東西FXリサーチ – 黄色いベスト運動が押し下げるフランス市場

2018年12月10日



文/安藤麻矢 – 東西FXリサーチチーム

フランスでは就任よりわずか1年強のエマニュエル・マクロン大統領に対する 大規模なデモが4週連続で起こっている。全国レベルでは12万人もの国民が燃料への課税および価格の上昇に怒りを露わにした「黄色いベスト」運動。小売を始め国民の消費意欲が低下する可能性があることから、今後も暴動が長引く場合には国内経済に大きな影響を与える危険性がありユーロ相場の先行きに不安感が見られる。

過激化する暴動を受けて、フランスのフィリップ首相は4日、来年1月に予定していた燃料税の引き上げを6カ月間、棚上げすることを発表するまでとなった。「黄色いベスト運動」はマクロン政権への人気の急降下を象徴している。5日午後の東京市場ではユーロ・円は127円79銭から128円09銭、ユーロ・ドルは1.1320ドルから1.1346ドルで推移した。

2017年5月7日に66.1%の得票率でフランスの大統領に選出されたエマニュエル・マクロンだが、暴動が前の11月最終週の後半にIfop・フィデュシアルが実施した世論調査では大統領の支持率は23%に低下してた。

フランスのルメール財務相は暴動の翌日 、「 黄色いベスト」運動について、国内経済に深刻な影響を与えるとの見通しを示している。加えて、同省は前日のデモにより破壊された小売店や飲食店を視察した際に『黄色いベスト』デモが原因で、経済成長率は年末に再び鈍化すると想定する必要がある」とメディアに語っている。この暴動により小売業では 11億米ドルの損失を被っている。

フランス国内では、ディーゼル燃料への新たな課税により今年になってガソリン価格が16%上昇している。フランス石油産業連盟(UFIP)では、ディーゼル燃料の1リットルあたりの平均価格は、1.24ユーロから1.48ユーロまで高騰したと報告している。

課税への不満以外にも、国内の若年層の失業率の高さ(20.4%)とフランス人の求人を圧迫している移民労働者問題も将来的な経済の不安材料と見られ暴動の背景となっていると言われている。

2018年7月のEU28カ国全体の若年層の失業者数は、332万5,000人となった。このうち、236万5,000人がユーロ圏19カ国の失業者割合では、イタリアの30.8%の失業率を先頭に、スペインの33.4%、そしてフランスが第3位と経済大国が上位を占めている。

今年はユーロの導入から20年目である。欧州委員会が12月5日に公表した、単一通貨ユーロの国際的な役割に関する報告書では、ユーロを欧州の主権構築の主要手段と位置づけ、長期的な見地に立った取り組みを進めるよう、加盟各国に呼びかける内容となった。ユーロは現在、世界の外貨準備の20%を占め、国際取引の36%がユーロ建てで行われている。しかしながら、イギリスのEU離脱問題で揺れる貿易が、フランス人の失業率を高める可能性もある。国際通貨基金(IMF)の10月の発表では、ユーロ圏経済トップのドイツの貿易低迷もあり、ユーロ圏の18年成長率は0.2%ポイント引き下げ2.0%とされていたことからもユーロ相場には不安感が感じられている。

2005年のサルコジ政権への反発から始まった黄色いベスト運動は、2回目のオランド政権への暴動を得て、今回が3度目の大暴動。消費意欲が高まるクリスマスを数週間後に控えるが、募る政策への不満による市場センチメントへの影響に目を見張る必要があるだろう。