FXニュース:今週の米CPIとPPI発表を控え
2023年8月09日東西FXニュース – 2023年8月9日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米銀格下げで一時リスク回避
- 日銀が定例国債買い入れオペ
- 日経平均株価下落時の円買い
- 日米金利差トレードの円売り
- 伊政府銀行課税で欧州株安後
今日2023年8月9日水曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値の143円39銭前後から円の高値でドルの安値の143円0銭前後の値幅約39銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は143円28~30銭付近と、前日同時刻の昨夜17時の143円8~9銭付近の前東京終値比では約21銭の円安ドル高であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨日の日本市場では日本の賃金上昇率の鈍化により、日本銀行 (日銀 / BoJ) が目指していた賃金上昇を伴った2%の目標インフレ率と金融政策修正への出口までの距離が意識され、金利抑制の大規模緩和金融政策継続予想による円売りドル買いが優勢であった。
昨夜の欧州英国市場では、欧州の主要取引先である中国の景気懸念の影響や、欧州ユーロ圏のイタリア政府がイタリアの銀行に対して40%の超過利潤税を追加課税するというニュースが原因となり、欧州銀行株が急落したことを受けて欧州株価が下落し、リスク回避のユーロ売りでは安全資産の米国債や低リスク通貨の円に加えて、世界的に流動性が高い安全資産のドルが欧州通貨から買われた影響でも、ドル上昇圧があった。
昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場では、格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービス (Moody’s Investors Service) が、米国中堅銀行や中小10行の信用格付けを格下げし、一部の大手銀行も格下げを検討というニュースにより金融不安が一時再燃したことでは、米国ニューヨーク株式市場で米国金融株も一時急落し、株売りが広がったことで米国ニューヨーク (NY) ダウ工業株30種平均株価指数 (Dow Jones Industrial Average / DJI) が一時460ドル以上の大幅下落を見せた時には、リスク回避のリスクオフで安全資産の米国債買いやドルでもから買える低リスク通貨の円が一時買われ、昨夜21時半頃に一時142円91銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録していた。
しかし、その後には安値からの米国株の買い戻しなどで、前述の米国ダウ平均 (DJI) が130ドル安付近にまで下落幅を縮めると、リスクオフの弱まりから高値後の米国債が利益確定で売られ始めて米国長期金利が再上昇したため、円安要因の日米金利差拡大による低リスク通貨の円売りドル買いが再び優勢になった。
米国長期金利の指標となる米国10年債の利回りは、一時の安全資産の米国債買いの影響では債券価格が上昇する一方で利回りが一時3.98%台に低下したものの、その後には高値圏からの利益確定売りの勢いが強まり、4.03%台に上昇して下げ幅を縮めたため、日米金利差拡大時の円売りドル買いが優勢になり、今朝未明の午前3時35分頃には一時143円49銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
ただし、昨夜には米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達の発言もあり、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が、米国経済誌フィラデルフィア・ビジネス・ジャーナル (The Philadelphia Business Journal) 主催のイベントで講演し、「私の考えでは、今から9月半ば迄に憂慮すべきデータが新出しなければ、我々は辛抱強く金利を据え置き、これまで実施した金融政策が機能するのを待てる様な状況になるのではないかと思う」と発言し、続いて出演した米国フィラデルフィア州のラジオ局WHYYのインタビューでも、「いつか、おそらく、来年に、利下げを開始することになるだろう。緩やかなペースであるが、ディスインフレと整合する形で、経済活動は緩やかな減速にとどまると考えられる。言い換えれば、我々が望みつつ過去には実現の可能性が非常に不明瞭だったソフトランディング (軟着陸) への軌道を現在進んでいると私はみている」とハト派の発言をしたことでは、ドルが売られる機会もあった。
一方で、米国リッチモンド連銀のバーキン総裁は、昨夜に米国バージニア州の商工会議所で開催されたイベント後に、「私は、9月までは決定を待つ方向に傾きつつある」と中立的な発言をしており、それまでに明日発表予定の最新米国重要経済指標の米国消費者物価指数 (CPI) などを含めたインフレ統計が複数発表されることを見据え、次回9月の米国の追加利上げが適切かどうかについては、「今、前もって判断する理由は、一切見当たらない」と、時期尚早だと発言した。バーキン総裁は次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権は持たないが、投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) のボウマン理事が先日に連続でタカ派発言をした後ということもあり、明日発表予定の「最新データ」の米国重要インフレ指標である米国消費者物価指数 (CPI) の発表イベントを控えた持ち高調整や買い控え、そして、様子見の動きも強まった。
明日8月10日の夜の7月の米国消費者物価指数 (CPI) に続き、明後日の8月11日の夜には7月米国卸売物価指数 (PPI) の発表予定もあり、今週は市場での注目度が高い「最新データ」の最新米国重要経済指標の発表イベントを控えているため、株式市場からの為替相場への値動きの影響が収束するにつれ、イベント前の様子見の値動きになり、やや横ばいに近い143円台前半での推移になった。
