FXニュース:米FRB理事がハト派の発言

2023年11月29日
FXニュース:米FRB理事がハト派の発言

 

東西FXニュース – 2023年11月29日

文/八木 – 東西FXリサーチチーム

主な点:

  • 米利上げ終了予想が高まる
  • 早期の米利下げ予想も上昇
  • 米長期金利低下のドル売り
  • 日米金利差縮小時の円買い
  • 円高で日経平均株価が続落
  • 今週米PCEと議長発言控え
  • 対欧英通貨のドル安も波及
  • 米より欧英がインフレ警戒

今日2023年11月29日水曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の高値でドルの安値の146円67銭前後から円の安値でドルの高値の147円37銭前後の値幅約70銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は147円30~32銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の148円51~53銭付近の前東京終値比で約1円21銭の大幅な円高ドル安であった。

今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨夜の英国ロンドン外国為替市場では、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) や英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE / Bank of England) の関係者達が欧英インフレ警戒による追加利上げの可能性を示したことに対し、米国中央銀行制度の最高意思決定機関にあたる米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の米国利上げ終了予想が市場で優勢で、来年早期の米国利下げ時期に関する市場予想も浮上していたことから米国長期金利が低下し、主要通貨に対してドルが売られたほか、月末要因の欧州ユーロや英国ポンドの買い戻しなどの影響の波及も相まって、ドルは円相場で下落を続けていた。

ただし、昨夜22時からの米国ニューヨーク外国為替市場では、市場の始まりに米国長期金利が一時4.419%付近に反発したこともあり、ややドルの買い戻しの抵抗も入ったことでは、昨夜22時15分頃に一時148円70銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。

昨夜23時に発表された最新米国経済指標の7〜9月の第3期四半期の米国住宅価格指数の前期比は前回の1.7%と前回修正の1.9%に対し2.1%に上昇していたが、9月の米国住宅価格指数の前月比では前回の0.6%と前回修正の0.7%と市場予想の0.4%に対し0.6%と市場予想ほどは低下しなかったものの修正前の前回と横ばいのレベルで前回修正後を下回り、より重要度が高い9月の米国ケース・シラー住宅価格指数の前年同月比では前回の2.2%と前回修正の2.1%と市場予想の4.0%に対し3.9%と市場予想を下回ったことでは、同時進行中だった欧州英国市場のトレンドが継続し、円相場でも再びドルが下落した。

続いて、深夜24時に発表されたコンファレンス・ボードの11月の米国消費者信頼感指数は前回の102.6が99.1に前回下方修正され、市場予想の101.0に対し102.0と市場予想は上回ったものの、同時発表の11月の米国リッチモンド連銀製造業指数が前回の3と市場予想の1に対しマイナス圏の-5に大幅に低下してことを受けて、米国景気減速懸念が高まったことでも、米国長期金利4.4%台から4.3%台に低下し、主要通貨に対してドルが売られた。

深夜頃からの次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米国シカゴ連銀のグールズビー総裁の発言は、「米国金融当局は、コア指数で除くエネルギーと食品のインフレには目を向けていない傾向が見られるが、それらはインフレの基調的な状況を最良の形で表すものではない。全体的に見れば、食品部門以外は、確かにインフレ面で進展を遂げてきた。米国のインフレは低下してきているが、まだ目標の2%ほどにまでは抑制されていない。しかし、今年は米国インフレ率の低下が、過去71年で最大となる軌道にある」と連銀主催イベントで指摘した。

そして、市場に最も影響を与えたのは、その直後の深夜24時5分頃からの同じく次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) の ウォラー理事の発言で、講演で米国政策金利と景気抑制が米国のインフレ率を目標の2%に抑制するために適切なレベルであることへの「確信を高めつつある」と講演で言及したほか、講演後の討議では米国政策金利の適切な基準を定式化したテイラー・ルールを引用し、「ディスインフレ (物価上昇ペースの低下によるインフレ鈍化) の基調が更にさらに数カ月続き、米国インフレの大幅な改善に確信を持てた時には、米国利下げを開始することが可能」と、これまではどちらかというとタカ派で知られてきたウォラー理事が米国利下げ時期に関するハト派発言をしたことで、米国金利先物市場では来年早期の米国利下げ予想が上昇し、米国長期金利が4.3%台前半に向けて更に低下したため、主要通貨に対するドル売りの勢いが増し、午前2時17分頃に一時147円33銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。

