株式市場で米国主要株価三指数の中でも金利に敏感な米国ダウ工業株 (DJIA / Dow Jones Industrial Average) と米国S&P500種株価指数 (S&P500 / Standard and Poor’s 500 index) が反落後に小幅安の終値をつけていたが、世界的なハイテク企業比率の高い米国ナスダック総合株価指数 (NASDAQ / National Association of Securities Dealers Automated Quotations Composite) は反発上昇後に小幅高の終値であった。
このため、昨夜22時頃から今朝7時頃までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の値動きは、円の高値でドルの安値の156円29銭付近から、円の安値でドルの高値の156円96銭付近の値幅約67銭で、今朝7時頃のニューヨーク終値は156円88銭付近と、前営業日同時刻の155円92銭付近の前ニューヨーク終値比で約96銭の円安ドル高をつけていた。
早朝のアジア・オセアニア市場時間にあたる今朝8時50分には、今日の日本市場に先駆けて日本の最新経済指標の発表があり、11月日本国内企業物価指数は、前月比が前回の0.4%が前回0.5%の上昇率に上方修正された上で市場予想通りの0.3%となり、前年同月比は前回と市場予想通りの2.7%の横ばいであったが2%を超え続けていることでは来週12月18〜19日の日銀金融政策決定会合における利上げ予想が優勢さを保ち、対ドルの円相場は今朝7時のニューヨーク終値時点よりも小幅に反発し、今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時156円81銭付近であった。
日本市場では、今朝9時55分の仲値決済に向けて、今日は10日で日本国内の貿易企業の決済日が集中しやすい5と10が付く日の「五十日」 (ごとおび / ゴトービ) にあたるため、日本企業の輸入実需の円売りドル買いが先行した影響では、今朝9時29〜30分頃にかけてドルは円相場で一時156円94銭付近に反発上昇し、今日の日本市場における円の安値でドルの高値を記録した。
しかし、続いては、国内輸出企業の円買いドル売りも入り始めた影響があったほか、東京株式市場で今朝はプラス圏から始まっていた今日の日経平均株価が反落してマイナス圏に転じた株価下落時のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) による国内第一安全資産の低リスク通貨の円買いも入ったため、昨夜から今朝までの米国市場で記録していた一時156円96銭付近を手前にしたテクニカル分析的なレジスタンスラインの抵抗感もあってドルは円相場で反落し、正午12時45分頃にはドルは円相場で一時156円56銭付近と、今日の日本市場における円の高値でドルの安値を記録した。
今日の日経平均株価が一時下げ幅を縮小したことでは低リスク通貨の円の利益確定売りも入ったものの、午後15時30分頃には今日の日経平均株価は5万602円80銭の終値をつけて前日比52円30銭安の-0.10%の小幅安で大引けしたため、今夜この後で日本時間では明日未明の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) のイベントを控えたイベントリスクの様子見などもあって、今日の日本市場の午後の円相場でのドルの買い戻し幅は、午後15時40分頃の一時156円77銭付近までに留まっていた。
今日の午後の衆議院予算委員会では日銀の植田和男総裁は日銀が9月末時点で保有する上場投資信託 (ETF / Exchange Traded Funds) について発言し、「簿価37兆円、時価は83兆円、評価益は46兆円」と公表し、売却ペースは、「100年を少し超える様な期間がかかって売却を終える」と、以前も示していた市場への影響を最小限に抑えた長期的な売却期間の見通しを示していた。
夕方からの欧州市場の参入では、日本時間で明日未明4時 の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の発表イベントを控える中で、米国政府のドナルド・トランプ大統領が今日も米国利下げ要求の政治圧を続けており、英国経済紙フィナンシャル・タイムズ (FT / Financial Times) が、今週から米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の次期議長人事の最終面接を開始されるが、依然としてトランプ政権のアメリカ合衆国国家経済会議 (NEC / National Economic Council) のケビン・ハセット委員長が「本命」として見られていると報じていたほか、ドナルド・トランプ大統領の発言でも、「悪いFRB議長がいる」、「FRBの見直しを進めるつもり」などが続いていたことが嫌気されたドル売りが入った一方で、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会メンバーのリトアニア中央銀行のゲディミナス・シムカス総裁が、「欧州のインフレ率は目標水準にあるため、金利変更の必要はない」とし、フランス銀行のフランソワ・ビルロワ・ド・ガロー総裁も、「来週12月18日のECB理事会では欧州政策金利を据え置くことが賢明」と発言したことではユーロドルでユーロが買われ、外貨影響の波及が対ドル円相場でのドルの上値を抑えた。
とはいえ、昨夜に続き、今日の日本市場でもドルだけでなく欧州ユーロや英国ポンドに対する円安が進行していたことでは、今夜17時頃からの英国ロンドン外国為替市場参入後に米国長期金利が再び上昇し、今夜17時44分頃の一時4.201%付近と4.2%台に向け始めたことでは、前東京終値比で円安ドル高の東京終値となった。
