東西FXリサーチ – 依然緊張感が続く米欧経済摩擦と為替

2018年7月30日



文/安藤麻矢 – 東西FXリサーチチーム

世界経済大国である中国ときわどい駆け引きをするドナルド・トランプ大統領。貿易戦争の勃発による直接影響そして2次影響を考えれば当然のことながら表面的であったとしても二国間の経済緊張を緩和しなければならない。日頃より国際経済を揺るがす程のメッセージをツイッターなどで発言しているトランプ氏。ベテランのトレーダーやアナリストたちはトランプ大統領の一挙一動に敏感に反応せず冷静にホリスティックなアプローチで市場の動きを分析している。しかしながら話題性を求める国際メディア機関は米国大統領の挑発的発言はヘッドラインで報道される。ニュースで騒がれる結果、 国民は時事問題に反応し、時に株価や為替を変動させ産業レベルにまで影響を与える可能性がある。

今回、アメリカと中国は関税問題による貿易摩擦を避けるべく歩み寄りを試み、先行き不安 は一次的にも鎮まっているが、一方で世界最大の貿易圏である欧州連合(EU)との貿易摩擦はこれから交渉ゲームが始まる。

先週、トランプ米大統領は欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会のユンカー委員長と貿易摩擦の回避に向けて対話を始めることで合意した。

会談後の共同声明によると自動車を除く工業製品の関税を撤廃することや、欧州連合(EU)による米国からの大豆や液化天然ガス(LNG)の輸入を増加することが検討されるという。加えて、米国が発動した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限とEUによる報復措置についても議題にあがるということだ。。

一方、トランプ米大統領がツイッターでつぶやいたEU内で組み立てられた全ての自動車への20%関税をかけるという深刻な問題についての解決策は先延ばしになるためユーロの下落にどの程度の影響を及ぼすのか目を見張る必要がある。7月20 日にトランプ大統領は、中国とEU為替を操作し、金利を引き下げて米国の競争上の強みが失われているとツイッター上で述べている。

自動車関税はドイツにとって大きな輸出問題につながる。Ifo経済研究所が発表した7月の独企業景況感指数は前月に続き低下し2016年以降で最も低い水準になっている。これは欧州と米国の貿易摩擦が悪化する中で輸出を巡る懸念が高まったことも起因している。

ここ数ヶ月の米国とEU間のやり取りが短期的にも為替市場に影響している。米国政府がEUからの輸入関税を鉄鋼で25%、アルミニウムで10%に引き上げたことによりEUは世界貿易機関(WTO)に提訴し、 28億ユーロにも上る米国製品への最大25%の追加関税を課す報復措置を投げ返している。そこで米欧貿易摩擦の激化への警戒感は強まり米株式相場が下げ、5月31日はドル売りが進み、円買いが一時的に優勢となった。その後発表され5月の米雇用統計で失業率が3.8%に低下し非農業部門雇用者数が予想を大きく上振れしたことで米ドルが買われている。一方、5月31日のユーロ・ドルは1.1709ドルから1.1641ドルまで下落し、貿易摩擦懸念の強まりからユーロ売りが優勢になっている。ユーロ・円は127円46銭から126円33銭まで下落した。