ただし、深夜24時45分頃からの同じく次回の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) のボウマン理事の発言では、米国銀行協会向けの講演で、米国のインフレ率は依然として高く、その進展は不均一で、経済の見通しについては異例なほど高いレベルの不確実性があると指摘し、「基本的には、私の経済見通しでは、米国のインフレ率を目標の2%まで適時に抑制するためには、十分に制約的な米国政策政策のフェデラル・ファンド (FF) 金利を長期間維持し、必要であれば、更に米国の追加利上げをする必要があると、引き続き予想している」とタカ派の発言を繰り返していたが、元々がタカ派で知られていたために、元タカ派のウォラー理事の突然のハト派発言ほどのサプライズはなく、市場の反応は限定的であった。

しかし、ボウマン理事が、「金利に対する米国企業の反応が鈍化している兆候などもあり、様々な不確実性を持つ要因が米国インフレ抑制に及ぼす影響を鈍化させる可能性があるために、米国政策金利をパンデミック(世界的大流行)以前よりも高いレベルにする必要があるかもしれない」と不確実性を強調していたことや、米国7年債の入札結果が低調だった影響の他の米国債への波及などで、米国長期金利が低下幅を一時縮めたことなどでは市場安値後にはドルの買い戻しもやや入ったが、市場全体での大幅なドル売りの影響は残っていた。

ドル円に関しては、同時進行していた米国ニューヨーク株式市場で、米国主要株価三指数が上昇に転じて終値をつけたことも、低リスク通貨の円の利益確定売りとドルの買い戻しなどによる抵抗も入ったほか、米国市場では今週に発表予定の最新米国重要経済指標の個人消費支出 (PCE / Personal consumption expenditures) デフレーターや、その後のパウエル議長の要人発言予定などを控えた持ち高調整も入り始めていたが、米国利下げ時期に関する市場予想の日米金利差縮小予想の影響によるドル売りは強く、ドルの抵抗幅は限られた。

このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は円の安値でドルの高値の148円70銭前後から円の高値でドルの安値の147円33銭前後の値動きで、今朝7時頃のニューヨーク終値は147円48銭付近と前営業日同時刻の前ニューヨーク終値比で約1円21銭の大幅な円高ドル安をつけていた。

今朝9時頃からの日本の東京外国為替市場でも、米国利下げ時期に関する市場予想の高まりなどから米国長期金利が更に4.3%台から4.2%台に向けて低下した影響で日米金利差縮小による円買いドル売りが起きたほか、今朝9時55分の日本市場の仲値決済では月末決算を控えた輸出系の日本企業によるまとまった円買いドル売り注文も入り、午前10時1分頃に一時146円67銭付近と、9月12日以来の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。

しかし、今日の東京株式市場では、日本企業の主要貿易先の米国の景気減速懸念で日経平均株価が3日連続で続落し、国際的な投資家が円高による利益確定売りで基軸通貨のドルを買い戻した影響もあり、同時に安値圏からのドル買いなども入っていたことで、ドルは今朝の大幅な下げ幅を午後にはやや縮め始めた。

また、午後からの欧州英国市場の参入も始まり、今週は明日の夜に最新米国重要経済指標の10月の米国個人消費支出 (PCE) 物価指数などの米国連邦準備制度理事会 (FRB) が注視している「最新データ」の発表予定を控えており、また今週金曜の夜には次回の米国公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つFRB高官の中でも市場で最も注目され影響力が強いパウエル議長の発言予定なども控えているため、イベント前の持ち高調整や様子見の動きも入り始めていたことで、ドルは円相場で午後の抵抗を強めて今朝の下げ幅を縮めたため、日本市場終盤の16時59分頃に一時147円37銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。

このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は147円30~32銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の148円51~53銭付近の前東京終値比で約1円21銭の円高ドル安になった。

そして、その後の今夜19時台後半の英国ロンドン外国為替市場でも、ドルは円相場で一時147円81銭付近に買い戻されている。

今夜この後にも最新米国経済指標の発表や米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の発言予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは今夜21時に米国MBA住宅ローン申請指数、22時半に10月の米国卸売在庫と、7〜9月の第3四半期の米国実質国内総生産 (GDP / Gross Domestic Product) と米国GDP個人消費とコアPCE (Core Personal Consumption Expenditure) の確定値、深夜24時半に米国週間原油在庫、27時45分頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権は持たないがFRB高官の米国クリーブランド連銀のメスター総裁の発言予定、28時に米国地区連銀経済報告 (ベージュブック) の発表予定などがある。

一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は161円83〜84銭付近と、日本市場の前営業日同時刻にあたる昨夜17時の162円40〜42銭付近の前東京終値比では約57銭の円高ユーロ安であった。

主な要因は、日米金利差縮小による基軸通貨のドルに対する大幅な円高が、ユーロドルのユーロ高よりも大幅であったことで他の主要通貨である欧州ユーロにも影響が波及したほか、日本の輸出貿易企業の月末決済前の主要通貨に対する大規模な円の買い戻しなどで、欧州ユーロに対しても円相場が上昇していた。

ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0982〜1.0986付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の1.0935〜1.0937ドル付近の前東京終値で約0.47セントのユーロ高ドル安であった。

主な要因は、前述の通り、米国連邦準備制度理事会 (FRB) の中でもタカ派で知られていたウォラー理事のハト派発言を受けて、来年早期の米国利下げ時期に関する市場予想の高まりにより、米国長期金利が低下し、一方で、欧州インフレ警戒の欧州追加利上げの可能性があるという欧米差により、欧州ユーロなどの主要通貨に対してドルが売られたことがユーロドルの為替相場に影響を及ぼしていた。

また、今日の午後16時に発表された最新欧州経済指標の欧州ユーロ圏主要国ドイツの10月輸入物価指数は、前月比が前回の1.6%と市場予想の-0.1%に対し0.3%と前回よりは鈍化したものの市場予想を上回り、前年同月比も前回の-14.3%と市場予想の-13.4%に対し-13.0%と前回と市場予想ほど輸入物価は低下していなかったことでも、欧州インフレ警戒感が意識されていた。

英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンドの円相場の終値は187円8〜14銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時187円32〜38銭付近の前東京終値比で約24銭の円高ポンド安であった。

主な要因は、欧州ユーロ同様に今日のドルに対する大幅な円高圧が他の主要通貨である英国ポンドの円相場にも波及していたが、昨夜までに英国中央銀行イングランド銀行 (BoE) の金融政策委員会 (MPC / Monetary Policy Committee) のハスケル委員が、英国労働市場の需給逼迫による賃金インフレ圧に言及した上で、英国の政策金利をしばらく高金利で維持する必要があると発言していたため、米国の来年早期の利下げ予想とは対照的に英国高金利の長期化予想があったことで、対ドルで英国ポンドが買われていたことは対円での英国ポンドの抵抗要因になったために、小幅域に留まっていた。

今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年11月29日の日本時間(JST)21時2分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で9時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の冬時間 (GMT / JST-9) の12時2分頃。なお、サマータイム制のある米国市場も現在冬時間で、日本との時差が14時間遅れのJST-14 / GMT-5になっている) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。

通貨ペア JST 21:02の為替レート 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比
ドル/円 147.65 〜 147.67 -0.86 (円高)
ユーロ/円 162.17 〜 162.19 -0.23 (円高)
ユーロ/ドル 1.0982 〜 1.0984 +0.0047 (ドル安)
英ポンド/円 187.32 〜 187.38 ±0.00 (レンジ)
スイスフラン/円 168.46 〜 168.52 -0.14 (円高)
豪ドル/円 97.75 〜 97.79 -0.38 (円高)


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