このため、今日17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は156円67銭付近で、昨日17時の156円20銭付近の前東京終値比では約47銭の円安ドル高になった。
なお、今夜この後の英国ロンドン外国為替市場では、時間外の米国債券取引で米国長期金利は今夜19時23分頃には一時4.212%にも上昇している。
今夜この後の米国市場では、米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の米国政策金利の発表と、米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の今後の米国経済と政策金利見通し (SEP / Summary of Economic Projections) のドット・チャート公開と、ジェローム・パウエル議長の要人発言のイベントに市場の注目が集まっているが、最新米国経済指標などの発表予定もあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜22時30分に7〜9月第3四半期米国雇用コスト指数、28時にFOMC終了後の米国政策金利と声明の発表と同時に米国政策金利と経済見通し (SEP) 公開と、11月米国月次財政収支の発表も同時刻にあり、そして28時30分頃からFRBのジェローム・パウエル議長のライブ中継の定例記者会見での要人発言を控える。
また、世界の株式市場と債券市場と金や原油先物などを含むコモディティ (商品先物) 市場などの為替相場への影響と、ウクライナ情勢や中東や中米などの世界情勢と、世界政治経済のニュースやドナルド・トランプ米国大統領や高市早苗首相などを含む要人発言などのファンダメンタルズ分析は、最新経済指標データやテクニカル分析と共に世界のFXトレーダー達の値動き予想材料になっている。
加えて、今夜23時45分には北米カナダ中央銀行のカナダ銀行の政策金利の発表予定もあり、30時30分にはエキゾチック通貨の南米ブラジル中央銀行の政策金利発表なども控えている。
一方、欧州ユーロは、今日17時の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は182円44銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の181円83銭付近の前東京終値比で約61銭の円安ユーロ高であった。
主な要因は、前述の通り、来週の欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会では欧州金利据え置き予想が優勢で、昨夜の海外市場でも史上最大の円安ユーロ高を更新しており、欧州と地理的・経済的に近く連れやすい英国ポンドに対しても今年最大規模の円安ポンド高が進行していた影響が残っていた。
そのため、英国ポンドも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は208円71銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の208円23銭付近の前東京終値比では約48銭の円安ポンド高と続伸していた。
ユーロドルは、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.1645ドル付近と、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の1.1641ドル付近の前東京終値比で約0.04セントのユーロ高ドル安であった。
主な要因は、今夜この後の米国イベントのイベントリスクもあって、今日の夕方の欧州市場参入ではドル売りとユーロの買い戻しが起きたが、その後の英国ロンドン外国為替市場の参入では、米国長期金利が4.2%台で上昇した金利差トレードによるドルの買い戻しも入っている。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2025月12月10日の日本時間(JST / Japan Standard Time) の20時44分(チャート画像の時間帯は英国冬時間 (GMT / Greenwich Mean Time / JST-9) の英国ロンドン外国為替市場時間の11時44分頃) の人気のクロス円を中心とした為替レートは下表の通りである。なお、米国市場も2025年11月2日から米国冬時間 (EST / Eastern Standard Time / GMT-5 / JST-14) になっており、欧米のサマータイム終了後の日本時間との時差調整があったことには注意が必要である。
| 通貨ペア | JST 20:44の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00前東京終値比 |
| ドル/円 | 156.73 〜 156.74 | +0.54 (円安) |
| ユーロ/円 | 182.33 〜 182.34 | +0.51 (円安) |
| ユーロ/ドル | 1.1632 〜 1.1634 | +0.0007 (ドル安) |
| 英ポンド/円 | 208.53 〜 208.59 | +0.36 (円安) |
| スイスフラン/円 | 194.60 〜 194.66 | +0.95 (円安) |
| 豪ドル/円 | 104.14 〜 104.18 | +0.49 (円安) |
注意:
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