そのため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の142円91銭前後から円の安値でドルの高値の143円49銭前後の値動きで、今朝6時頃のニューヨーク終値を143円38銭付近と、前日同時刻の前ニューヨーク終値比で約88銭の円安ドル高をつけていた。
今朝9時頃から始まった今日の日本の東京外国為替市場では、昨夜の欧米株安の影響などで今朝の日経平均株価が下落して始まったことを受けて、日本株安時の国内第一安全資産の低リスク通貨の円買いが先行し、今朝9時37分頃には一時143円9銭付近に円相場が一時上昇した。
しかし、今朝9時55分の仲値決済に向けた日本企業の輸入実需の円売りドル買いでは円相場は反落を始め、また今朝10時10分頃に日本銀行 (日銀 / BoJ) が定例の金利抑制の公開市場操作の国債買い入れオペの指値オペを通知したためにさらに円が売られて、今朝10時44分頃には、一時143円39銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
昨日の日本の賃金上昇率の鈍化でも日銀 (BoJ) の大規模緩和金融政策の当面の継続予想が高まったが、今日も日銀の国債買い入れの指値オペによる金利抑制が再び意識されていた。
ただし、明日の夜に前述の米国連邦準備制度理事会 (FRB) が重視する最新データの最新米国重要経済指標の7月の米国消費者物価指数 (CPI) の発表イベントを控えたドルには、明日の夜の結果が分かるまでのイベントリスクの様子見の買い控えが入ったほか、市場高値後の利益確定のドル売りによる持ち高調整の円の買い戻しも入り始めたことでは、安値後の円相場は反発した。
また、午後15時15分には、今日の日経平均株価が3万2204円33銭の前日比172円96銭安の大幅安で大引けしたため、日本株安時の低リスク通貨の円買いが強まり、午後15時42分頃には一時142円99.5銭付近も瞬時にタッチする形で、一時143円0銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
しかし、午後からの欧州英国市場の参入では、昨日の欧州株価下落後の一部の株の買い戻しなども入り始め、今朝の欧州ユーロ圏主要国のドイツ株が上昇を見せたこともあり、安全資産の米国債の利益確定売りや、市場高値後の低リスク通貨の円が利益確定で売られ始め、日銀の金利抑制姿勢に対し、米国長期金利が低下幅を縮めたことでも日米金利差拡大による円売りドル買いに転じて、ドルが再び円相場で上昇を始めた。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は143円28~30銭付近で、昨夜17時の143円8~9銭付近の前東京終値比で約21銭の円安ドル高になった。
また、その後の英国ロンドン外国為替市場でもドルは円相場で上昇を続け、今夜18時5分頃には一時143円41銭付近も記録している。
今夜この後にも最新米国経済指標の発表予定があり、日本時間の今夜のスケジュールは20時に米国MBA住宅ローン申請指数、23時半に週間の米国原油在庫、26時には利回りが米国長期金利の指標となる米国10年債の入札予定がある。
ただし、世界市場では、より重要度が高い最新米国経済指標の明日10日の夜21時半に発表予定の米国消費者物価指数 (CPI) と、明後日の夜の米国卸売物価指数 (PPI) が注目されている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は157円41~42銭付近と、昨夜17時の157円6~7銭付近の前東京終値比で約35銭の円安ユーロ高であった。
主な要因は、前述の日銀の金利抑制の大規模緩和金融政策継続予想により、日欧金利差拡大予想が影響を及ぼした。
ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0983~1.0985ドル付近と、昨夜17時の1.0975~1.0977ドル付近の前東京終値比で約0.08セントのユーロ高ドル安だった。
主な原因は、今日の日本市場の午後に米国長期金利が一時3.997%付近に下落した時に、日本市場でドルが売られて低リスク通貨の円が買われた影響で、他の主要通貨への影響の波及で対ドルのユーロが上昇していた。明日のイベントリスクのドルの買い控えも影響した。
ただし、その後の今日の夕方には米国長期金利は一時4.021%付近に上昇して下げ幅を縮めたため、ドルの買い戻しが強まり、今夜の英国ロンドン外国為替市場では、ユーロドルは前日比で横ばい付近に戻したが、その前に今夜17時の日本市場の東京終値を迎えていた。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は182円94銭~183円0銭付近と、昨夜17時の182円49~55銭付近の前東京終値比で約45銭の円安ポンド高であった。
主な要因は、日銀の金利抑制の国債買い入れオペや大規模緩和金融緩和継続予想の一方で、英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) には利上げ継続予想が優勢で、日英金利差拡大予想の円売りポンド買いが影響を及ぼしていた。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2023年8月9日の日本時間(JST)19時30分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替市場時間の夏時間 (GMT+1 / BST) 11時30分) の、人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:30の為替レート | 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比 |
ドル/円 | 143.28 〜 143.30 | +0.21 (円安) |
ユーロ/円 | 157.30 - 157.32 | +0.24 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.0976 - 1.0977 | ±0.0000 (レンジ) |
英ポンド/円 | 182.55 - 182.61 | +0.06 (円安) |
スイスフラン/円 | 163.56 - 163.62 | +0.01 (円安) |
豪ドル/円 | 93.82 - 93.86 | +0.46 (円安) |
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