東西FXリサーチ – 先行き不透明な中米貿易摩擦

2018年6月29日

文/安藤麻矢 – 東西FXリサーチチーム

アメリカは中国から同国への投資制限を間近に控えている。6月24日にトランプ政権は中国資本が25%以上入っている企業を対象に、「産業上重要な技術」を持つ米企業の買収を禁じる規制強化案を検討していると報じられた。 29日には 米財務省による投資制限の発表が予定されている。

6月25日のニューヨーク株式市場は、両国の貿易摩擦の激化を懸念し大幅に反落し、ドル売りが進みダウ平均の下げ幅は一時、500ドル近くに達している。アメリカは今年4月にも中国からの輸入品600億ドル(約6兆4000億円)相当への追加関税の制裁を発表している。このため、さらに2国間の緊張が高まりをみせている。これら制裁には猶予が与えられているが、FXトレーダーにとって世界トップの経済大国である中国と第2位のアメリカの貿易摩擦はつねに追う必要がある。

ドル円相場への影響

一方、対中制裁関税の原案を公表前の3月も中米貿易が緊迫しドル安が進むと見られたが、3月26日に一時1ドル=104円56銭付近までドル安・円高が進行しており、その後緩やかにドル高・円安方向に反転していることから、三井住友アセットマネジメントでは米中貿易摩擦問題に対する過度な懸念は、いったん後退しただろうとも語っていた。

しかし、アメリカの中国への投資制裁は今後どのように市場に影響していくのか不透明だ。

投資制限導入の可能性

米中貿問題は過去の摩擦の蓄積から現在の制裁発動に至っている。巨大化する世界トップ経済国である中国がアメリカのみならず世界の先端技術を次々に同国へ持ちこむその勢いは留まりをみせることがない。アメリカのみならず、EU首脳会議は昨年6月に、中国国有企業による投資の審査を検討することで合意し、フランスとドイツ、イタリアは、中国による投資を阻止する権限をEUに与える案を支持している。

Dealogicによると2017年の中国のアウトバウンドM&Aは、年間1,410億ドルとなり、米国の1608億ドルを追い越す勢いだった。しかしながら、対米投資額は、バラク・オバマ前米大統領の任期の最終年だった2016年の460億ドル(史上最高)以降、2017年には290億ドルに落ち込み、今年は5月末時点でわずか18億ドルにまで減少しているとメディアで報道されている。この背景には徐々に進められていた中国資本流入の牽制がみられる。

今年1月、対米外国投資委員会は中国のアリババの子会社であるアントファイナンシャル(前アリペイ)による米国拠点の送金運営会社であるMoneyGramの買収を拒否した。アリババの運用資産2100億米ドル(約230兆円)の運用資産を持つ世界最大と言われるイーコマース運営会社にも投資制限がかけられている。

一方、海外での継続的かつアグレッシブな主力産業や技術の取得の中、中国は自国への外資にさらに門戸を広げている。中国は2017年1月、中国・国務院は外資導入の促進を図ることを目的として、『対外開放を拡大し積極的に外資を利用することに関する若干の措置についての通達』している。しかしながら、気になる点は、今まで外資のネガティブリストにあった主力産業などの航空、自動車産業などでも、あくまで自国の技術が及ばない、または今後の成長の促進を必要とされる領域での海外資金の受けは可能であることが明確に示されていることだ。

中国における他の先進国とのM&A摩擦は今後も為替市場におけるリスクとして常に念頭に入れなければならない。

政治家の発言による市場への影響

理論上では個人的な意見が経済的影響を与えることはないとされているが、トランプ氏の発言は 投資者へ心理的に影響を与えていないとは言えない。先月、米国大統領はNATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグ氏の前で中国との貿易交渉は「うまくいかないだろう」とレポーターに述べている。中国やEU、そしてその他の甘やかされた国は100%自分たちが欲しているものをアメリカから得ているとし、これ以上は我慢ならないとも言っている。

本投資制限法案は上院情報特別委員会のメンバーで共和党幹部のコーニン議員に加えピッテンジャー下院議員(共和党)によって提出されており、ピッテンジャー下院議員は声明で中国による米国企業の買収の大半が同国の安全保障を脅かそうとする裏工作と述べている。そして、息を呑むような勢いで中国が米国企業を買収しているとも述べていることからアメリカの中国への心情が読み取れるだろう。29日に予定されている投資制限の発表がいかに市場に影響を与えるか緊張感が高まる。